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第7話

夜会当日。美しい紫のドレスを身に纏った。私の恋心をいち早く察したアメリアお義姉様が一緒に選んでくださったのだ。艶のある濃い紫色で、胸元の開いた少しセクシーなデザイン。白い肌を引き立てるような深い色合いが美しい。大人っぽいドレスだ。飾りは地金にホワイトゴールドを使用し、紫水晶とダイヤをちりばめた美しい飾り。サイドの髪を少し持ち上げて後ろでハーフアップにして紫水晶とダイヤのバレッタで留めてある。

ほんのり薄化粧も施して、私的には大満足の美少女感なんだけど、まあ、クラスで3番目だろうね。

でも私の前に現れたエリック様の素敵さは筆舌しがたい。綺麗な亜麻色の髪も梳られて艶を出し、くっきりとした青い瞳。高い鼻梁に形の良い唇。美しい顔のパーツが美しい輪郭に収められている。それを引き立てているのが黒いかっちりとしたタキシード。シンプルながらも品質の良さが一目でわかる上品な品。逆にシンプルであるからこそ、エリック様の美貌を他の者より3段くらい上に引き立ててしまっている。う、麗しすぎる…男性なのに華やかで、さっと周囲を明るくさせるような神々しいオーラがある。


「リディ嬢。ドレスがよくお似合いだ。とても美しい。」


ぱっと輝くような笑顔で褒められた。


「あ、ありがとうございます。エリック様も、とても素敵です…」


ときめきすぎて上手な言葉が出ないくらい。


「ありがとう。さあ、馬車に乗って。」


ウェルスト家の馬車に乗るのはこれが初めてではないけど、相変わらず素晴らしい乗り心地。隣に座られる方がまた素敵だから、余計心地よく感じられる。

きゅ…

そっと手をエリック様に繋がれた。


「……。」


勿論拒んだりなどしないけれど、お互いに何も言わない。エリック様の手は大きくて、ほんの少し熱かった。

会場は豪華絢爛と言った感じで圧倒される。金の施された煌めくシャンデリアにレッドカーペットの先はつやつやに磨き上げられたホール。笑いさざめく人々。やや若者向けのパーティーなので何となく初々しい雰囲気。

カサンドラ様とシンシア様は一目でわかった。スチル通りのお姿だ。

燃えるような真っ赤巻き毛のカサンドラ様。蠱惑的な黒い瞳は睫毛がバサバサ。濃い目のルージュを引いてらして、気が強そうだけれど最高に華やかな極上の美貌。私も結構わがままバディとか思ってたけど、カサンドラ様はレベルが違うむちむちぷりん。なのに腰の細さといったら!掴めるんじゃないかしらって言うくらい細いウエスト。ものすごい美女。藍色の上品なドレスに身を包んでいる。どことなくお顔が青褪めていらっしゃるように見えるけれど。

シンシア様もスチル通り。淡い金髪にぱっちりとした青い瞳をされている。清楚で可憐な妖精のような少女。発育ぶりではカサンドラ様に大きく劣るけれど、彼女の美しさは寧ろその華奢さ。溶けて消えそうな儚さでありながら、一目見ればハッとさせられる。お伽噺に聞く森人エルフがいるならきっとこんな感じと思わせる可憐な美貌だ。耳は尖ってないけど。淡い水色のドレスに身を包んでいる。そのドレスがまた清楚なデザインで、彼女によく似合っている。表情はどこか怯えたような表情をされているけれど…

……私やっぱり会場クラスで3番目のポジションなんですね。しかも2位と大きく差をつけられる形の。がっくり。


「リディ嬢。一曲お願いできますか?」


エリック様が腰を折り、私の手の甲にキスをするという、少し気障な仕草でダンスに誘ってくれる。


「喜んで。」


エリック様の腕に抱かれてステップを踏む。遂にシンシア様が現れた。予想通りの美少女だった。しかしフラグらしいフラグはあらかた私が折ってしまったのだけど、彼女の恋はどうなるんだろう。シンシア様に悪いことしたなー…とは思うけど、いたいけな攻略対象の人生の方が一時の甘い恋より大事に思えたのです。許してください。シンシア様はお綺麗だし、素の実力でもきっと素敵な恋が掴めるのではないだろうか。


「何を考えているのですか?」


エリック様に問われた。はっとエリック様の瞳を見ると美しい青い瞳に私だけが映っていた。私だけを見つめてファーストダンスを頂けたというのに考え事に耽ってしまって…


「社交は重要なものですから、リディ嬢を僕一人に縛り付けることなどできませんが…」


ぎゅっと抱き締められる。


「せめて僕と踊っている時は僕だけを見て、僕の声を聞き、僕のことを考えてください。貴女を……奪わせて?」


耳元で甘く囁かれた。

ギャアアアアアアアアッ!!それ好感度上がってる時にシンシアと踊ってる時のセリフ!!!

三次元力が暴走してるよ!!ドキドキするよ!ドキドキするけど……ほんの少し虚しい。エリック様は生きた人間だけど、それと同時に『メロエク』の攻略対象だということをまざまざと見せつけられて。私、シンシア様じゃないのに…まるで身代わりのように感じられて、甘いセリフがどこか虚しい。

ダンスが終わり「また後で。」とエリック様とお別れした。

夜会は社交と情報収集の場。恋にばかりかまけていられない。ダンスを申し込まれて踊る。適当に情報を抜き取っていく。隆盛しそうな家の情報なども聞けた。カサンドラ様の情報も聞けたけれど、どうやらかなり穏やかな感じの令嬢であるらしい。『メロエク』とは違っている。『メロエク』では取り巻きを引き連れて傍若無人に振舞ってたのにね。原作通りじゃないってことか。そういえばカサンドラ様の周りで、ダイアナ様を見かけないや。ダイアナ様自体はすごく太っているので探そうと思うとすぐ目に入るのだが、太鼓持ちはやってないらしい。会場でお出しされる料理をもりもりと平らげている。

情報をくれる男性の中には、本気で私にうっとりな男性もいるようで、何となく気恥しい。素敵かな?と思ってもやっぱりエリック様の方が素敵に感じてしまうのだけど…天下の攻略対象だものなあ。




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