第3話 雪のうた
天くんの家は、パパもママも働いていて、その日はちょうど、パパがお休みだったそうだ。
いつものように朝食を用意して、天くんと二人で食べたあと、私と同じようにお着替えの準備をしている最中、突然倒れたと天くんは言っていた。
天くんの家に着いてすぐ、ママは救急車を呼んだけど……助かることは無かった。
「ママ? 天くんパパ、バイバイするの?」
「そうよ……」
「もうおっきしないの?」
「ええ……そうよ」
ママは私を抱きしめると、声をおさえるように泣いた。
この頃の私は、まだ”死”というものがどうゆうことなのか理解しておらず、ずっと起きないことが悲しいことなのだと思っていたのだ。
「ママ、だいじょうぶよ。いのりがいいこいいこしてあげるから、えーんしていいよ」
大人だから、私の前で泣きじゃくる姿を、ママは見せたくなかったのだろうが、私の言葉で感情のコップが溢れ出したように、声をあげて泣いた。
ママがこんなに泣くのを初めて見た──
(どのくらい泣いていたんだろう……)
「いのり、ありがとう。もう大丈夫よ」
私はニコッとすると、ママはあたたかい手で、頬をさすってくれた。
今日も外は雪が降っている──
「きょうは、天くんと、ゆきであそべるといいなぁ」
雪のうたを歌いながら、黒いお洋服を着た私とママは、パパとの待ち合わせの場所へ向かうことにした──