閑話3
とある平日の休日。
その日は、雨だったけど傘を持たずに家の近くにある公園で、一人ぼんやりと立っていた。
こんな事をしても、気分は晴れないし、心の痛みも消えてくれない。
それでも、雨が全て洗い流してくれると期待して、こんな事をしていた。
…父に、自分の結婚相手は自分で見付けると言って、20才になった時に実家を出てもう4年たっていた。
この間、父から珍しく電話がかかってきて、結婚相手が見付かって居ないなら、お見合いをしろと言われてしまった。
…お見合いしたとしても、その相手は男性だ。
今のボクは、結婚するなら男性よりも、女性の方がいいと思うようになっている。
八年間も、同性と付き合っていたら、いつの間にかそう考えるようになってしまっていたのだ。
(これから、どうしようか…。)そんな事を考えていたら、誰かがやって来てボクを自分の傘の中に入れて、話しかけられた。
その子は、ボクの母校に近い所にある共学の学校の生徒だった。
容姿は、美人という訳ではなく普通だった。
だけど、その子はボクが放っておいてくれと言った時。
何故か、鞄からタオルを取り出した後、意図が分かりやすい理屈をつけて、傘とタオルを押し付けるように渡し、ボクが何か言う前に走り去ってしまった。
あの子が、走り去って行った方向をしばらくの間、呆然としながら見ていた。
我に返り、あの子から受け取った傘とタオルを見て、おかしくて笑ってしまった。
あんな理由で、ボクに傘とタオルを渡すなんて、変わっている子だ。
普通、ボクを何とか家に帰らせようとしたりするものなのに…。
あの子は、そうしなかった。
自分が、濡れて帰る事を選んだのだ。
色々察して、そうしてくれたんだろう。
ちょっと変わっているけど、優しくていい子のようだ。
あの子のおかげで、少しは気が紛れた。