78 雷の再会
お仕事分をとりあえず書き終えたので復帰。
連載再開しておいて後回しにちゃったのは痛恨の極みだけど、今の技量で第2章をコミカライズとして直せるのは至福でした……!
「『飛剣・雷迅』!」
「『飛剣・水刃』!」
謎の集団による襲撃開始直後、シオンとアリスの二人は合流に成功し、襲撃者達を相手に無双の活躍を見せていた。
雷と水の刃が舞い踊り、若い命を狙う不届き者の群れに天誅を下す。
大人達から特別生、英雄の卵と評されるのは伊達ではない。
「なんなんだ、こいつら……!」
しかし、大活躍するシオンの顔色は悪い。
敵は命を顧みずに突撃し、死に瀕すれば躊躇なく自爆するという狂気の集団。
似た戦法は前にも見たが、だからこそ根本的な違いが浮き彫りになる。
(アクロイドが送りつけてきた奴らとは何もかも違う……!)
人間を相手にしている感覚がしない。
だが、剣から伝わってくる嫌な感触は、魔物相手とは比べ物にならない禁忌のそれ。
戦況としては圧倒していても、心理的にはそうでもない。
「アリス、大丈……」
「ハァアアアアアア!!」
「!」
隣のアリスを心配して声をかけたが、目に映ったのは気丈な顔で剣を振るい、守りの剣技で味方を助け、水魔法を中心にカウンターを決めて、確実に敵を削っていく女傑の姿。
かつてアクロイドの自爆兵を見て顔を青くしていた少女は、すっかり立派に成長していた。
「シオンさん! ちょっとペース落ちてますけど大丈夫ですか!」
それどころか逆に心配される始末。
(これは完全に並ばれたな……)
出会った頃の儚さと、自分の方が先に闘気使いの域に到達していたことから、どこかアリスを妹のような目で見ていた。
だが、もうそんな目では見られない。
「ああ、問題ない! このまま他を助けに行くぞ!」
「はい!」
二人はそのまま進撃を続ける。
そのおかげもあり、助けられて襲撃者を振り払った生徒達は、続々とユーリが守る野営地へ移動。
各個撃破を避けた上で、二人は知らぬことだが、窮地に立たされた英雄へと増援を送る形となった。
かなり最善に近い動き。
しかし、所詮は敵の雑兵を掃除しているだけ。
この戦いは──敵の大駒を退けなければ終わらない。
「アハハハハハ! 楽しいでござる! これほどの強者との出会いに感謝を!」
「ぐっ……!?」
「「ッ!」」
しばらく戦い続けた頃、ひときわ激しい戦闘音が聞こえてくる場所に辿り着いた。
雷撃のような轟音が響き渡り、それを迎え撃つ破壊音と合わさって、壮絶な戦場音楽を奏でている。
明らかに自分達よりも格上の気配。
見れば、そこにいたのは──
「ランスロットさん! オリビアさん!」
襲われていたのは『剣聖』ランスロットと、王女の護衛を務める空間魔法使いオリビアを含む生徒と教師達。
アリスと同じかそれ以上に重要なオリビアと共に行動していたのは、剣聖を始め実力者揃いだった。
──それが、たった一人を相手に押されている。
オリビアすら雷撃の対処に必死で、準備時間のかかる長距離転移ができないほどに。
「あいつは……!」
そんな強大な襲撃者の姿に、シオンは覚えがあった。
身に纏うのは和服という、このあたりでは珍しい装束。
振るうのは雷を纏った伝家の宝刀。
それはまさに、かつて辻斬り騒動の際に顔を合わせた──
「何の真似だ……! ライゾウッッ!!」
雷の侍、シデンイン・ライゾウがそこにいた。
シオンに奥義を授けてくれた師の一人とも言える存在が、敵としてそこにいた。
「やや! シオン殿! こんなところで奇遇でござるな!」
「『龍爪斬』!!」
「おおっとぉ!?」
隙を見せたライゾウに、ランスロットが渾身の反撃の刃を振るう。
避けられた。
だが、簡単な回避でもなかった。
「いやはや、友人がいるとなるやりづらい……」
「俺は、何の真似だって、聞いてる……!」
怒りに震えるシオンの声。
ライゾウは「うっ……」と本気で悪いと思っていそうな感じで顔を強張らせ──割とペラペラ喋り出した。
「実は今お仕えしている主の命令で参戦したのでござる! 拙者としても強者と本気で斬り合える機会! 断る理由も権利も無かったのでござるが……」
「俺のことも斬るのか?」
「…………主の命とあれば致し方なし。まさか出奔同然で国を飛び出した拙者が、こんな忠義の将のようなことを言うとは思わなかったでござる」
結構本気で不本意と思っていそうな顔だが、決して構えを解きはしないライゾウ。
しかし、喋っている間は手が止まり、その隙にアリスがランスロットのところに駆け寄って治療することができた。
「大丈夫ですか!?」
「ああ、ありがとう。俺はまだまだ大丈夫だ……!」
この短時間で施せたのは応急処置程度だが、それでもランスロットは皆を安心させるように力強く笑った。
剣聖。王国にとっての三剣士と同じ意味を持つ称号。
若く未熟ながらもそれを背負う者としての覚悟が彼にはあった。
「アリス様……」
「オリビアさん! 早く転移魔法を!」
「……承知いたしました」
戦況の鍵を握るオリビアもまた、己にできることをやる。
発動に時間のかかる長距離転移魔法の構築開始。
その間、自分は無防備どころか殆ど身動きすら取れなくなるが、今の戦力にならその間を任せられる。
(すっかりご立派になられた……!)
主であるスカーレットの背中に隠れていた少女が、今は自分を背に庇ってくれている。
これを信じず報いぬのは忠臣の恥とオリビアは心得た。
「……せめて敬意を込め、今一度名乗ろう! 我が名はシデンイン・ライゾウ! 元和国の武将にして、今は主より『新生十二神将』の一席を賜りし者! いざ尋常に勝負!!」
十剣の一つを持ち、並の英雄を遥かに凌駕する敵の大駒の一人が名乗りを上げる。
三剣士に匹敵する現代の最高峰に、次代を担う子供達が挑む戦いが始まった。
短くてごめん……!
でも、このままダラダラと書き上がらないよりは、短くても更新頻度を上げることを選ぶぜ……!




