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【コミカライズ】最強の剣神、辺境の村娘に生まれ変わる。  作者: 虎馬チキン
第5章 迷宮遠征編

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81 『神速剣』

「ッ……!」


 身体が痛む。

 己の闘気の全解放と、十剣の疑似闘気の重ねがけは、ただ立っているだけで才無き少女の肉体を破壊していく。


「参る!!」


 遠巻きに消耗戦でも仕掛けられたら危なかったが、そこはライゾウ。

 ご褒美を貰った犬のように見えない尻尾を振り回し、嬉々として向かってくる。


 ただし、さっきまでとは突撃の仕方が違った。


「『雷速』! 『雷速』! 『雷速』! ──『雷速太刀足・迅雷の型』!」


 ライゾウは駆ける。

 王国剣術の飛脚に似た技で宙を駆ける。

 その目的は──助走。


(ソク)、速、速、速、速速速速速速速速ッッ!!」


 一歩踏み込むごとに加速を繰り返し、若き侍は魔法ではなく生身の移動速度で雷に迫らんとする。

 あんな無茶を私がすれば、数瞬で粉微塵になるだろう。

 今となっては羨ましいことこの上ない肉体強度だ。


「『神』に挑まんとする某の全力!! とくとご覧あれ!!」


 ライゾウの軌道が変わる。

 助走が終わる。

 雷そのものと化した男が、私に向かって降ってくる。



「奥義──『神成り(かみなり)』!!」



 ……見事な技だった。

 速度、威力、技術、全て申し分なし。

 下手をすれば当代剣神(アレク)ですら敗れ、成り代わられるだろう。

 前任者として太鼓判を押さざるをえない。



「『真・神速剣』」



 そんな奥義を迎撃する。

 上から降ってくる雷に、下段に構えた妖刀を振り上げて、迎え撃たんとする。


 使う技は全盛期(・・・)の神速剣。

 若い頃のエドガーの身体でも反動が来た禁じ手。

 つまり駆け引きも何もない、純粋な速度対決で真っ向から潰す、究極の脳筋戦法。


 速さの剣。

 ライゾウの最も得意とする剣。

 剣神エドガー(昔の私)が最も得意とした剣。

 真なる神、真なる最強、真なる剣の極致に唯一抗いえた、限界突破の一太刀。




「────『一閃』」




 奥義が激突した。

 轟音、衝撃。

 ライゾウの着地で地面がめくれ、土煙があたりを覆い尽くす。

 それが晴れた時、否、その前に決着はついた。


「ハ、ハハハ!」

「ぐっ……!」


 ライゾウが笑う。

 私は膝をつく。

 全盛期以来の限界突破(無茶)をした私の腕は──へし折れて使い物にならなくなった。


 専門の治癒術師の集中治療を受けねば治るまい。

 アリスやユーリでは治し切れない。

 つまり、今回の戦いからは完全にリタイアだ。


「まことに、あっぱれ……!」


 一方のライゾウは──両腕を斬り飛ばされ、胴体に深い裂傷を刻んでいた。

 掴んだままの手と共にクルクルと宙を舞っていた雷刀が、今頃落ちてきて地面に突き刺さる。

 表面に僅かに残った雷属性の魔力が地面に流れ、完全に沈静化する。


「ああ、悔しい、で、ござ、る……!」


 最後まで戦いのことを想い、台詞に反して興奮気味に口角を吊り上げたまま、雷の侍は血を撒き散らして崩れ落ちた。


「ふぅ……」


 勝った。終わった。

 まだ敵は残っている。ユーリの方から戦闘音が聞こえる。

 なのに、もう戦えないほど力を出し尽くし、こんな若造と半ば相打ちが精一杯。

 ああ、まったく──



「見事なり、シデンイン・ライゾウ」



 嫁入り前の孫娘に傷をつけた野郎に、まさかこんな感想を抱くとは。

 年は取りたくないもんだな。


「リンネちゃん!! 無事ですか……ッ!? 腕が……!?」

「アリス……」


 駆けつけてきたアリスが治癒魔法をかけてくれる。

 戦えるほどには治らないものの、痛みが随分マシになった。天使。


「……すまん。私はここまでだ」

「良いんです! 大丈夫です! あとは私達が守りますから……!」


 ……情けないが、もうそれしかない。

 今の私は大人しく孫に介護されるしかない無力な年寄りだ。


 シオンも満身創痍で戦闘不能。

 アリスとランスロットも相当疲弊し、英雄級を追加で相手にするのは無理だろう。

 他の教師生徒も強いが、相手が悪い。


 頼みの綱はユーリ、オリビア、あと凄まじく不本意だがクソ虫。

 最後の一人のせいでもの凄く気乗りしないが、お前達に託した。

 どうか、守り抜いてくれ。

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