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仮初めのピースフル 4

「最近失踪事件が増えているのは知っているかい?」



「……そういえば、なんか最近多いですね。それがどうかしたんですか?」



「単刀直入にいうと、世界中でも今、謎のエネルギーが検出されている。失踪した人間の足どりを追うと、必ずその謎のエネルギーに行き当たるんだ」



「謎のエネルギー?」



「あぁ。この地球上で観測されたことのない未知のエネルギーさ。これはまだ私しか知らないことだがね」



 沈希は悠からパイプを受け取ると、また自分の口に差し込んだ。



 人の口に差し込んだものをそのまま口にする大胆な行動に悠は複雑な感情を覚えた。



「あれから半年、私はなにをしていたと思う?」



「……ずっとここで引きこもってたんじゃないんですか?」



「それはそうだけど、引きこもっている間なにをしていたか、だ。答えは、デッドノートの改良と『神隠し』の研究さ」



「神……隠し?」



 突如飛び出してきた、非現実的かつオカルティックな神隠しという単語に、悠は思わず首を傾げた。



「ヴァンが死んでから一ヶ月経ったあたりのころに私の計器が初めて謎のエネルギーを感知してね。それを追うと人が行方不明なっているわけだ。神隠しというのは突然人がいなくなる、という昔からよく言われる不可思議な現象だ。関係ありそうじゃないかな?」



「そうは言っても、そんな現実味のない話……」



「ふむ、なら君はヴァンの作り出した様々な改造人間や、私の作ったデッドノートに現実味があると言うのかい?あれほど巨大なエンジンを積み込んでようやく空を飛ぶことが出来る飛行機が主流の時代で、少し飛行ユニットをつけたら同等の飛行能力を持つことが出来るデッドノートが現実的だと」



「いや、そういうわけじゃ」



「なら分かってくれるな。私は神隠しの研究をした。それだけ分かればいい」



 いつになく強引な沈希に疑問を覚えるも、彼女の言うことに基本間違いはないので矛を収めて続きを問いただす。



「……それで、神隠しとやらを研究した結果なにか分かったことはあるんですか?」



「あるとも。だから今日君を呼んだんだ。いやぁ、すごく面白かったよ。こんなに高揚したのはデッドノートの設計図を引いていたとき以来だ」



 沈希はもったいぶりつつ成果のほどを報告する。



「それで、なにがわかったんですか?」



「こことは別世界の存在だ。所謂パラレルワールド。それがあるということがさ」



「パラレルワールド……?」



「そうそう。私は神隠しを調べるに当たってあらゆる可能性を模索してね。その結果、神隠しとパラレルワールドに結びついたのさ」



「ちょ、ちょっと待ってください。頭が追いつきません」



「簡単な話だ。各国で共通する、人が突然いなくなる話の正体は、別世界へ連れ攫われたか迷い込んでいたかのどちらかだということさ」



「……それ、本当ですか?」



「本当だとも。証拠に、ほら」



 沈希はモニターになにかの画面を映し出し、それを悠に見せつけた。



 ――それを見て、悠は絶句した。



「これはライブ映像だ。決して私の冗談ではない」



 沈希の言うことが本当ならば、これは世界のどこかで現在起きているということだ。



「……空間に……亀裂が入ってる……!」



 画面に映し出されていたのは、真っ白い空間に赤黒い亀裂が入っている映像だった。



「私は今複雑な気分だよ。空間のクラックが生じたのはちょうどこの真上でね。これまでに得た情報と技術を駆使してなんとかこの亀裂を維持することが出来たんだけどーー」



「……そこにいたスパイたちが、みんな消えた?」



「そう。私が少し目を離した隙に、施設はめちゃくちゃに破壊され、中の者は全て何者かに連れ攫われていた」



「え……ちょっと待ってください。……連れ攫われた……?」



「そうだ。映像を巻き戻して確認したところ彼らは、クラックの中から(・・・・・・・・)現れた化け物(・・・・・・)に攫われていた。一部は手足までもがれてね」



「……並行世界人……ですか?」



「ああ。驚いたよ。別世界どころか、そこに化け物が住んでいるだなんてね。多元宇宙論を立てたウィリアムも真っ青だろうね」



「しかも、人を攫ってる」



「これは由々しき事態だよ、斎賀君。一度ならず二度三度と奴らはこちらに来ているんだ。そして、継続して人間を攫い続けている。つまり、攫った人間には向こうからすると利用価値があるということだ。こちらの世界の人間に対抗する力がないと知ると、大規模な侵略を仕掛けてくるかもしれない」

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