6話 『雷矢の術』
『レベル低いだけあってポンポンレベル上がるな』
『レベル〜? 段位の事〜?』
『そうだぞ〜』
初戦は力加減も分からず 見た目の大きさに惑わされ火球の術を同時に撃ったりしながらだったが
ある程度 敵の強さを理解してからは交互に火球の術を使い
それで生き残っていたら2発目を撃つという感じで洞窟を進んでいた。
しかし 自分達の術力(JP)を考えずに術頼りで進んだ割にはJPが切れる事はなかった。
おそらく段位が上がった事でJPが回復した事に依るものだろうと八雲は認識していた。
(このシステムは好きだ)と思うが同時にこの世界が異世界と言うよりはゲームの中に近いのかもと更に思ってしまう。
『八雲〜 ココも魔獣がいっぱい居るよ〜』
地下(?)2階も1階と似た様な雰囲気だった。
洞窟と言うのか坑道と言うのか…
通路の壁や天井にはポツリポツリとLEDの様に光る石が嵌め込まれている為
明るいとは言わないまでも歩くのも戦闘するのも
それほど苦にはならない。
『よし、ガンガン倒して金稼がないとな』
レベル上げもそうだが まずは武器を欲しい。
ポンポンレベルが上がる序盤は良いが、その後は術頼りでは次のレベルアップまでJPが持たない。
何かしらJPを回復させるアイテムが廉価で手に入れれるならそれでも良いが
その事について まだ確認していない。
『テン頑張るよ〜』
地下2階も術の火力頼りで殲滅しつつドンドンと進んで行った。
そしてまたも星形の図形の部屋へ到着した。
『テン 何か新しい術とか使える様になったか?』
『う〜ん…なにか氷の術と雷の術を使えそうな気がするよ?』
『おぉ、マジで?』
(って事は やっぱり俺も何か使える様になったのか?)
ゲームの中では◯◯がレベルアップしステータスがアップし新しい魔法を覚えた…なんて教えてくれるが
この世界では段位が上がったのも何となく分かる程度だ。
もちろん新しい術を覚えた!なんて分かるはずもない。
頭の中の五芒星の火以外の所を意識すれば何か他の術が撃てるのだろうか?と考えては居る。
次の階で試してみようか。
次の階層へと移動し、テンが見つけた魔獣の元へ忍び寄る。
『あれは初めて見る魔物だな』
『そうだね〜 ぷよんぷよんしてるね〜』
スライムと言う名前が一番近いかも知れないが…ゲームの様に可愛いとは思えない。
例えるなら陸クラゲだろうか。
『テン、雷の術を使ってみてくれ』
『うん、分かった〜…えーい!』
子狐のテンが口を広げると火球の術と同じく
口の10センチ程先から
小さな矢の様な雷が一直線に飛んで行きスライムに当たったかと思うと
まるで電気がショートしたかの様なドン!と音と共にスライムは消えて行った。
『お おう…てっきり雷球の術って感じかと思ったけど矢だったのな』
『うん!なんとなく真っ直ぐ飛びそうな気がしたの!凄い〜?』
『おー、凄いぞ。次は氷の術を見せてくれよ』
『うん!良いよ〜 じゃぁ次もテンが攻撃するね!』
出会った当初は 見た目が子狐とは言え
喋るは術は使うわで 警戒していたが
時間が経つにつれ八雲はテンが素直に可愛いと思い始めていた。
それがペットとしてなのか、はたまた弟としてなのか、そこまでは考えていない。
やはりどんな時代 どんな世界でも子供は可愛いという事なのだろうか。