後処理と事情聴取
主人公はゲーム内で特殊な訓練を受けています、たぶん。
良い子も悪い子も真似しないようにお願いします。
どんどんキャラが暴走してくんだけどどうしよう。
無力化した奴らの装備も剥ぎ取り、銃創部をきつく縛って歩道に転がし直す。
まだ全部生きてるし、たぶん太い血管は切れてない。
肩、太股の血管を切ったら10秒くらいでおちる、持ったとしでも1分程度が限界のはず。
だから大丈夫、だいじょうぶ。
もう完全に日が登り人垣がどんどん厚くなる。
早く帰って来ないかな、待ってるのに飽きた。
そんな想いが通じたのかレーダーにグリーンマーカーとブルーマーカーが4つ映り人垣を掻き分けてよってくる。
ピ:「あれからまた増えたのか、大丈夫か?酷い顔してるぞ。」
ニャ:「説明と謝罪で精神的に疲れた。フラグ回収早すぎるよ。」
ピ:「俺は悪くねぇ!?」
ミ:「どうすれば、このレベル差を埋められるんですか。それに先程一人で無茶しないでって言った口はどこですか?」
呆れた顔で転がした6人を見ている。
ニャ:「貴女の横のやつ、正面からの不意討ちみたいなもんだからね。この程度の錬度なら問題ないよ。」
ピ:「実際どのくらいだった?」
ニャ:「中学の剣道部一年生未満、キルレ0.5以下の猪ナイファー。」
正面から不意打ちって何と頭を抱えたミリアリアさんは処置無し。
FGWのレベルからすると初心者でも銃器を使いさえすればどうとでもなるレベルの初心者練習勢程度である。
ミ:「話はギルドで聞かせてもらいます。衛兵さんこの人たちをお願いします。何かあればギルドまで連絡を下さい。」
衛兵A:「分かりました。あとこの場を保持していた…」
ニャ:「冒険者ギルド所属Fランクのニャンキチです。よろしくお願いします。」
衛兵A:「18警備班隊長のセトです。ギルド周辺のブロックを担当しています、よろしくお願いします。状況説明をお願いできますか?」
ニャ:「はい、ミリアリアを追って来た3人を制圧後ミリアリア、ピヨ太二名をギルドに支援要請に派遣、待機中にギルドの救援を名乗る三名に襲われ撃退しました。目撃者は沢山居ますので裏とりお願いします。あとミリアリアへ護衛か周辺の夜間のパトロールを提案します。」
後はギルドカードの提示を求められただけで解放された。
カードを見た時には驚いていたけどなんなんだろうね。
ニャ:「案外さっくり終わったね。」
ミ:「終わってませんよ。」
ニャ:「個人のレベルと戦闘方法とスキルは命に関わるので詮索はタブーじゃありませんか?
」
ミ:「ギルドの運営は能力を把握していないと適切な采配ができませんので例外です。」
逃げ出した、しかし回り込まれてしまった。
しかも逃がさないとばかりに腕まで組まされてしまった。
反対側にはピヨ太が同じように捕獲され首を横に降っている。
ニャ:「ミリアリアさん色々当たってましてね。女性としてもう少し慎みをもって頂けませんか?」
ミ:「当ててるんです、逃げられないでしょう?」
頬を紅潮させてそう問われたら大人しくついていくしかない。
ニャ:「僕達が嫉まれたり妬まれるは構いませんが若い女性に噂が立つのは外聞の良いものではないですよ。」
ミ:「そうしたらどちらかが貰ってくれれば解決です。」
くそう足掻けば足掻いただけ泥沼に嵌まってる気がする。
ニャ:「その要望には応えかねます。ピヨ太にお願いしてください。」
ピ:「ソコで振ってくるなよ、組織のために身を売るヒトは対象として見れません。」
ミ:「私、身持ちは堅いですよ。」
ニャ:「女性のその台詞は信用できません。」
ピ:「それ以前の問題です。」
ミ:「何でですか!」
ニャ:「経験則です、申し訳ない。」
組んでいた腕をそっと解き目前まで迫っていたギルドへ先行し扉を開けて二人を待って閉じる。
聴取については一人づつ個室でするとのこと、先にピヨ太が呼ばれ、俺は待っていてくれとのこと。
待つにしても人の増え始めたギルド内では邪魔になりそうなので併設の酒場に移動しホットミルクを頼む。
「よう新人今朝からもう一仕事したようじゃないか。」
昨日酒瓶をぶん投げて来た野郎がドカッと目の前の席に腰を下ろした。
ニャ:「成り行きでな、巻き込まれた。ニャンキチだ、よろしく。おっさんは?」
ガ:「ガルドだ。また変な名前だな。」
ニャ:「遠くの出身でな、覚えやすい呼称にした。」
ガ:「覚えやすいも何も忘れられないな!」
豪快に笑うヒトだ、ゴツく身長も180を越えるゴリラみたいに厳つい人だが真っ直ぐな人だろう。
ガ:「ミリアリア嬢を振ったって?」
ニャ:「耳が早いですね。そうですよ。」
ガ:「何でまた、男色か?」
