7話 『術作成』
地下(なのか?)3階に移動した八雲達は、移動した階層で呆気に取られて居た。
『森…か?』
周囲は洞窟のはずだった1階2階の違い、どうみても森だった。
『お日様も見えてるね〜?』
そう、何故なのか空まで見えている。
『んー…単なる洞窟のダンジョンだと思ったんだけど予想を覆して来るなぁ』
『不思議だね〜』
『…ま、良いか。テン腹減らないか?』
『お腹空いたよ〜』
『その辺に木が一杯あるし、焚き火で肉焼いて食うか』
木曽の町に来るまでにも魔獣からドロップした兎肉を焼いて食べて居た。
調味料はないので美味しいとは言えないが…
まぁ しょうがない。
『やった〜 肉だ〜』
2階でテンの雷矢の術、氷矢の術を見た八雲は
それをそのまま真似をする事が出来た。
どうやら頭の中の五芒星の5属性の場所に力を込めると
その強さによりイメージ通りに術を発動…いや作る事が出来るのだと気付いた。
今度は風の力をこうすると…
可能な限り小さく風の術を使う。
八雲の指先から吹いた小さな風は包丁の様にブロック状の兎肉を薄く切り刻む。
『お、出来た』
『八雲すご〜い』
『これで木の枝に刺して焼いたら早く食えそうだな』
願わくばフライパンや網があれば焼肉の様に焼けるのだが…そもそも そんな事を言う位なら塩でも欲しい所だ。
『町に戻ったら調味料をどこかで買えないか聞いてみるか…あれ?』
『どうしたの?』
焼けた肉をモグモグと食べながらテンが口を開く。
『どうやってココから戻るんだべな?』
『戻れないの〜?』
『次の階層へ移動する時は魔法陣っぽい星形の図形は一つしかなかったよな?』
こちら帰る用
こちら次の階層へ
とでも分かりやすく書いてあると助かるのだが…
『ま、いっか』
考えてもしょうがない、どこかに町に戻れる何かがあるんだろ…と楽観的な八雲は考える。
いや そもそも考えて居ないのだろう。
楽観的と言うより適当人間なのだ。
『お腹いっぱ〜い』
『よし、行くか』
現時点で130銭程度と大きさがバラバラの青い石を数十個、そして蛇の牙や薬草的な何かなど魔獣が落としたのは全て拾って居る。
使う物なのか売れる物なのか全く分からないからだ。
テンの魔獣の気配を察知する能力で、この階層も敵を根こそぎ倒していく。
木曽の町に来るまでにも出会った野兎や猪などが居た。
途中 何度か木の上から大きいリスに襲われ怪我もしたが、概ねテンが先に敵の気配を感じ取る事により
こちらからの奇襲攻撃で一方的に魔獣を狩って行く。
『八雲大丈夫〜?痛くない?』
『おぉ、大丈夫だぞ…って水の系統で回復術ってないのか?』
現時点で敵を攻撃する術しか思い付いて居なかった事に気付き、試しに水術で怪我を回復させる術を試してみる。
傷のある腕から光がフワっと漏れると
みるみると傷口が塞がって行く。
『出来た出来た』
『すご〜い』
体感で術力(JP)が0.1〜最大値までの範囲の力加減と
何をしたいかイメージする事で色々と術を作れる様だ。
はっきり言って便利だ。
レベルを上げてJPさえ上がれば、もっと強力な術を使えそうだ。
鍛冶屋でのステータスを見た限りは知力と言うのも
関わって居るのかも知れない。
(うん。これは楽しいぞ。)
現状 目標はない。
元の世界に戻れる方法を探すつもりだったが、適当人間である八雲は
ま、ここで過ごすのも悪くないか…と早くも思い始めて居た。