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ぺらぺらとページをめくりながら、篠塚桃花は本を読む。太陽はその活動を終え、静かな帳が四方を包んでいる。部屋に備えられた月見窓からの光だけが、その本のページを照らす。そのわずかな光の中で読み進めるときを、篠塚桃花はこの上なく好きだ。
それは、彼女にとって周りの環境が大きく変わったとしても、決して変わらないもの。彼女にとって唯一絶対の、心安らぐ瞬間。
喧騒もなく、
退屈もなく。
めくるページに書かれている文字は西洋のアルファベット。時折見慣れないアルファベットがあることから、おそらくは古代の、ラテン語だろう。
その同じ部屋の隅に、甲斐雪人が座っていた。否、壁にもたれ、寝息を立てている。けれど、それもうるさくないし、彼女には気にならない。
めくるページの途中、彼女の動きが不意に止まる。
もし……
違う、あの事件はすでに終わったのだ。彼女はあの事件に関わり、彼女なりの回答を得て、警察も、彼女が指名した人物を犯人として捕まえた。
けれど、彼女の胸の中にわずかな疑問が残っている。
確かに、彼女が導き出した結論は正しい。けれど、それはあのK田邸で起きた、あの事件に関してだけだ。彼女が突きつけた状況証拠、犯人がもらした、犯人しか知りえない情報、すべてはK田邸で起きた事件に対する証拠でしかない。
甲斐と二人であそこへ行った日に起きたもう一つの事件、つまりKカンパニーでの事件については、何の証拠もない。ただあるのは、犯人の自白だけだ。くだらない人間関係が裏にあったと、あとで聞いた。それも事実だろう。
けれど、どうしてこんなにも胸の中がざわつくのだろう。
……おそらく、あの金庫の中に銃は入っていなかった。K田博士からのメッセージでそれを読み解くことができる。銃はK田妙が用意したものか、あるいはどこかからもたらされたものか。そして次の事件が起き、また銃の行方が分からなくなっている……
何か重大な見落としをしていないだろうか。
それは、芹沢雅の誕生日会で、彼女の姉が、現れたほど、想定外な、何か……。




