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第2話

「というわけで印象を替えたいのですわ。お父様、お母様。」


お父様とお母様に「ガーデンパーティーで色々なご令嬢を見たが自分のように前髪で顔を隠し、髪をぼうぼうと広げてしまっているご令嬢は殆ど居なかった。ドレスもこんな冴えないご令嬢はいなかった。自分もこれでは駄目だと思った…」と適当な理由をこねくり回してイメチェンを提案した。


「おお!遂にリディがその気に…!いいよいいよ。腕利きの美容師を呼ぶからね。」


お父様が感動した。今まで散々両親に「もうちょっと可愛い髪型やドレスにしないかい?」と言われたのを「何となく気が進まないから…」と前髪を伸ばし、後ろ髪もうねうねと広がせ放題、地味で陰気な雰囲気のドレスを仕立てていた。多分ゲームの強制力的なあれだ。自分が前世を自覚したから楔から解き放たれたのだろう。今は変えたくて変えたくて仕方がない。

両親は私の今の見た目は余り宜しくないと思っているようだ。髪型もちょっとアレだけど、ドレスもしっぶーいモスグリーンで、若々しい感じじゃなかったんだよね。親として心配するのも当然だ。


「リディは少し手入れをすればうんと可愛くなるだろうね。お母様に似て美人さんだから。」


にっこり微笑むのはドミニクお兄様。私より7歳年上の13歳である。お父様似の茶色い髪とお母様似の紫の瞳をしている。中々の美少年だ。将来は武官として宮廷に仕官するため、鍛錬中。我が家は法衣貴族である。お父様は宮中で武官をされている。逞しい殿方だ。


「有難うございます。お兄様。」

「でも、お勉強やダンスやマナーのお稽古もサボっちゃダメですよ?」


お母様がおっとり微笑んだ。美しい人なんだよねー。黒髪に菫色の瞳の。髪はサラサラストレートだけど。そのストレートヘアが羨ましい。いや、もしかしたら私の髪も可愛いカールになるかもだけどさ。うねうねはお父様の遺伝。ややうねりのある茶髪なのだ。お兄様はストレートヘアだけど。


「頑張りますわ。出来れば何か楽器なども弾けるようになりたいのですけれど。」

「それは良いね。」


お父様は乗り気だ。娘が自発的に習い事をしたいというなら親として否はないのだろう。裕福な方ではないけれど、楽器が買えない、習わせられてあげられないというほど貧しい家ではないし。

こんないい家族がいて、どうしてゲームのリディは修道院になんて行っちゃったんだろうね。シグルド様からの圧力かしら?まあ修道院エンドも死ぬわけでなし、最悪というわけではないけれど。人生を楽しめなさそうなので、自ら望んで行きたいとは思わないよ。だって私は世俗に塗れた人間ですもの。美味しいもの大好き。優雅な生活万歳ですわ。



***

私は美容師に綺麗に髪をカットされ、丁寧に髪の手入れをしたら、広がらず艶々した綺麗なカールヘアになった。元の容姿は美しいのだから顔が出ているとうんと可愛く。美少女だと思う。勿論自惚れて絶世の美少女だなどとは思わない。俗にいうクラスで3番目に可愛い子止まりだと思う。楽器は楽器店で色々と悩んだが、竪琴を選んだ。まだ習い始めたばかりなので上手くはない。

暫く自分磨きに熱中しているとアゼリア様からお手紙が届いた。「あなたの言うとおり、家庭教師がシグルドとモーリスの対立を煽っていた。あなたの言うとおりにしたら全てが上手くいった。シグルドとモーリスは今では仲が良すぎて困るくらいです。ありがとう。」的なことが書かれていた。良かった良かった。幼い子供たちが無駄に心に負担を強いられることなく、私は王家に恩を売れたし。修道院エンドから一歩遠ざかったぞ。シンシアの大事な攻略ルートは潰してるけど、それよりわかってる不幸を回避させてあげたい気持ちの方が大きいのだよ。誰も彼もみんな頑張って生きてるんだから幸せになってほしい。

え?シグルド様の婚約者?勿論カサンドラ様が選ばれましたよ?出来レースですから。そう言えばカサンドラ様のお噂はあまり耳にしないな。もし我儘令嬢だとしたらそういう噂が聞こえるかと思ったんだけど。まあ、まだ社交界デビューしてないから相当大きな噂でなければ聞こえないのかも。


「リディは見違えるほど美しくなったね。」


夕食の席でドミニク兄様が褒めてくださる。


「有難うございます。」


最近は自分を磨くことに耽溺してます。すぐに結果が出るから楽しくて。


「年頃になったらどれほど求婚者が出るか…」


お父様は憂鬱そうだ。いつの世も父親が娘を嫁に出すのは複雑な気持ちであるらしい。


「まあ。もう10年も先のことを憂いているの?今のうちにいっぱい愛でておけば良いのよ。


お母様は朗らかに笑った。


「そうだな。今度観劇にでもつれて行ってあげよう。」

「楽しみですわ。」


恋愛ものが好きだけど、お父様と見るなら、なんかこう冒険的なのが良いわね。


「では僕はダンスのお相手を仕りましょう。お嬢様。」


ドミニクお兄様が笑った。

まだ6歳の身。背丈の合うダンスパートナーは中々いないのよね。お兄様も例に漏れず背が高い。踊れないほどではないけれど。


「嬉しいですわ。」


たっぷり踊ってスキルアップしなきゃ。私は「わたしのかんがえたさいきょうのれいじょう」になるのですわ。自分磨きは楽しい。


「では私は社交術を授けてあげましょう。普段お勉強しているマナーを実践するのよ。まだお相手はお母様だから、失敗しても怖くないわ。」

「有難うございます、お母様。」


楽しく自分を磨きましょう。勿論ちゃんと学科のお勉強もしますよ。学科のお勉強は平たく言って大嫌いだけれど、社交でお喋りしている時、自国の歴史も知らないようでは笑われるし、有名な文学作品のお話もよく出ると聞くしね。

毎日が素敵な令嬢への積み重ね!可愛くて賢い素敵な令嬢になっていつかは格好良い殿方と恋に落ちる…そんな夢を見てもいいかしら?

乙女ですもの。


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