ニャ:「ちゃんと女の娘が好きですよ。理由は彼女を知らないからです。」
ガ:「また変な野郎だ、あの顔あの身体男なら垂涎モノだろ?」
ミリアリアさんはハ○ラルのお姫様といっても良い以上に美人で胸も大きく引き締まるところは引き締まっていてナイスボディの持ち主でもある。
ニャ:「受け止めるだけの器がないんですよ?タブンネ。」
ガ:「ホント変な野郎だ。酒は飲まねーのか?」
ニャ:「聴取が終わったらクエストがどんなのか受けて見るつもりですからね。そんな貴方はこんな時間から呑んでいて良いのですか?」
ガ:「一仕事終えたら装備のメンテナンスが終わるまで暇だからな。」
納得の理由である。
回りを見ると同じように呑み始めているところが幾つかある。
「ニャンキチさん奥の部屋へお願いします。」
もう俺の番のようだ。
ニャ:「呼ばれたから行ってくるよ、また。」
ガ:「行ってこい。」
個室にはいるとエルネスタさんが待っていた。
ニャ:「エルネスタさん、よろしくお願いします。ミリアリアさんが聴取をするものだと思っていました。」
エ:「ええ彼女も当事者ですし。今の精神状態では聴取には向かないですね。なにかご存じですか?」
ニャ:「先程私とピヨ太が振ったんですよ。それですかね?」
また変な生き物を見るような目で見ないで下さい。
エ:「趣味嗜好は人それぞれです。本題に行きましょう。」
ニャ:「趣味嗜好以前になにも知りませんからね。雑に対応しすぎました。フォローお願いします。さぁ何でもどうぞ。」
後は同じ説明をして能力をに関してもお城でした説明を繰り返しただけで終わった。
エ:「聞いただけじゃレベル差をひっくり返した理由が分からないから、ミリアリアと模擬戦闘をしてもらいます。」
終わらなかった、断るのもダメそうである。
ニャ:「何でまたミリアリアさん何ですか?」
エ:「ギルドからの護衛をあの娘断るのよ。Lv1二人でどうにかなるなら私でも十分ですって。」
ニャ:「数は力、人が何で群れるか知らないんですかね?」
エ:「ピヨ太さんとは違うことを言うのね。」
ニャ:「俺はあいつより弱いですし、もう年ですから。」
FPSの特性上ピークとされる年齢は25才、アイツは25才、俺はもう32才になる。
27を過ぎてから認識できるレベルで鈍ってきている。
経験で強引に出来た差を埋めているだけだ、未知の土地それだけでも相当危うい。
ミリアリアさんとかぁ、どうしたもんか。
取り敢えずFGWを起動ハンドガンを初期よりさらに威力の低いポンコツ銃22口径ハンドマシンガンに変更。(正式名なんて覚えてるわけがない)
装弾数は驚異の30発、精度もレートも問題なし。
弾薬も変更タグステン芯からパラフィルム模擬弾へ、これで目とか喉とか弱いところに当たらなければ痛いで済むはず。
ニャ:「まぁアイツは手はあるって言いながら、力業で真っ向から潰すだろうから、奇策は俺がやりましょうかね?網かシーツ用の布はありますか?」
エ:「ええ、両方準備するわ。お願いね。それじゃ、訓練場へ行きましょう。」
個室を出て途中リネン室で古くなったシーツを借りギルド裏手の広場に出る。
エ:「ちょうど決着もついたようね。」
広場は砂地で広さは20m四方位その回りに腰丈の壁もある。
その壁沿いで軽鎧を着たミリアリアさんが砂まみれで転がっている。
反対側の壁にピヨ太が腰掛け足をぷらぷらさせて手持ち無沙汰にしていた。
ニャ:「どんな倒し方した?」
ピ:「剣をズドン、諦めなかったから仕切り直して地獄突きからのコンボ。まだやれるって言うから巴投げ。今ここ。」
エ:「私も見たかったわね。ニャンキチさん最初はスキルを見せてくれますか?」
ニャ:「先程使ったモノより遥かに威力を落としたモノで良ければ良いですよ。あとどこまでやって良いですかね?」
エ:「ポーションは此方で持つから骨折程度までなら問題ないわ。」
ニャ:「了解です。」
エ:「ミリアリア起きなさい。」
エルネスタさんは白のシャツに白いフレアのロングスカートその上に新緑色の瀟洒なベストを着ている。
裾が汚れるのも気にせずミリアリアさんの横にしゃがみこみ頬をぺしぺしと叩く。
ミ:「ん、む、ふぇエルネスタさん何するんですか!?」
バネ仕掛けの人形のように飛び起きた。
エ:「ほら次はニャンキチさんよ。」
ニャ:「お手柔らかにお願いします。」
ミ:「はい、よろしくお願いいたします。」
広場の中央に向う左後ろをミリアリアさんがついてくる。
ニャ:「エルネスタさん、ミリアリアさんの護衛を納得させるための戦闘ですよね?戦闘状況の想定はどうしますか?」
エ:「そうね、貴方が一人で三人を制圧したときの距離でお願いするわ。」
