第3話
先生改め美紀さんは、私にプロポーズして強引に結婚する事を決めた。
その後すぐ、私の家に来て見事な話術で、家族を説得し、私と結婚する許可をもらった。
そして、現在私は美紀さんと結婚し、美紀さんの家で一緒に暮らし始めていた。
私が、妻役で夫役が美紀さんだ。
後、私が美紀さんに嫁ぐ形になり、名字が仙崎から朝倉に変わった。
お互いに、指輪も付けているし、本当に結婚してしまったんだなと、改めてそう思う。
キスやキス以上の事も、今の所はされていないし、初夜の時に美紀さんから、お飾りの妻だと言われた。
部屋も別だった。
美紀さんが、私に求めているのは妻として、一緒に暮らす事だけらしい。
…もう、結婚しちゃったのだから、仕方ないと思う事にしている。
手を出して来ないだけ、ましだと思えばそれなりに、この新しい生活は楽しいものだった。
友達は、私が結婚した事を知った時、かなり驚いていた。
そりゃあ、学生の内に結婚して、その上同性婚で…しかも、急に結婚したと言われたら、驚くのも無理はない。
友達は、私が同性ではなく異性が恋愛対象だという事を知っているから、同性婚した事を中々信じてもらえなかった。
私自身も、しばらく実感が湧かなくて、驚いていた事だったから仕方ないけど…。
そうそう、私が美紀さん家に引っ越して来たのは結婚した日だ。
結婚して、今日で3日目。
この家は、立派な二階建ての一軒家である。
家具も高そうな物ばかりだし、家も大きくて広い。
しかも、お小遣いは毎月約十万円もくれる。
使用人も、8人居て…美紀さんのお義父様は、大企業の社長をしているらしい。
美紀さんは、間違いなくお金持ちのお嬢様だったのだ。
尚、その事を知ったのは結婚した後の事である。
つまり、玉の輿していたというわけだ。
しかし、私はお小遣いをもらっても、無駄遣いせずに貯金している。
私の家は、ごく普通の一般家庭だ。
ようするに、庶民なので高い物などあまり買いたいとは思わない。
なるべく、安い物とか節約とかの方がいい。
美紀さんとは、金銭感覚なども違うのだ。
後、一応妻だから家事を頑張ろうと思っていたのに、それは使用人の仕事だからと、やんわり断られてしまった。
しかし、せめてお弁当作りとお菓子作りをする許可だけは、何とかもらった。
料理長に、色々教えてもらいながら作ったりしている。
ちなみに、お弁当は私と美紀さんの二人分である。
それぐらいは、したかったのだ。
結婚した時や恋人が出来た時に、その相手にお弁当を作ってあげる事が、私の夢の一つだったからね。
そのためにも、実家で暮らしていた時は、母から料理なども習っていたし…。
お菓子作りの方は趣味だ。
よく母達に、色々なお菓子を時々作っていて、美味しいと言われたり、食べて笑顔になる姿などを見ていたら、いつの間にか趣味になっていたのだ。
お菓子は元々、気分転換に作っていたような物だったんだけどね。
幸い、美紀さんは好き嫌いが特になく、甘い物も食べられる人だった。
それと、私の作った物も必ず、残さず完食してくれている。
さて、今日のお弁当のデザートは、昨日作って置いた人参入りクッキーだ。
「人参入りクッキー?」
「野菜入りクッキーを作りたい気分だったからね。今回は、人参入りクッキーにしてみたんだ。」
「…まぁ、君が不味い物を人に食べさせるような人じゃない事は、分かっているから、今回もきっと美味しいよね。」
美紀さんは、嬉しそうにお弁当&デザートが入った袋を受け取ってくれたのであった。