10話 『唐柏』
『210銭とブロック状の肉が数個と青い石がワンサカ…結構拾ったな』
八雲とテンは旅館の一室に居た。
『宿に泊まるのが二人で30銭(ペットも15銭らしい)だったからダンジョンに潜っても儲かるって程でもないんだな』
『そうなんだ〜明日はどうするの〜?』
『うーん…とりあえずこの世界をもう少し見てみたいから違う町に行きたいなぁ』
特に元の世界に帰りたいとは思ってないが、一応あるなら帰れる方法を見つけておきたい。
と言うより 何故この世界に来たのか、俺に何をさせたいのか、何かその理由を探したいとも思う。
特定の誰かが自分を召喚した訳ではないのかも知れないが。
『テンはどこでも付いて行くよ〜』
『おうよ〜 可愛い奴め』
魔獣からドロップしたブロック状の肉は冷蔵庫的な保存する物もないし旅館にタダであげた。
ただその分サービスしてくれた様なのでラッキーだった。
あとは使い道の分からない青い石の事を明日にでも誰かに聞いてみよう。
『さて寝るか』
『うん!』
テンは当たり前の様に八雲の布団の中で丸まって寝ていた。
翌日 旅館を出て洞窟の前に居た兵士から話しを聞くと
青い石は燃料屋で買い取ってくれるらしい。
青い石は魔石と言い、暖房の燃料や照明の代わりなど色々と使い道がある様だ。
確かに泊まった部屋の天井に魔石が埋め込まれ光って居た。
ひとまず大きめの一つだけを残し、他の魔石は全て売り払い鍛冶屋へ向かった。
『こんちわ』
『あら、こないだの術師さん。洞窟はどうでしたか?』
『はい 5階まで行って帰って来ましたよ』
『あら そうですか』
『帰り方が分からなくて悩みました』
『え?一人と狐ちゃんで行ったんですか?』
鍛冶屋のオバちゃんは きょとんとした顔をしている。
『えぇ、テンと二人です』
『あら、初めてなら傭兵の方に付いてきて貰うのが一般的なんですよ?』
そんな事は今初めて聞いたよ と思ったが、今更言っても仕方ないだろうと思い直し、苦笑する。
『二人でも何とかなったんで良しとします』
『あらあら、術師さんは お強いんですねぇ』
『いえいえ…ところでこの刀は知ってますか?』
『どれどれ…これはなかなか良いものですね、唐柏と言う名の刀です』
『唐柏…』
『えぇ、店で買うとすれば2円程でしょうか』
見てもらった刀 唐柏を腰に差し、少し強くなった気がした八雲達は
他の店で適当に味噌や塩などの調味料を調達し木曽の町を出る事にした。




