5話 『洞窟』
洞窟に入ってみると思ったより狭いと言うか
一つの小部屋があるだけだった。
地面には星形の図形が描かれている。
『…これを踏めば良いのか?』
『う〜ん、そういえば母さまも そう言ってたような?』
『んなら踏んでみっか テン行くぞ』
『うん!』
不安は残るが軽く踏んでみると、八雲とテンの身体が星形の図形に吸い込まれ始める。
(うお 凄いなコレ…)
ゲームの中ではワープする事は特になんとも思わなかったが
現実にそれを体験するとこうなのかと
例えるなら大シケの時の船の上
遊園地のフリーフォール…
(慣れるまで気持ち悪いなコレ)としか思えない。
時間で言えば数秒の事だが初めてという事もあり
もう少し長く感じたが、気がつくと洞窟の内部に居た。
『…うん 洞窟だな』
『凄いね〜 魔獣も居るよ〜』
『気配的なのを感じるのか?』
『うん いっぱい居るよ〜』
それが動物的本能から来るのかスキルなどから来るのか分からないが
魔物の気配を感じられるってのは非常に便利だ。
そう言えば 来る途中の山道でも魔物を見つけたのは
ほとんどテンだったなと思い出した。
とりあえず その気配のする方へと歩き出してみる。
テン曰く『蛇っぽいの』が居る方向へだ。
道を曲がった先に1匹居ると言うので警戒しながら八雲は覗いてみる。
(デカっ…)
生で見た分テレビで見た化け物級の蛇よりも大きく感じる。
『テン、アレ行けるか?』
『八雲も居るし大丈夫だよ〜』
(野兎ならまだしも あの蛇に俺が戦力になるのか?)と言う考えが過るが
…当たって砕けろだ。
こんな序盤で挫ける訳はないだろうと楽観主義が顔を出す。
『えーい!』
『っしゃ!』
八雲とテンは同時に火球の術を発動させ大蛇に命中させた。
が、そのまま大蛇から光が漏れ消えて行き
大蛇の居た場所には5銭と青色の石が落ちていた。
『あっれ?見た目より弱いのか?』
『わーい 早く次倒そう〜』
『おぉ そうだな…この青い石は分からんけど拾っておこう』
その後 大蛇や大きい鼠などを次々と撃破していき
また星形の図形が床に描かれている場所に辿り着いた頃は1時間程経って居た。