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【コミカライズ】最強の剣神、辺境の村娘に生まれ変わる。  作者: 虎馬チキン
第3章 辻斬り編

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46 護衛依頼終了

 爺さんを隣街に送り届け、商談が済むまで待ち、また護衛して王都に戻って来た。

 そうして、やっと依頼達成。

 その頃には、連休最終日の夕方になっていた。

 なんか、無駄に疲れたな……。

 こんな状態で明日から学校か。

 気が滅入りそうだ。


「これで依頼は完了じゃな。本当に心から感謝するぞい。君達がいなければ、ワシは生きてはいなかったじゃろう。

 本当に、ありがとう」


 無事に商会の前まで護衛し終えた時、爺さんに本当に助かったって感じで礼を言われた。

 ……まあ、辻斬りは逃がしたが、依頼人が無事でここまで感謝されたなら、今回の戦いは少なくとも無駄ではなかったと素直に思える。

 なら、いいか。

 後の事は後で考えるとして、今は素直に喜んどくか。


「もちろん、報酬は弾むぞい! それに感謝の気持ちを金だけで済ませるつもりはないわ!

 何かあったら是非とも、このヤコブ商会を頼ってくれい!」


 爺さんがドンと胸を叩きながら頼もしく宣言した。

 そして、その直後、盛大に蒸せていた。

 護衛の一人が爺さんの背中を撫でる。

 うむ。

 実に頼りないな。


 だが、頼ってくれと言うのなら、素直に好意に甘えておこう。

 ちょうど、この爺さんに頼みたい事もある。

 遠慮なく搾り取らせてもらおう。


「じゃあ、爺さん。剣を一本売ってくれ。できるだけ頑丈なやつを、できるだけ安く頼む」

「おお、そういえば君の剣は折れてしまったのだったな。

 あいわかった。数日中には良い商品を見繕っておこう。

 後日、また来てくれ」

「わかった。よろしく頼むぞ」


 爺さんは、まるで孫でも見るかのような優しい目をしながら、私の願いを聞いてくれた。

 まあ、前世まで含めれば私の方が歳上だと思うがな。

 だが、なんにせよ、これで安値で名剣ゲットだぜ!

 カゲトラとの再戦を考えれば、最低でも魔剣クラスに頑丈な剣の入手は必須だからな。

 最悪、アレク辺りにたかろうかと思ってたが、安く手に入りそうでよかった。


 

 そうして、爺さん達と別れ、依頼の達成報告の為に冒険者ギルドを目指す。


「リンネ殿! この後、一戦どうでござるか?」

「一杯どうですかみたいに言うな。やらんぞ」


 その途中でライゾウが話しかけてきた。

 カゲトラとあれだけ戦っておいて、私とのバトルまで望むか。

 重症だな。

 というか、こいつは冒険者じゃないのだから、ギルドにまで付いて来る必要はないだろうに。

 そこまでして私と戦いたいか?


「そこをなんとか!」

「い、や、だ! 私は明日から学校なんだ! これ以上疲れさせるな」

「ぐぬぬ」


 それに、この後アレクに辻斬りの事を報告しとこうと思ってるんだ。

 戦闘狂と遊んでいる暇はない!


「というか、そんなに強い奴と戦いたいなら、剣神に挑んだらどうだ? もしかしたら、試合くらいなら受けてくれるかもしれんぞ?」

「それができるなら()ってるでこざる! しかし、剣神殿に挑むのは(あるじ)に禁じられているのでござるよ!」


 ああ、なるほど。

 まあ、たしかに、うっかりライゾウが勝って剣神が代替わりでもしたら、和国との国際問題になりかねないからな。

 ライゾウに主なんてもんがいるなら、そりゃ止めるか。

 ……しかし、この戦闘狂に主か。

 ちょっと会ってみたい気もするな。

 きっと、苦労しているのだろう。


「ですから、リンネ殿! 剣神殿の代わりに、どうか拙者と一戦!」

「断る!」


 そう。

 まさに今の私のようにな!


