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夢幻の放浪記  作者: やっさん
第1章 『異世界』
15/22

15話『陰陽術』

八雲達が信濃国府である上田の町に付いたのは木曽の町を出てから3日目の夕方だった。



『お主ら旅の者か』


『えぇ、旅をしてますね』


『そうか、ここは国府である。用が無ければ政庁の方へは近付かない様にな』


『政庁?分かりました』


(国府と言うのは県庁の様な物か?)


『宿はこの道を東へ向かえば数軒ある。今日は泊まって明日にでも町を散策するが良い』


『ありがとう、そうします』


木曽の町もそうだが 町の門番は思ったより旅人に優しい気がした。

警備はそんなんで良いのかと言いたくなるが、警戒対象が人間と言うよりは魔物なのかも知れない。




『テン、たっぷり金は稼いだし今日は あそこの宿に泊まろうか』


『八雲と一緒ならどこでも良いよ〜』


『全くお前はホントに可愛い奴だのぅ コノコノ〜』



『失礼、旅の方と見受けるが鵺をご存知ではないか?』


テンを可愛がっていると唐突に男に話し掛けられた。

その男は50代位だろうか見た目だけではなく その気配からも年季を感じる。


『鵺? あぁ ココに来るまでに倒したから知ってるよ』


『なんと!?お主なかなかの手練れよのぅ、では獣石を拾われたか?』


『…獣石?それは分からんけどコレの事?』


鵺にトドメを刺し光に包まれた後、銭と青白く光る5cm程の鉱石の様な物が落ちていた。

何かのアイテムかと思い一応拾っては居たが。



『うむ、見事な獣石だ。すまぬがそれを譲ってはくれぬか?』


『ん?コレって何に使うの?』


『色々だ。ワシの場合は札を作るのに使うがな、知り合いが獣から呪いを受けてのぅ その破邪の為に使うのだ』


『(札?破邪?キョンシーか?)良く分からんけど困ってる人の為に使うなら おっちゃんにやるよ、俺は使い道分からんしね』


『おっちゃんって何だ!道士様だぞ!』


…気になっては居た。

威厳ありそうなこの男の肩に何故か留まって居る梟が目に入らない訳がない。


『おぉ…喋るのか』


『従魔だから喋るに決まってるだろ!』


『そうか そりゃ悪かった』


『カズオ、やめなさい』


『…分かりました道士様』


道士と呼ばれる男の一言で梟は大きな瞳を閉じ押し黙る。



『すまなかった、しかし獣石を譲って貰って本当に良いのかね?』


『あぁ 良いよ、何度も言うけど俺には使い道分からんし それを悪用しないなら是非使ってくれ』


『ふむ…左様か お礼と言っては何だがワシの術を見ないか?』


『ん?良いのかい?丁度 他の人の術を見てみたかったんだ』


『うむ せめてものお礼だ、それ以外に今は返せる物が無いのでな』








『すまない 入るぞ』


上田の町外れ、家と言うよりは小屋と言う感じの建物が道士の知り合いの家の様だ。

中へ入ると一人の男が床に伏せり、その世話をするべく若い娘がじっと座って居た。


『法眼様!』


『思ったより早く獣石が見付かった、これより破邪の札を作る』


『あ ありがとう御座います!』


法眼と呼ばれた道士は簡素な机に獣石と何も書かれて居ない紙を置き、墨で何やら読めない文字を紙に書いて行く。


『六根清浄急急如律令…』

法眼は右手で紙を掲げ、左手で印を結びブツブツと呪文を唱え始める。

すると青白く光る獣石の光が強くなり、やがてサラサラとその身を削りながら紙に吸収されて行く。


(おぉ…凄いな…)


やがて獣石が無くなり、法眼は一言『うむ』と頷くと

床に伏せって居る男の枕元に屈み、胸元に札を置いた。


(額に貼らないのか…)



そして法眼は両手で数種類の印を結び『破邪顕正!』と男を指差し叫ぶと

男から紫色の煙が勢いよく吹き出して行った。



『これでもう大丈夫だ』


『法眼様、ありがとう御座いました』


『いや実はな獣石は こちらの…』


『ん?俺?俺は八雲だ』


『うむ、八雲殿がたまたま鵺を退治していてな、事情を話したら快く獣石を譲ってくれたのだ』


『八雲様、父の為にありがとう御座いました』


『いやいや、俺には使い道分からないしね 役に立てたなら良かったよ』


『法眼様にも八雲様にも御礼をしたいのですが…ウチには何も…』


『大丈夫だ、それは分かっておる。ワシはたまたま此処に寄っただけだ。気にするでない』


父が倒れ伏せ、若い娘が一人看病し続けたのだろう。

恐らく食うにも困ってたかも知れない。


『お姉ちゃん 料理は出来るか?』


『はい多少なら』


『よし、なら肉とか多少の山菜はあるから料理してくれよ』


『え?それは構いませんが…』


『俺へのお礼ってのはそれで良いよ、余った食い物は貰ってくれ、俺らは幾らでも魔物から取れるからな』


『そそそそれは…そこまでして頂いたら…』


『フフ…由良や 有り難く頂いておきなさい』


『わ 分かりました では精一杯料理をさせて頂きます』


『そんなに食えないから控え目にね』



八雲達は移動している間、視界に入った魔物を訓練と称して根こそぎ討伐していたのだが

ちょいちょい肉などをドロップアイテムとして拾っていた。

が、余りにも数が多く持ちきれない為に捨てていた位だった。

最低限として持ち歩いていた分を全て渡した。


存在する様であれば、四次元ポケットの様なゲームライクな物を作ってみようと考えていた。

出来るかどうかは まず やってみないと分からない。





『八雲様、申し遅れましたが此方は父の小助で私は娘の由良と申します』


『此度は法眼様と八雲殿のご両名に助けて頂き誠に感謝します』


『うむ。たまたま通り掛かったとは言え手助け出来て良かった』


『小助さん、無茶はしないようにね』


由良が夕飯を作って居る間に床に伏せっていた小助が目を覚まし

なんとなくだが呪いを受けたという時の話しを聞いた。

やはりと言うか鵺に関係した事だったらしい。



『えぇ、だが拙者も期間が短かったとは言え法眼様に教えを受けた身、人が困ってるなら少しばかりでも役に立てるかと思ったのだ』


少し痩せては居るが小助は八雲より少し年上の30代前半だろうか。

由良は10代半ばに見える。


『法眼さんの弟子…って事は陰陽師的な?』


『ははは、ワシは陰陽師もやっておるが小助には剣を教えたのだ』


『おぉ 術も剣も使えるんだ、俺にも剣を教えてよ』


冗談のつもりで言ってみたが意外と


『ふむ…鵺を倒したなら それ相応に戦えると言う事だな?』


『いやぁ それは分からん どの強さがあれば それ相応なのか分からないからさ』


『うむ。なら明日から数日は剣を見て進ぜよう』


こんな調子で快諾してくれた。



『さぁ、口に合うか分かりませぬが食べて下さい』


『あぁ そうだね 頂きます』




その日 八雲とテンは小助の家に泊めさせて貰った。

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