第14話 うっかり
「一年一組、青山 楓です」
「青山さんね。そのカメラ、新聞部のものよね? いいわ。今後十日間、新聞部は活動を休止するよう、顧問の先生に伝えさせてもらいます」
カメラを没収された青山さんは、“先輩に怒られる”と何度も口にしながら教室へと戻って行った──
「これでよし。で、具合の悪い子がいるのよね?」
二人の足音が、私の方へと近づいて来る。
「開けてのいいかしら?」
「あ、はい。どうぞ……」
「とんだ災難だったわね? 学校のトップの血縁者とふたりっきりの保健室……ゴシップには適当な題材ね」
「だからその、ふたりっきりって……ん? 学校トップの血縁者?」
「あら、知らなかった? 南海さんのお祖父さん、ここの学園長よ?」
私は慌てて天君の顔を見ると……。
「いやっ、あの……別に隠すつもりは無かったんだけど。ほら、そういうのバレると、コネだとか色々言われたりするかもと思って……」
天君が言おうとしていることは理解出来た……のだが。
「でもさ、引っ越ししたのって……」
「ああ。青森は母さんの故郷だからね。父さんの実家はこっちだし、だから親戚もこっちにいるんだ。いのり?」
「わかってる。このことは内緒でしょ?」
「助かるよ」
一番気まずそうにしていたのは保健の井上先生だった。
「内緒だったかぁ。ごめんっ! お詫びに…………この見たことないくらい大きな絆創膏あげよっか?」
「いらないですよ!」
「ふふっ」
思わず笑った私に天君は……。
「いのり、どうする? そろそろ始業のチャイムが鳴るけど、このまま横になってるか?」
「ううん。あと一時間だけだし、大丈夫そうだから教室に戻るよ」
天君とは、放課後にまた会う約束をして廊下でわかれた──
「またね」
「ああ。またあとで」