「……ライゾウ。だったら、俺と戦ってくれないか?」

「シオン殿?」


 私が断固として拒否していると、今度はシオンが口を開いた。

 おお、友よ!

 私の身代わりになってくれるとは、なんと友達想いな奴なんだ!

 見直したぞ、シオン!


「今回の件で痛感した。俺はまだまだ弱い。だから、強いお前に鍛えてほしい。頼む」


 おっと、どうやら私の為じゃなかったようだな。

 だが、まあ、いいんじゃないか?

 自分磨きをするのは良い事だ。


「む、指導でござるか。まあ、たまにはいいでござるな!」


 ライゾウも乗り気みたいだし、せいぜい仲良くやっとけ。

 私は知らん。

 ただ、シオンがライゾウみたいにならないように祈っておこう。

 シオンよ。

 自分のキャラは大切にな。



 そんな会話を挟みつつ、ギルドに到着。

 受付に報告して報酬を受け取り、その足でシオンとライゾウは訓練場に消えて行った。

 さて、私も行くか。


「嬢ちゃん、ちょっと待て」

「ん?」


 そうしたら、ドレイクに呼び止められた。

 どうした?


「これだけは言っとこうと思ってな。

 辻斬りにしてもなんにしてもそうだが、あんまり危ねぇ事に首突っ込むな。

 嬢ちゃんに何かあったら、ジャックの野郎が悲しむ。

 だから、もう少し静かに生きてくれ。頼むから」

「む……善処する」


 たしかに、今回の事はドレイクにも心配をかけたし、うっかりカゲトラに負けて死んでたら、父や母を悲しませる結果になっていただろう。

 遺される者の気持ちは、痛い程によくわかってる。

 戦う事は死と隣り合わせであり、今さらその生き方を変えるつもりはないが、死なない努力はする。

 静かに生きる事に関しては……うん、善処しよう。


「信用ならねぇなぁ。まあ、嬢ちゃんの事も心配だし、俺はしばらく王都に留まる事にするぜ。

 だから、何かあったら頼れよ。いいな?」

「……ああ。わかった。約束する」

「よし。じゃあ、またな」


 それだけ確認して満足したのか、ドレイクはギルドに併設されている酒場の方へと消えて行った。

 やはり、ドレイクは良い奴だな。

 それに、なんとなく父と似た感じがする。

 私の保護者を気取ってるのかもしれん。


 だが、悪い気はしない。

 私も、ドレイクの事は、頼りになる親戚のおじさんみたく思っているのだ。

 本人も言っている事だし、これからも存分に頼りにさせてもらおう。


 そうして私は、悪くない気分でギルドをあとにした。






 ◆◆◆






「という感じだったぞ」

「なるほど」


 その後、私はナイトソード家に足を運び、アレクに事の顛末を説明した。

 トーマスやメアリー、ユーリなんかは仕事中で、ここにはいない。

 アレクも仕事中なんだが、事の重大さをかんがみて、一旦作業の手を止めて私の話を聞いた感じだ。


「まさか、リンネさんですら仕留めきれないとは思いませんでした。予想以上の使い手ですね、辻斬りは」


 アレクが真剣な顔でそう言った後、「まさか、本当に遭遇するなんて……」と呟いていたのが少し気になったが、私がそれにツッコム前に、アレクは話を進めた。


「リンネさん。辻斬りと三剣士(おれたち)だと、どっちの方が強いと思いますか?」

「お前らだな。ちゃんと本気出して油断さえしなければ、十中八九、お前らが勝つだろう」


 私は即答した。

 あの辻斬り、カゲトラは確かに強い。

 身体能力、技術、経験、どれを取っても超一流。

 昔は和国で一、二を争う剣士だったと言われても、素直に信じられる本物の強者だった。


 しかし、それでも弟子どもの領域には、あと一歩届かない。

 弟子どもやライゾウのような、剣神に手が届く最高峰の剣士達……すなわち、『最強』と呼ばれる領域には到達していない。

