3話 『木曽の町』
『うーんと…街、町…いや村だろコレ』
テンが言う町に辿り着いたが、ゲームの中の世界に居るのが分かった段階で嫌な予感はしていた。
この世界では町なのかも知れないが八雲には、どう贔屓目に見ても村にしか見えない。
『ココが木曽の町だよ〜』
テンがそう言うのだから 木曽の町なのだろう。
『うん…ところでテン、そこらに居る人達の格好とか建物とか見るとさ古く見えるんだよね』
『そうなの〜?』
『うん、これが夢じゃないとしたら ここは戦国時代とかなのかね?』
『う〜ん テン分かんな〜い』
(ま、そらそうだよな)
仮に戦国時代にしろ平安時代にしろ
その当時の人々が今は平安時代だなんて思って居るはずがない。
かと言って 木曽と言われると長野だよなとまでは思うが
長野で思い付く昔の人なんて武田信玄、真田幸村、武田キラーの長野業正程度だ。
戦国時代以外の木曽…いや長野の有名人物はピンと来ない。
『って ここ長野か』
『ん〜? 長野じゃなくて木曽の町だよ〜?』
『あぁ そうだな』
木曽の町の入口で考え事をしながらテンと話していると、兵士の様な男がこちらに気付き近付いてきた。
『お主ら変わった格好をして居るが、唐人か?』
『唐人? あぁ そんな感じかもね』
『そうか、この町は木曽の町だ。来た事はあるか?』
『いや俺は初めてだよ』
『そうか、木曽の町は中原兼遠殿が治めて居る町で宿は北の方に数件、鍛冶屋などの商店は西の方に、中心部には洞窟がある。入る場合は鍛冶屋へ行き装備を整えてから入るようにな』
(洞窟…装備…?)
ゲームで言うならダンジョンなのだろうか?
町の中にダンジョンと言うのはピンと来ないが…
と言うより中原兼遠と言うのは聞いた事がない。
『ありがとう。洞窟と言うのは自由に出入り出来ますかね?』
『うむ、自由だ。ただし初心者ならあまり奥深くに潜らず浅い階層で段位を十分に上げる事が基本だ』
なるほど、RPGならそうなるわな。
『あ、この国では自分の強さと言うのは どう見るか知ってます?』
『あぁ、それなら鍛冶屋に行くと良い。魔力や筋力の強さによって武器を装備出来る出来ないがあるから、ほとんどの鍛冶屋には簡易な水晶が置いてあるのだ』
なるほど…あまりしつこく質問攻めしても怪しまれる可能性もあるし、ここらで引き上げよう。
『ありがとう、では鍛冶屋に行ってみます』
『うむ、気を付けてな』
とりあえず鍛冶屋に向かってみる事にする。
途中、良い匂いのする屋台があったり
質屋の前に人集りが出来ていたのを見つけた。
『これが鍛冶屋かな?』
『そうなの〜?初めて入るね〜』
『そうだな、よし入るぞ。こんちわー』
暖簾をくぐり中へと入る。
それなりに広い店に刀や弓、木の盾や鎖帷子の様な物まで飾ってあった。
『いらっしゃい、何かお探しで?』
『はい、自分の強さを見たいのですが どうすれば良いですか?』
『あぁ それならこの水晶に片手を当てて下さい。段位と簡単な強さなどが分かります』
店のカウンターに置かれた透明な水晶は直径10cm位だろうか。
言われた通り その水晶に右手を当ててみる。
すると八雲の目の前、宙に文字が映し出された。
段位:2
職業:術師
体力:18/20
術力:6/6
力 :8
知力:6
速さ:7
従魔:テン(野狐)
(俺の職業は術師なのか…その割に魔力とやらが少ない気がするけど)
『ありがとう、ちなみに武器とかは幾ら位するものなの?』
この世界の金銭感覚が全くないので ここに来るまでに魔物から拾った34銭が多いのか少ないのか分からない。
『そうですね、刀なら今一番安いのはコレで25銭、一番高いのは5円の物がありますが…』
『なるほど…術師に合う武器って何ですか?』
『いや…術師と言う職業は初めて見たので…』
『初めて?』
鍛冶屋が言うには、魔術が得意なのは魔術士や巫女、僧侶、陰陽師などで
直接戦闘系は侍や忍、山賊、海賊、弓士などだそうだ。
他にも色々とあるが術師と言う職業は見た事がないとの事だ。
『そうですか』
『お前 珍しい職業だな、それに野狐まで従えてるのか』
声のする方へ視線を向けると20代半ばの男が立っていた。