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【コミカライズ】最強の剣神、辺境の村娘に生まれ変わる。  作者: 虎馬チキン
第4章 武闘大会編

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59 再会と開幕

「お、リンネとシオンじゃないっすか! 久しぶりっすねー」

「そんなに久しぶりじゃないような気もするけど……」


 幼馴染の内、二人。

 オスカーとラビは普通に対応してきた。

 そこに驚いたような様子はない。

 まあ、王都に来れば私達と再会する事はわかっていただろうし、当然か。


 だが、最後の一人。

 ベルだけは、何故か、私を見て目を見開いていた。

 どうした?


「リンネ!? お前、なんだその格好!?」


 格好?

 ただの私服だが。

 ああ。

 そういえば、村にいた頃は、こういう女の子っぽい服を着た事はなかったな。


 私は、ミニスカート姿を見せつけるように、クルリとターンしてから満面の笑みでベルに告げた。


「可愛いかろう?」

「うっ!? 吐き気が!」


 失礼な奴だな。

 そして、いつぞやのシオンと全く同じ反応だ。

 やっぱり、こいつら幼馴染に似てきてるわ。

 なんか、シオンが「わかる」とでも言わんばかりに、ベルの肩を叩きながら強く頷いてるし。

 ベルは、そんなシオンを見て固い握手を交わした。

 お前ら、前は喧嘩ばっかしてたくせに。

 いつから、そんなに仲良くなった?


「あの、リンネちゃん、この方達は?」

「ああ、私とシオンの幼馴染の冒険者だ。前に吟遊詩人が歌ってた『英雄の剣』っていただろう? そいつらだ、そいつら」


 私は、アリスにこいつらの事をざっと説明した後、耳元に顔を近づけて、小声で付け足した。


「ちなみに、私の前世の事は教えてないから、そのつもりで頼む」

「え? いいんですか? 教えなくて」

「こいつらに話したら、絶対拡散するからな」


 特にオスカー。

 おもしろ半分で吹聴する未来が見えるようだ。

 いや、まあ、あいつも鬼畜外道ではないから、ちゃんと口止めすればわかってくれそうではある。

 だが、しかし。

 それをネタに色々とされそうで、なんか嫌だ。


 あと、ベルも危険だな。

 こいつに至っては、普通に口を滑らせると思う。

 なにせ馬鹿だからな。


 ラビは……まあ、大丈夫だと思うが、他の二人に話さずラビにだけ話すというのもアレなので、言わなくていいだろう。

 別に、前世の事を話すのは義務じゃないしな。


「はじめまして。私はアリスと申します。リンネちゃんの友達? です。よろしくお願いしますね」

「あ、これはご丁寧にどうもっす。あたしはオスカー。よろしくっす」

「ラビです。よろしくお願いします」

「俺はベルだ!」


 私がそんな事を考えている間に、アリスがベル達と挨拶を交わしていた。

 続いて、興味深そうな顔をしたスカーレットとオリビアが寄って来て、同じく挨拶を交わす。

 ……こいつらがアリス達の立場を知ったらどんな反応をするのだろうか。

 少しだけ気になる。

 とりあえず、ラビは盛大に驚いてくれそうだな。


「で、ここにいるって事は、お前らも大会に参加するのか?」

「その通りだ!」

「正確にはあたしとベルだけっすけどね。ラビは応援っすよ」

「うん……人と戦うのは苦手だし」


 ああ。

 まあ、ラビだもんな。

 多分、盗賊とかに襲われたらちゃんと戦えるんだろうが、自分から積極的に戦おうとは思わないか。

 どうやら、そこら辺は変わっていないようだ。


「それよりも! リンネ! シオン! お前らは何ブロックだ!?

 俺はDブロックだ!」

「あ、ちなみに、あたしはCブロックっす」

「ほう」


 ベルの方はさっき見て知ってたが、オスカーの方は知らなかったな。

 そうか。

 アリスと同じブロックか。


「私はAブロックだぞ」

「俺はBブロックだ」

「そうか! なら、お前らと当たるのは決勝だな!

 お前ら二人とも、俺がぶっ飛ばしてやるから覚悟しとけ!」


 ベルはビシッと私達を指差しながら、堂々と宣言した。

 強敵相手に、堂々の勝利宣言。

 中々にカッコいいな、おい。


「ベル、組み合わせ的に二人ともとは戦えないっすよ?」

「黙ってろ、オスカー!」


 しかし、オスカーの入れた茶々によって、ベルのカッコよさは霧散した。

 うむ。

 それでこそベルだ。

 なんだか安心したぞ。


「とにかく! この大会で優勝するのはこの俺だ!

