第1話 One day “雪”
東北の四月は、まだ寒い──
桜の蕾が膨らんできたかと思ったら、重く湿った雪が降ったりする程に。
子供の頃の私は、夜に雪が降りだすと、朝にはどれだけ積もるのだろうと、胸をワクワクさせるような子供だった。
「ママぁ? あした天くんと雪だるまさん作れるかなぁ?」
「そうねぇ。起きたらお外が真っ白になっているかもしれないわよ? さぁ、そろそろおねんねしましょう。おやすみ、いのり」
ママはそういうと、私が眠りにつくまで、優しく頭を撫でてくれた。
これがないと眠れないなんて、今思えば困った子供だ。
天君とは、近所に住んでいる南海 天君のことで──
本当は”天君”なんだけど、ママ達はみんな”天君”て呼んでるから、私もそう呼んでいた。
「あしたは、天くんより、おっきな雪だるまさん……つくれますように……」
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翌 日
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外はママの言うとおり、銀世界が広がっていた──
「うわぁぁ! まっしろだぁぁ!」
「お着替えして朝ご飯食べたら、天君にお電話しようね」
「はぁい!」
もぐもぐしながら私は、こんなに雪があったら、雪のお家が作れちゃうんじゃないかなと、はやる気持ちをご飯と一緒に飲み込んだ。
靴下と、お洋服のボタンに悪戦苦闘している私の髪を、ママが今日も解かしてくれる。
「今日はお帽子さん被るから、下の方で結んであげるね」
「かわいくしてください」
「かしこまりました。いのりお姫様」
お姫様──
それは魔法の言葉──
今日の私は”お姫様”なのだ。
(じゃあ、天くんが王子様かぁ……)
などと考えていると、お家の電話が鳴った──
「もしもし星野です。あら、天君? おはよう。ちょっと待ってね? 今いのりに替わるから」
話ながら手招きで私を呼ぶママ。
(天くん? まだかなぁってお電話かなぁ?)
しかしそれは、予想もしていなかったお電話だった──