20話『悪戯』
『六孫王ね…』
『知ってる通り…源、平、藤原などは元は皇族の方々で御座います。そこで波旬様は元皇家に目を付けたのです』
『うん…』
『私の身体には波旬様の魔力が入っております…』
『お前を操って源家の当主に近付けたって事か』
『はい…』
『なるほどね』
『それでも日が経つにつれ私は経基様を本当に愛しく思いました』
しかし、跡目争いを憂慮した正室に追い出される形で経若を連れ、ここ戸隠の地に流れて来た。
数年は村人達と平和に過ごして居たが、今度は子の血筋を根絶やしにしようと討伐の兵が戸隠へと向けられる。
『私は愛する経基様と離れて居ても、その結晶である経若の側に居られるならそれで良いと…幸せだと思うておりました』
『ん…なら波旬ってのを恨むって程では無いんでないのかい?』
『いえ…平維茂を此方に仕向けたのは波旬様でございます』
『ん?何でだろうね?自分でお前を源家に近付けさせて それを波旬ってのが自分で潰すのかい?』
『私も当時はそう思うておりました…ですが…』
平維茂からの攻勢に抵抗虚しく討たれた時、息子の経若も同じく討たれたと思って居た。
しかし、経若は大和国へと逃がされ名を変え生き延び
そして子孫が再びこの信濃の地に居ると言う。
『そして、波旬様の力に取り憑かれ傲慢になった平家を討てと以仁王の令旨が下りました』
『令旨…その偉い人が平家を倒せって誰かに命令したって事かい?』
『はい…私の可愛い経若の子孫…その子を波旬様から守りたいのです』
『なるほどね、それで力を小烏丸から取り戻したいと』
『はい…波旬様にはそれでも到底 敵いませぬ。それでも…』
『粗方 分かった。波旬ってのが人間界に揉め事を起こして何をしたいのかは分からんけど…この話しに関わっちゃったし俺がその子孫とやらの手助けをしてみるよ』
『わ…私も…』
『ははは、お前が本当に信用出来るか分からないから素直に小烏丸は渡せないよ』
『たしかに…私は波旬様の眷属です…』
『うん。だから今回は俺達に任せなよ出来る限りは助けるからさ』
『ありがとう御座います…』
『で、その子孫ってのは何て名前か分かる?』
『いえ、正確には…ですが 恐らくは中原家の方がそうではないかと思うております』
『中原家…あれ?木曽の町の領主だかって聞いた様な…』
『はい…木曽の領主です』
『OK…あ、テンすまん 新鮮な魚はまた今度になりそうだ』
『別にいいよ〜、僕は八雲と一緒に居れるなら何処に居ても楽しいし』
『お前は本当に可愛いなコノコノ〜』
『それでは 宜しくお願い致します』
『ん?お前は来ないのか?』
『私は術力が無く、墓のある此処の付近一帯しか移動出来ません…』
『そうなんか…幽霊ってのも大変なんだなぁ』
『悲しいですが…』
『術力…あれ?それって俺があげる事って出来るのか?』
『え…しかし 人の術力では微々たる量だと思います』
術力がどれ位あるのかは分からない。
分からないと言うかレベル上げは散々したが、上がった後に自分の事を鑑定していないからだ。
『えーと…現在の強さ!』
榊八雲
段位:32
職業:術師
体力:512/512
術力:1024/1024
力 :128
知力:256
速さ:128
従魔:テン(野狐)
覚えた術:属性術基礎、陰陽術基礎、?
スキル:術作成、鑑定Lv1、剣術Lv2
『おー…えーと、俺の術力は1024だってさ』
結構レベル上がったなぁと思ったのだが…
何か違和感がある気がしなくもない数値だ。
『私にはそれが強いのか弱いのか分かりませぬ…』
『あ そうか、んなら試しに術力を渡してみようか?』
『え…良いのですか?』
『加減は分からんから適当に渡すよ』
渡す方法は新しい術を作れば何とかなると考えている。
しかし 紅葉に言ったようにその加減が分からない。
試しに術力を100程 渡してみる事にした。
術力100でも、この世界に来た当初の術力を大幅に上回る量だ。
『こんな感じかなぁ…』
光と水と風の属性をパズルの様に組み立ててみる。
『ん…こうすれば効率的か…』
ゲームで良くある魔法をイメージし、さらにパズルを組み立て術を作り上げる。
『よし多分 出来た、紅葉 準備いいかい?』
『はい…』
八雲は紅葉の身体に触れ、出来たばかりの新術を発動させた。
イメージしたのはブースターの様に電気信号を増幅させる回路だ。
八雲の術力を100消費し増幅させ紅葉に150程渡す。
『どうだい?』
『あぁ…少しだけ力を取り戻せました。これなら移動も出来そうです』
薄っすらと紅葉の顔色が良くなった気がしなくもないが気のせいだろう。
『よし、なら一緒に中原家へと行ってみようか』
『はい…』
領主である中原兼遠と言う人物に会っても、それが紅葉の子孫なのか八雲には分かる訳がない。
それなら紅葉を連れて行けば なにかしら面影を感じ取ってくれるかも知れないと期待し
紅葉を連れて行く事にした。
なるべく予約掲載で溜めておきますが
仕事が忙しくなると、続きを書けるかは謎です。




