18話『女幽霊』
昔々 ある所に大変仲の良い夫婦が居た。
長く子に恵まれなかったが天に祈ると第六天魔王がそれを聞き届け その後すぐに娘を授かった。
その娘は非常に美しく、尚且つ術や芸術に非凡な才能があった。
やがて娘が成長すると周囲の権力者から次々に結婚を迫られたが、その全てを断り、京へと旅立った。
『おぉ 本当に村があった』
『本当だったね〜♪』
八雲達は国府から北に移動する途中、市原と言う町に入った。
が、その市原の町で不思議な話しを聞いた。
市原の町から北西に進んだ所に小さな村々がある。
その村々に最近 妖の類が群れをなして現れ
妖達を追い払おうにも、権力者は近々戦があるかも知れないから そんな事などに構ってられぬと門前払いされ村人達は困って居るそうだ。
しかし妖達は村に来ても村人を襲う訳でもなく、また悪さをする訳でもないと言う事だ。
八雲はその話しを聞き、とりあえず村に行ってみる事にした。
ただの噂で何もなければ良し、妖と言うのが魔物ならばレベル上げをすりゃいい。
ただそれだけの単純な目的だった。
『た…旅の方ですか?』
村に入った所で年老いた男に話しかけられた。
『あぁ 旅の途中だよ』
『もしやと思い聞きますが貴方は陰陽術は使えませぬか?』
『陰陽術は使った事ないなぁ』
『そうでございますか…』
『妖ってのを退治して欲しいって事でしょ?』
『!? それを知っておいでですか』
『出来るかは分からないけど そのつもりで来たんだよ』
『なんと!して陰陽術無しで どの様に退治なさるつもりか?』
この爺さんは 法眼が使っていた様な陰陽術の破邪系の何か以外に退治する方法はないと思ってるのだろう。
もちろん八雲は退治する方法があるかどうか知ってる訳がないのだが。
『まずその妖ってのを見てみたくてさ』
『なるほど 奴らは夜な夜な現れるので 今日一晩 村に泊まっていただければ会えると思いますじゃ』
『よっし、この村に宿はあるんかな?』
『小さいですがあります』
『ありがとう、泊まってみるよ』
小さな宿に入り、夜 布団で寝て居ると早速 嫌な空気が漂い始めた。
『…これか?』
『なんかね…魔物と人間の中間みたいな人たちが外に居るよ〜?』
『中間?外に行ってみるか』
宿から外に出てみると、テンが言う様に中間と言うよりは
八雲の目には女幽霊ってのが近いんじゃないかと思った。
『あー…なんだろ 魔物とかに見慣れたと言うか幽霊見ても怖いと思えんなぁ』
『うん、八雲の方が強いよ〜?』
幽霊に攻撃が当たるかは知らないが今は現代と違って術がある。
やってみる価値はあるが…どうも相手から戦う気が感じられない。
『…なんか探してるのかい?』
『…。』
『喋れないのか?』
『話せます…』
『そ、そうか、で何か探し物?』
『息子と刀を探しております…』
『うーん…何か手伝える事はあるか?』
『息子の名は経若、刀の名は小烏丸…』
『うん、状況を話せるかい?』
女幽霊が言うには
平家の者に自分は殺された、そしてその時に息子は連れ去られたらしい。
刀は平家の者が持っていた物で何とか奪いたいとの事だそうだ。
『で、経若はまだ生きてそうか?』
『…。』
『分からんか、じゃぁその平家の者ってのの名は分かるか?』
『平維茂…』
『分かった、明日から探してみるよ。で、お前には何処に行けば会える?』
『戸隠山に…』
『戸隠山な、了解…今日はもう山に帰っとけ』
『では…お願いします…』
さすが幽霊と言うべきか、女はそう言うと
すぅっと消えた。
『さて、宿に帰るか』
『八雲〜、あの人の言う物を探してあげるの〜?』
『あぁまぁな…嫌な予感はするけど』
十中八九、女の言う息子は既に亡くなってると思う。
後は女が満足して成仏出来る落とし所を見つけれるかどうかだ。