 決勝で会おうぜ!」


 そうして、ベルは背を向けながら腕を横に突き出し、親指を立てるポーズをしてから去って行った。

 なんか、吟遊詩人が歌ってた歌の中に、こんな感じのシチュエーションがあったような気がする。

 そう思うと少し滑稽だが、ベルの闘志は本物だ。

 村にいた頃、ベルは私に一度も勝てず、シオンにも負け越していた。

 そのリベンジに燃えているのだろう。

 挑戦者が一人増えて、私も嬉しい。


「じゃあ、あたし達は観客席の予約をするっすよー」

「え? 追いかけなくていいの?」

「ほっとけ、ラビ。今はカッコつけさせてやれ」

「……絶対に道に迷うぞ、あれは」


 という事で、ベルが一人で勝手にフェードアウトした後、オスカーとラビの二人は観客席のチケットを買う為に残った。

 が、


「そうですわ! お二人とも、せっかくですし、わたくし達と一緒に観戦しませんか?

 学校関係者は特別席が取れますし、おすすめですわよ」

「お、いいんすか? じゃあ、お言葉に甘えるっす」

「お、お願いします」


 というスカーレットの提案により、チケットを買う必要はなくなってしまった。

 王女様と一緒にいたら絶対注目されると思うが、まあ、知らぬが花だな。

 というか、学校関係者の席って、部外者を招いてもいいのか。

 なら、もう一人、哀れな中年ボッチを誘ってやろう。

 酒場にでも行けば遭遇できるだろうし、今日この後で誘ってくるか。



 その後は、スカーレット達がオスカーとラビと親交を深めるべく、王都を適当に案内しながら食べ歩きとかして解散したのだった。

 女子比率が凄い事になってシオンが大変そうだったが、それはどうでもいい話である。






 ◆◆◆






 その日の夜。

 アリスが夕飯に合わせてナイトソード家に帰るというので同行した。

 用件は何かと思ってアリスに聞けば、アレクとユーリに呼び出されたんだそうだ。

 なのに、何故かアリスがちょっとネガティブになっている。


「……ナイトソード家の娘として、不甲斐ない結果を残すなと警告されるのでしょうか?」


 と、馬車の中でアリスがそんな弱音を吐き出した。

 それは普通にないと思う。


「いや、普通に頑張れって激励したいだけだと思うぞ」


 あいつらもアリス大好きだからな。

 少なくとも、キツイ言葉を吐く事はないだろうよ。

 だが、アリスはつい最近まで剣神の娘としてのプレッシャーに悩まされていたからなー。

 だから、ついつい思考がそういう方向に行ってしまうのだろう。

 とりあえず、大丈夫だと頭を撫でておいた。



 そして、夕飯の席で孫家族は顔を合わせ、アリスの心配はやっぱり杞憂であったと確信した。

 

「アリス、今度の休み明けは遂に武闘大会だね。自分の力を信じて思いっきりやりなさい。

 勝っても負けても良い経験になるだろうから」

「私達も貴賓席から応援してるわ。秘密特訓もしたんだし、自信を持ちなさい。頑張ってね」

「……はい!」


 アレクとユーリは、どこまでも優しい目でアリスを見ながらそう言った。

 無表情がデフォルトのユーリが微笑んでる事からもわかる通り、その視線は慈しみと愛に溢れている。

 厳しい言葉で追い詰めるような真似はしない。

 代わりに、優しい言葉で頑張れと言う。

 やはり、私の予想は正しかったな。


 その日は、私の提案によって、親子三人一緒のベッドで寝かせる事になった。

 アリスは「この歳になって恥ずかしいです!」と言って渋ったが、ノリノリの両親と私と使用人軍団の勢いに負けてベッドイン。

 今まで変に拗れてた分、存分に愛情を確かめ合うがよい!

 

