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そのスケルトン、ゆめかわいい

作者: たる

頭空っぽにして読んで下さい


 カタカタカタカタ


 カタカタカタカタ…。



「よし!これだけ召喚すればどうにか!! 」



 声が聞こえて目が覚める。


 ―――はっ!? 私は一体? ここはどこ?


 周りを見渡して見れば木や草ばかり……と思いきや、なんかすんごい大っきい熊と沢山の骸骨が戦っている。

 大っきい熊が両腕を広げ身体を左右に振りながら暴れて骸骨達を粉砕している。だけど骸骨達もそれに屈する事なく熊に向かって攻撃をしている。


 意味が分からん。

 これは夢?



「おい! そこのスケルトン! 何ぼけっと突っ立っている! ほら! さっさと行け! 」



 急にポカッと棒のようなもので頭を殴られてビックリ。

 なんだなんだと殴られた頭をさすりながら顔を上げると、濃い紫の髪色の薄い紫の瞳をした、栄養が全く足りてない感じの、おっさんが居た。


 てゆうか何? 私に話しかけてる?? スケルトン? えっ、もしかして私の事? 何それー、私は若さはじけるJKなんですけどー。カタカタ。


 ……あれ? 笑ったつもりが何故かカタカタと言う音になる。それがなんだか私の方から聞こえる気がする。

 まさかまさか、このさっきから目の前の視界にチラチラと見える薄汚くも白い物体はもしかしなくても私の手だったり? おいおい、どこからどう見ても骨なんですけどーー!?



「おわっ! 何故か凄くカタカタしているな。しっかり術は掛かっているはずだが、ふむ」



 コンコン、とまた頭を叩かれたが気が動転している私はそれどころでは無い。

 おっ、でもコンコン叩く刺激でちょっと記憶も思い出してきたかも。



 えーと、えーと、確か私は車に轢かれて死んで、その後神様っぽい何かの声が聞こえてきて…『能力何がいい? 』とか聞かれたような気がしたからそれに答えたはず。

 その結果暇つぶしに良さそうだからとか言われて転生させられた…て感じだったような。

 そしたら場所が森の中とか言うクソであわわとしている間に背中に凄い衝撃を感じて後ろを向いたらでかい蜂っぽい虫が見えたような…だけどその後意識はすぐに真っ暗に。



 えっ、あれっ? もしかして私、死んだ?

 訳わからんまま死んだ?

 死んで骨になった?

 薄汚れた骨に?


 いやいやいやいや……いやいやいやいや……


 マジか、何で? マジか!

 ありえない、これはダメだ。乙女にあるまじき骨姿…

 いやだーーー! 私は生前カワイイが大好きな普通の女子高生だったんですけど! てか転生してすぐ死ぬとか、ヘボいな私。


「ちっ、此方へ来るな。やはりスケルトン程度ではベアサイドには勝てないか」


  しょうがない、と言う紫おっさんの声に我に返り、目線の先を見てみると、どうやら骨達は熊に倒されたらしく次の標的である私と紫おっさんの場所へと物凄い勢いで迫ってきていた。


 おおおお!? ヤバイ!

 ヤバイヤバイ!

 来てる来てる! ヤバイ!

 どうヤバイってヤバ過ぎてヤバイしか言えなくなってるくらいヤバイ!


 やばいよー! 考えろ! 思い出せ自分!

 確か神様に何か能力貰ったじゃん!!それだよ!

 何だっけ、何だっけ……




 ―――――――――


『ねぇ、キミはどんな能力が欲しい?』



 これは何だろう? 私は確か車に轢かれて…『キミはどんな能力が欲しい?』



 能力? 私、私は――――…






 ゆめかわな能力が欲しい




『……ん? ゆめ? 本当に? まぁ、いいけど』





 ――――――――



 えっ?

 能力ゆめかわになったの?

 ゆめかわって『夢みたいに可愛い』でゆめかわのあの、ユメカワ?

 主に色合いがパステルな感じでユニコーンとかの幻想生物がきらきらのフワフワでメルヘンな感じの女の子の可愛いがこれでもかと詰まった、あの…?


