84 現る
またしても、お久しぶりです。
投稿ペースが終わってんだわ……。
「うぅ……。すまん、アリス……」
「いいえ。今は素直に甘えてください」
優しい……。好き……。
現在、ライゾウとの戦いで力を使い果たした私は、孫娘に背負われて運ばれていた。
「アリスくん、やはり余力のある俺が代わ……」
「却下だ!」
ランスロットの戯言を切って捨てる。
お前は他の生徒達と一緒に、虫の息のシオンと、簀巻きにしたライゾウを運びながら周囲を警戒する役割だろうが。
しょんぼりするな。
脈ナシなんだから諦めろ。
そうして、疲労困憊の一同で歩くうち、辿り着いた。
「あと一人よ! 全員、気張りなさい!」
「「「うぉおおおおおおおお!!」」」
ユーリの守る野営地点。
そこでは、いくつもの魔法を合成した大風が吹き荒れ、敵を追い詰めていた。
「━━━━━」
敵はフルフェイスの兜を被った、上半身裸の男。
英雄の領域にある身体能力と、どっかで見たようなキレのある動きで暴れてるが、既に四肢の半分を失い、制圧まで時間の問題に見える。
他の敵も死ぬか捕縛されるかで沈黙し、動いてるのは半裸のマッチョ一人だけ。
さすが、ユーリ。
心配無用だったか。
「これで、終わりよ!」
「━━━━━━━━!」
そして、その後すぐに戦闘は決着。
最後の敵はユーリの魔法で氷像と化し、制圧された。
……終わったか。
「お母様!」
「! アリス、良かった。あなた達も、無事みたいで安心したわ」
「大苦戦したがな。……そっちも、かなりの強敵だったか」
「ッ!? お母様、腕が……!?」
ユーリは、左腕を失っていた。
相応に高位の治癒術師でなければ完治させられない重傷。
王国最強の一角がこんな痛手を負うとは……大事件だ。
「……ちょっとヤバめの初見殺しを食らったわ。悔しいけど、彼が来なければ危なかったかも」
「彼……」
ユーリの視線の先を見る。
精根尽き果てた様子で、まさしく虫の息で地面に転がる、一人の男がいた。
「あ、れは……フォルテ、か……?」
「アクロイドさん……」
……クソ虫。
緊急事態だったから、味方にできるかと思って喝を入れたが、思った以上に死力を尽くしてくれたらしい。
大事な大事な孫娘を追い詰めた罪は消えないが……それはそれとして、働きを認めないわけにもいかない。
「ぜぇ……ぜぇ……ひゅー……」
「……………………よくやった」
演技ではありえない、干からびるほど出し尽くした姿の少年に、労いの言葉をかける。
聞こえているかは疑問だが、それでも言っておくべきだと思ったから。
「さてと、呆けてはいられないわ。全員集合! 安否確認を済ませるわよ!」
ユーリの号令で、皆が集められる。
そして、これだけの強敵に襲撃されながら、生徒には死者が出なかったことが判明した。
……とはいえ、完全勝利とまでは言えない。
護衛の騎士達や教師達の中には、子供を守って殉職した者達が出ている。
それでも、間違いなく、この戦いは私達の勝利だ。
英雄クラス3人。うち1人は大英雄と呼んで差し支えない上位の実力者。
加えて、侵略戦争時代の嫌な連中を思い出させる、死兵の雑兵達。
それを正規軍でもない集団で撃退したのだ。
今のグラディウス王国は強い。
敵にも存分に、その事実を叩きつけてやれた。
死した者達にも胸を張れる、素晴らしい戦果だったと言えるだろう。
「ふぅ。とりあえず、切り札を待つまでもなく終われて良かったわ。じゃあ、急いで帰還の準備を整えて……」
まだ元気に指揮を執る二番弟子に安心感すら覚え、張り詰めていた糸が緩んでいく。
そして、私もクソ虫……フォルテのように、戦いの疲労で段々と意識が遠退いていって──
「ほう。余の手勢が全滅か。思いのほか、やるのだな」
「「「!?」」」
──突然、背筋の凍る気配が現れて、一瞬で目が覚めた。
見れば、すぐ近くに空間の歪みが発生している。
オリビアの空間魔法とは違う、禍々しい魔力で歪められたその場所に、そいつは立っていた。
女だ。
長い黄金の髪をなびかせた、長身の女。
腰には2本の剣。
顔には表情の一切を覆い隠す、不気味な無貌の仮面。
「……………………は?」
その光景に、私は一瞬、理解が追いつかなかった。
ついに、コミカライズで先出ししてた最推しを出せたぜ……!