 それが、奴と直接戦ってみた私の感想だ。


 こう、上手くは言えないが。

 あいつには、何か(・・)が足りない感じがした。

 弟子どもやライゾウ。

 もっと言えば、シオンやアリスからも感じる、最強に至らんとする剣士として必要不可欠な何かが、奴には欠けている。

 そんな気がしたのだ。


 それが、なんなのかはわからんがな。

 あくまでも、私が直感で感じた事に過ぎない。

 全くもって的外れな指摘である可能性も大いにある。

 これについては、考えるだけ無駄だろう。


「まあ、なんにせよ、辻斬りが相当の凄腕だったというのは確かだ。

 奴に一騎討ちで勝てる奴は、それこそ国内には私とお前らくらいしかいないだろう。

 例外は外国人のライゾウだけだが、あれを当てにするのはやめとけ。

 私以上の脳筋だ。連携なんて絶対に取れない」

「あ、はい。……リンネさん以上の脳筋?」


 アレクは今一ライゾウの事が理解できていないようだが、まあ、構うまい。

 あいつはカゲトラと違って敵ではないのだから。

 そんなに気にする必要もないだろう。


「……しかし、そうなると厄介ですね。

 辻斬りがそこまでの使い手と判明した以上、手を打たない訳にもいきませんし、かと言って普通の騎士や兵士では倒せない。

 俺達が出て行っても、神出鬼没故に捕らえられるかは怪しいところ……。

 ……頭の痛い問題です。大臣は、本当に厄介な手駒を持ってる」

「まったくだな」


 いっその事、大臣とやらの屋敷に乗り込んで、直接ぶっ殺した方が早いんじゃないか?

 とは思うものの、いくら私でも、確たる証拠もなしに公爵を殺っちまうのというは、さすがにヤバイと理解できる。

 それだったら、アレク達が政治的に大臣失墜させるのを待った方が、まだいい。

 それまでの間、カゲトラの影に警戒し続けるのは嫌だから、そっちは早めに対処したいとは思うが。


 というか、今さらだが、なんであれ程の強者が大臣なんぞに協力してるんだ?

 話してみた感じ、カゲトラは根っからの悪人という感じではなかった。

 そんな奴が、何故にあのクソ虫の親に協力する?

 案外、クソ虫はクソ虫でも、親の方はそこまでのクズじゃないのか?

 ……いや、ないな。

 それだったら、アレク達が王家まで巻き込んで潰しにいく訳がない。

 潰さねばならないような奴なんだろう。

 そうなると、カゲトラの内心がますます謎だ。

 ……いや、奴がどう思っていても敵には違いないのだ。

 なら、これも考えるだけ無駄か。


「……とりあえず、ユーリやマグマとも相談して、なんとか策を考えてみます。

 ただ、そんな上手い手が、そう都合良く出てくるとも思えないので、あまり期待はしないでください」

「わかった。それまでは引き続き警戒しておく」

「お願いします。くれぐれも気をつけてくださいね」

「ああ」


 さて、話が一段落したところで、もうすっかり夜だ。

 明日からまた学校だし、そろそろ寝るとするか。


「じゃあ、私はそろそろ風呂入って寝る。風呂と客間を借りるぞ。

 あと、明日の朝、学校までの馬車を頼む」

「風呂と客間はいいですけど、馬車の手配は自分でしてください」

「ケチめ。まあ、いい。そこら辺の奴にでも頼むか」


 そうして私はアレクの執務室をあとにし、廊下を歩いていた使用人の一人に馬車の手配を頼んだ。

 その後、風呂から出たら、当たり前のように着替えがフリフリの可愛いパジャマに変わっていたりしたが、気にする必要はない。

 どうせ、メイド軍団の仕業だろう。

 子供の悪戯みたいなものだ。


 私は構わずフリフリのパジャマに着替え、明日からに備えて、客間のベッドにダイブしたのだった。

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