 思い出した内容に唖然としている間にも、熊は容赦なく此方に向かって来ている。紫おっさんは「よし、お前は囮となれ」とか言って私の肩の骨をポンと叩いてさっさとどっか行ってしまった。


 私また死ぬ?何も出来ずに。

 でも熊めちゃくちゃ怖いんだけど。さっきから身体が震えてカタカタカタカタカタカタと自分の中でも音が響いてる。骨だから。


 武器は近くにあった木の棒を拾って持っているだけで……と、ふとその木の棒を握っている手に視線が行く。もちろん骨だ。カタカタ。



 そう、骨骨骨骨。



 グルガァアッとついに熊が私目掛けて飛び掛かって来た。口から涎を撒き散らしながら前足の爪で攻撃をしてこようとして来ている。めちゃ怖い。


 きっと今だって骨の姿じゃ無ければ顔も下も確実に大変な事になっている。


 誰か助けて、お願い助けて。

 そう願うも生前の、肉が付いた女の子なら奇跡的にヒロインよろしく誰かが助けに来てくれる事もあったり無かったりするのかもしれない。


 だけどここに居るのはただの薄汚い骨の化け物だ。


 熊の爪が目前に迫る。



 せめてこの骨が可愛いければ!!


 ……可愛いければ何だと言うのか、そう言う問題じゃないのは分かっていたけど、私はこの時パニクっていたのだ。


 パニクっている私は真剣に、そして強く思った。


 こんな薄汚れた骨で可愛くないままにまた死ぬなんてありえないし、認めない。

 私は可愛いの中でもゆめかわが特に大好きな普通の女子高生なのだと。



 私は、生きるっ!! 可愛いは正義 !!


  私の死に場所はこんなクソみたいな森じゃない!!


  私の死に場所は! ゆめかわな物に囲まれた、夢みたいに可愛い場所なんだよ!!


  ゆめかわは、大 正 義 っっ !!


 とカタカタ叫びながら屁っ放り腰で熊に立ち向かったその時―――




 ―――《ゆめかわ能力解放》


 へっ?!


 《スキル、ゆめかわを好きな私もマジゆめかわで可愛いくない?発動》



 頭に響いたその言葉と同時に私の身体も光出す。その光はまさに魔法少女や愛の戦士、プリ◯ュアの変身シーンの如くエフェクトが飛び交っている。


 ひぎゃ〜なになに?!と私が内心焦っているうちに光は収まっていき、やがて『ポンっ! 』と星やらアメやらが飛び散る煙りと共に私は現れた。


 何がどうなったか確認したかったがそんな暇はなく、


 《スキル、大丈夫! どんな子だって、ゆめかわいくなれるんだよ! 発動》


 またなんかよくわかんない台詞が聞こえたぁ。あっ、でもさっきの光で熊目が眩み隙が出来てる?!


 ただの木の棒だったはずの物、今はちょっとした魔法のステッキの様に姿を変えている物が横目に入り、少しビックリしながらも無我夢中で熊に振り下ろした。


 その次の瞬間、




 熊は、ゆめかわいくなっていた。




 はっ?


 なにこれなにこれナニコレ!?

可愛い〜!やばーい!


 毛はもちろんフワフワのモコモコ。

 目は釣り上がり、口からは涎が滴り落ちていた凶暴な顔が今や目はつぶらになり瞳には星が煌めき口は笑っていてそこからペロッと舌が出てる。いわゆるてへぺろ状態だ。

 何よりも毛の彩色がもう全く違う。さっきまでは濃い茶色だった毛なのにそれが今は淡いピンク色になっている。


 もはやさっきの凶悪な熊は何処かへ行き、今ここに居るのはただのものっそでかいパステルピンクなテディベアだ。


 それに実はさっきから攻撃もされているけどなんかもう、一発一発が幸せです。はい。

 とにかく攻撃が雲の様に軽く、ぽふっと一撃貰うたびに飛び散る星と綿菓子のようなエフェクト。そして顔や身体にダイレクトに感じる肉球の柔らかさ。

 爪?精々低反発くらいの硬さです。


 そうしているうちにだんだんと熊の攻撃が緩くなってきて最後の方はプスゥーと、鼻息を出し、満足そうにモフモフの腕で自分の額を拭い、私をハグして「あかん、ここ天国」ホワホワした何かを飛ばしながらスキップで森の奥へと行ってしまった。