中央にたどり着き左回りに振り向く。
ニャ:「分かりました次はそうしましょう。」
パンと可愛い発砲音、ミリアリアさんの軽鎧のど真ん中心臓の真上にパチンとパラフィルムが張り付く。衝撃は結構あったみたいで咳き込んでいる。
ニャ:「本来の威力なら鎧を貫通し心臓がつぶれて即死ですね。鎧がなければ今の威力でも叫べず行動不能で、お持ち帰り一直線です。不意打ちって怖いですね?」
少しは理解して怖がってくれると良いんだけど。
咳が収まると顔を真っ赤にして不意討ちで未知のスキルは卑怯だと罵られました、ダメなようです。
お説教はエルネスタさんに後でして貰うとして、どんどん行きましょう。
ニャ:「では次をやりましょう。距離はこのくらい私の武器は今と同じものです。そちらから、全力でどうぞ。」
意味を理解したと同時に飛び込むように剣を抜き踏み込んでくる。
不意討ち効果を期待しての速攻だろうか?先程の連中より早くモーションも小さいがいかんせん直線的すぎる。
重心が動き出したのを見て、銃を抜き下から順に踏み込んでくる爪先に一発、剣を抜く手に一発、額に一発。リズミカルにタン、タン、タンと発泡。
踏み込んだ一歩は踏ん張りが効かず、抜いたつもりの剣は鞘の中のまま、脳震盪を起こし崩れ落ちる。
ニャ:「ポーションで治療をお願いします、このままだと半日は立てない。」
エ:「これで加減してるの?容赦ないわね。それに良い武器ね私もほしいわ?」
試験管?に入った液体をミリアリアさんに飲ませながらそんなことを言う。
ニャ:「殺すのは簡単です。生け捕りは難しいんですよ。」
ミリアリアに意識が戻りまだやると言うのだから良い根性をしている。
ニャ:「実際こんな武器を使うやつはいないので装備を変えましょう。エルネスタさんさっきお願いした網をお願いします。」
網を受け取りまた同じ程度距離をとる。
ニャ:「どうぞ?」
またも同じ動作で踏み込んでくる。
居合いからの逆袈裟間合いがわからないので鞘側に踏み込んで回避。
ショートソード距離は覚えた。
振り抜いた剣を返しそのまま袈裟懸けの振り下ろし。
一歩下がって回避と同時に、からだが小さく畳まれたところに合わせて網を投げる。
剣を振り回し切ろうともがくが振り払えず居るところを蹴飛ばし転がして手首を踏みつけ剣を奪い突き付ける。
ニャ:「また死にましたよ?いえ女の娘ですから死んだ方がマシかもしれませんね。こんなあからさまな装備だとその前に衛兵さんに捕まりますか?」
面倒になってきたので機械的に進めていく。
エ:「ええ、厳しくなるようなので職質は免れませんね。」
ニャ:「エルネスタさんその布貰えますか?」
取り敢えずまだ網のなかでもがいているミリアリアさんに剣を返し、エルネスタさんからシーツを受け取り広げて大きさを見せるように確認し広げやすいように綺麗に畳む。
ニャ:「貴女には僕が貴女を狙う敵だと前情報がある、だが街中でこの布一枚で武器を持たない丸腰の人間を切れますか?」
網から脱出したミリアリアさんは力なく首を横に振る。
ニャ:「そう答えは否、敵対行動に出るまで手が出せない。それではいきますよ?」
距離は先程と変えずこちらからシーツを抱え歩み寄って行く右側を通りすぎる寸前に下側から剣と左手、頭を覆うように広げる。
即座に剣を抜こうとするが右手と左手を両足で挟み込むように背後から組み着き、シーツの上から首に手を回しスリーパー・ホールドの体勢に入る。
ニャ:「早朝家を出ようとした一瞬何人が見てますか?」
最後まで聴こえただろうか?力の抜けた身体を離し呼吸を確認する。
呼吸は安定、脈もしっかりしてる、そのうち目を覚ますだろう。
ニャ:「エルネスタさん装備を脱がせて綺麗にして寝かせてあげてください。最悪仕事に出てこれなくなる、かもしれないのでしっかりフォローしてください。」
エ:「ええ、わかったわ」
ニャ:「後これを、一回しか使えません、腰か足首、脇の下取り出しやすい所に着けてください。身の危険を感じた時以外は取り出さないこと。撃つときは押し付けて、[これ]を引いてください。撃ったらすぐ逃げること。身の危険を感じたら迷わず使ってください。」
短銃身二連デリンジャーをホルダーごと二つ渡す。
ニャ:「貴女と彼女に、口止め料です。」
広場を後にする。
慣れないことはするもんじゃないね、お腹が空きました。
ピ:「よう外道、途中で飽きたわ。」
ニャ:「もうやだ、助けた娘を何で苛めなきゃならんか解らん。ミスひとつで大怪我まっしぐらとかもぉぉぉおお。お腹すいたご飯食べよう。」
刃物を持ったやつに手を出すのは危険ですお止めください。
首絞め系はガチで危険です、さっくり死人が出るので真似しないで下さい。