 翌朝、アリスは恥ずかしそうにしながらも、どこか満足げな表情を浮かべていた。

 おじいちゃん、良い仕事したぜ。






 ◆◆◆







 そして、そこから休日を挟んでの二日後。

 遂に武闘大会開催の日がやってきた。

 コロシアムの周辺には出店が立ち並び、観客は誰が優勝するかの賭けでやんややんやと盛り上がり、まるで祭りのような様相を呈している。

 武闘大会は、予選に一日、決勝トーナメントに一日と、二日に別けて行う為、このお祭り騒ぎは二日に渡って続く事になるだろう。

 ついでに、出店に突撃するベルとオスカーの姿を発見した。

 余裕のある連中である。


「相変わらず凄ぇ賑わいだな。さすが王都。何やるにしても大掛かりだ」


 と、そこで、私の連れて来た中年ボッチこと、ドレイクが感嘆したように呟いた。

 まあ、武闘大会は国王(シグルス)も見に来るような一大イベントだからな。

 参加者の数も、観客の数も、会場の広さも、賑わいも、どれを取っても国内最大級だろう。

 何度見ても驚くというやつだ。

 まあ、それでも、


「キョロキョロしすぎるなよ、ドレイク。田舎者だと思われるぞ」

「田舎者は嬢ちゃんの方だろうに。てか、嬢ちゃんは特に驚かねぇんだな」

「私は慣れてるからな」

「嘘つけ。王都に来てから、そんなに経ってねぇくせに」


 そんな会話を挟みつつ、コロシアムの中に入り、観客席へと足を進めた。

 他の学生達も家族とか知り合いっぽい奴を連れていた為、ドレイクがそこまで目立つ事はなかった。

 代わりに、ドレイクを見て私の父親じゃないか的なヒソヒソ話が聞こえてきたのは少々不快だったが。


「ハッ。嬢ちゃんと俺が親子ねぇ。ジャックが聞いたらキレそうな話だ」

「失礼な。パパはそこまで狭量じゃないぞ」

「どうだか」


 まあ、多分。

 少なくとも、子供相手に大人げなくキレたりはしないと思うが。

 だが、八つ当たりでドレイクが殴られる可能性はあるか。


 ヒソヒソ話を聞き流しつつ、他の面子がいる場所を目指す。

 そして辿り着いた時には、出店の食い物にかぶり付くベルとオスカーに、控えめに食べているラビ。

 楽しそうなスカーレットと、そのスカーレットと話しているアリス。

 二人の側に影の如く付き従うオリビア。

 緊張してるのか無口なシオンと、

 既に私達以外は勢揃いしていた。


「よ、待たせた」

「あ、遅かったですね、リンネちゃん。

 えっと、そちらの方は?」

「げっ!? ドレイク!」

「お、久しぶりじゃねぇか坊主ども。そっちの嬢ちゃん達ははじめましてだな。

 俺はドレイク。リンネの嬢ちゃんの知り合いで、S級冒険者だ。よろしくな」

「あ、はい」

「よろしくお願いいたしますわ」  


 私が見ている前で、ドレイクは気軽にアリス達との挨拶を済ませた。

 アリス達の身分を教えてやったら、マルティナの時みたく、おもしろい事になりそうだが……まあ、今回はやめておくか。

 祭りは、和気藹々としてた方が楽しいだろうし。


 そうして、ベル達が迷宮攻略の話を私やドレイクに自慢したりしている内に、大会の開始時刻がやってきた。

 コロシアムに設置されている銅羅が打ち鳴らされ、グワーーーン! というデカイ音が響き渡る。

 そして、コロシアムの貴賓席からシグルスが出て来て、拡声の魔道具を使いながら武闘大会の開幕を告げた。


「今年もまた、この時がやって来た。

 己の武に絶対の自信を持つ強者達、そして、王国の未来を支える若き騎士候補生達が全力でぶつかり合う、闘いの時だ。

 しのぎを削れ。

 死力を尽くせ。

 全力を出しきれ。

 私は、そんな諸君の活躍を楽しみにしているぞ。

 ━━ここに、第91回王都武闘大会の開催を宣言する!」

『おおおお!』


 シグルスの宣言に、会場中が湧いた。

 そこに、私に対して土下座していた愚王の面影など欠片もない。

 あいつも、ちゃんとしてれば立派な国王なんだよ。

 ちゃんとしてれば。


 あと、どうでもいい話だが、スカーレットはあそこにいなくてもいいのだろうか?

 そんな思いで、横のスカーレットをチラリと見る。

 すると、私の視線にスカーレットは気づいたらしく、スッと目を反らした。

 ……なんだ、その反応は?

 まさか、サボってるとか、そういう事じゃあるまいな?

 いや、だとしても、サボりの常習犯である私が言えた義理ではないか。

 黙っとこう。


『それでは、これより予選Aブロックを開始します。

 選手の皆様は、控え室に集合してください』


 続いて、そんな放送が流れた。

 よし、私の出番だな。


「では、行ってくる」

「リンネちゃん、頑張ってください!」

「任せろ!」


 アリスの応援で元気百倍だ!

 大活躍をしてみせようぞ!


「オリビア、あなたも頑張りなさい!」

「ハッ! 全力を尽くさせていただきます」


 隣では、スカーレットがオリビアに激励を送っていた。

 負けんぞという視線をオリビアに向ければ、珍しく好戦的な目で睨み返された。

 滾るな。


 さて、ではやるとするか。


 私は、気合い充分のベストコンディション状態で、オリビアと共に控え室へと向かったのだった。

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― 新着の感想 ―
果たして、ベルはいつ合流出来たんだろうなあ………。
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