 ―――この時私、私自身の姿も最初のスキルであの薄汚い骨からデフォルトのちょっと丸っとした骨になってはいたが、当然、ゆめかわには程遠く、少しでも自身がゆめかわいくなるようにと、この後スキルを増やし育て、ゆめかわを撒き散らしながら、その過程でこの異世界の大勢の女性と時々男性にゆめかわ旋風を巻き起こすとはつゆ知らず。



 今はただただパステルピンクなテディベアとのハグの余韻を、しまりのない顔をしながら浸っているのだった。


 デヘヘ。





ゆめかわ好きな人なんかほんとスイマセン。


そんでもって後書きと言う名の脳内設定

読まなくてもいいよ!

最後に有希ちゃんの挿絵あり。





〈中村 有希 17歳♀〉

作中で名前が出てこない主人公。

ごく普通の量産型女子高校生。

交通事故で異世界に転生…したと思ったら蜂型のモンスターに速攻でぶっ刺されて呆気なく死亡。そのまま肉は森の色々な方々に突つかれながら月日が経ち骨になる。

そしたらなんだか怪しいネクロマンサー なおっさんがスケルトンを召喚。近くに居た主人公の骨も神から能力を貰ったなんやかんやな関係により奇跡的に魂とも繋がり復活。


事故にあいスケルトンになったり両親などと会えなくなった事に悲しむが、このある意味地球との繋がりがあるゆめかわ能力により、すがるものができ少しづつ精神が安定。

後にゆめかわな家を建て、ゆめかわな物達に囲まれ、日々デヘヘと過ごす。そこに足を踏み入れた者はげっそりするか、夢心地になるか、いずれにせよ価値観が少し変化する。


―作中ゆめかわ能力一覧―

《ゆめかわを好きな私もマジゆめかわで可愛くない?》… ゆめかわを愛し続ける事により、永久的に自分自身もゆめかわな見た目になる。


《大丈夫! どんな子だって、ゆめかわいくなれるんだよ! 》… 老若男女、種族、無機物、有機物問わず、とにかく色々な物がゆめかわな感じに変身する。生物に限り対象の合意が無い限り10分ほどで効果が切れて元の姿になる。


ちなみに変身中は心が浄化されたような感じになりとても気持ちがいい。効果が切れても割と心が穏やかになれる。



〈怪しいネクロマンサー のおっさん〉

ソロの中堅冒険者なネクロマンサー 。主人公が見たとおり栄養が足りてない、ただ不健康なだけ。

普通に依頼をこなしていたが不運な事に熊型モンスターに遭遇。

主人公を囮にして逃亡したが、主人公スケルトンだし、ネクロマンサー 的にも一般的にも何ら不思議な事はなく、なにはともあれこのおっさんのお陰で主人公も復活したことから、有希本人もいつか気が向いたら健康に良さそうな食事を奢るか作るかしてやってもいいかなぐらいには思っている。


〈神〉

ちょっと気まぐれで死んだ魂を拾い、欲しい能力を聞いたら「ゆめかわな能力」とか意味わからん事言われたが面白そうだからと一からゆめかわを学習し、よーしゆめかわチートだー、とか言ってスキルとして主人公に付与。

でも有希は速攻で死亡。その時神は他の神に大爆笑されたとか何とか。

しかし暫くしたらスケルトンとして復活。「マジか」神もびっくりしたようだ。





みてみんのhakeさまより有希ちゃんを描いて頂きました!(⌒▽⌒)

挿絵(By みてみん)

きゃるるんかわいい。ありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] この後の平和的に世界を席巻する様子も見たくなる、斬新な作品でした。 異世界に転生したはいいものの、初っ端から死亡し、スケルトンになるという超展開も神に与えられたチート能力がゆめかわなのも凄…
[良い点] わろた
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