第17話 事件
ずっと天君に感じていた違和感に気付いた私は、つい大声を出してしまった。
「……変わっちゃったね……天君」
放課後の学校に、重たく冷たい時間が流れる──
「急にどうしたの? いのり」
「……天君はもう……あの頃の天君じゃないっ!」
何を言っているのか、皆目見当がつかない様子の天君。
「だって……だって!」
「だって?」
「昔は自分のこと”ボク”って言ってたのに、今は”俺”って……」
「…………いのり?」
「何?」
「無駄にドキドキさせるなっ! これはもうアレな? 今日のお祝いは、いのりのおごりだからな?! あぁ、何食べっよかなぁ? お店にある一番高いのにしよう。お腹いっぱいにならなくてもいいから」
(他の人にとっては、どうでもいいことだとしても、私にしてみたら、十数年振りに再会した幼馴染みが、声も変わり身長も大きくなって、”俺”と言っていたら、これは立派な事件だよ──)
「それじゃあ、お祝いにならないじゃん! あっ、待ってよぉ! 天君っ!」
バタバタと騒々しく学校をあとにする二人……の後ろに伸びる影がひとつ──
どうでもいいことを、シリアスに持っていくいのりちゃんと、ただただ時間を無駄にしたと思った天君でした──