7話 魔装戦祭と学年序列
今回珍しく独自ワードが。読み方は本文でお願いします。
あと学年序列については少し複雑なので後書きで説明します。
「はぁーい、それじゃ今から来週頭から開催される『魔装戦祭』と学年別序列について説明しますね〜」
金曜の1限目、突然告げられた『魔装戦祭』と学年別序列の話。前から回されるプリントがその現実を確かに告げていた。
「・・・『魔装戦祭』、ねぇ・・・」
「あれ、颯兄そこまで乗り気じゃない?」
「めんどくせぇ」
「出ましたお決まり」
明香里の苦笑いも意に介さないと言わんばかりに颯真は頭を掻いた。
「えー、『魔装戦祭』は毎年上期に通じて行われる行事ですねー」
「ふーちゃんせんせ、そんなバッサリ言われてもわかんないよー」
「ちょ、ふーちゃんって言わないで〜」
女生徒から突然つけられたあだ名で呼ばれ、当のふーちゃん・・・もとい南楓子は言わないで、とあわあわしていた。
「ちょっと、南先生困ってんじゃん」
「でもさぁ、そんな大雑把に言われてもわかんないって」
後ろの女子の言い合いを一瞥しつつ、颯真は手元のプリントを見た。片方は『魔装戦祭』が何なのかを説明するためのプリント。もう片方は・・・入学時点での1年生の学年序列だった。
(・・・やっぱり、な)
颯真にはこの序列がある程度予測できていた。
(俺とベルスレット・・・じゃねぇか、リコリスで相当迷ったらしいけど・・・おろ)
ランクを見て、颯真は意外な思いを持つ。自分、リコリス、アスティロット・・・TOP3とまでは言わなくてもTOP5に全員が食い込んでいるという予測を立てていた。少なくともランク4あるいはランク5はこの3人だけ。
(俺が4位でリコリスが6位・・・でもってアスティロットが2位か・・・1位が・・・『天ヶ崎禮華』?聞きなれねぇ名前だな・・・)
リコリスがなぜかTOP5落ちしているのと、アスティロットが序列1位でなかったこと。颯真からすればこれが想定外だった。
「えっ、ヴァ―ミリオンさんが序列2位!?」
「えぅっ!?」
「うわー、ロッテちゃん開幕2位なんだ・・・いいなぁ・・・私なんて291位だよ・・・?」
「まさかすんごいの隠し持ってるとか!?」
「嘘・・・6位・・・!?」
いつの間にか序列表の話になっており、それぞれがそれぞれで一喜一憂・・・とまでは言わないがそれぞれらしい反応を上げていた。
「ランクや属性までは載ってないけど、強い子はホント強いのよぉ?」
「というか1位の天ヶ崎さんってどんな人なのか全く知らないんだけど」
「どんだけ強いの?」
「というか代表挨拶すらしてないのが1位ってどんだけ」
「あ、あのねぇ?まだもうちょーっとお話し続くから静かにしてぇ〜」
ここにはいないその生徒の話題で盛り上がるが、なんとか楓子の言葉で静寂が訪れる。
「えぇっと、まず学年序列だけど、序列5位まで紹介するね。1位が3組の天ヶ崎禮華さん。彼女自身目立とうとしない子で分からないかもしれないけど・・・どこかで見ることは間違いないかな?ランクは3」
『ランク3!?』
颯真以外が一斉に驚きの声を上げた。颯真も実は驚いているが、声に出していないだけである。
「うーん、先生も詳しいことは判らないけど、なんでも今までは顕現武装だけで戦い抜いてきたとかどうとか」
その言葉で再びざわめき。ランク3が現在確定ランク4の颯真とリコリスを押えて序列1位となっていることで、だ。
「次に序列2位はヴァ―ミリオンさん。皆もわかってると思うけど恥ずかしがり屋さん・・・だけどね?ランクがすごかったの。先生聞いて驚いちゃった」
すぐに再びざわめく。ランクが凄い・・・これが何を意味するのかは颯真と明香里、そして当の本人のアスティロット以外知らないのだ。
「実はヴァ―ミリオンさん、ランク5なのよ」
『ら、ランク5ぉ!?!?』
一斉にがたっと椅子を鳴らしてアスティロットの方を向く。そういうことに当然慣れていないアスティロットは「ぴぃっ!?」と素っ頓狂な声を上げた。
「先生もね、実際にランク5の生徒を見るの初めてだから驚いちゃって。ランク4でも驚いてるけど」
苦笑いをしているが、そんなのお構いなしな有様。そんな中序列3位も紹介され、ランク3なのにも、颯真もリコリスも未だ呼ばれないのにも驚きが続いていた。
「そして、序列4位が宮城君。実力を隠していたという事が大きく引っ張られた・・・のかな?」
楓子がそこだけ言うと周りもざわめく。
「あの戦いのあの一撃、凄かったよねー」
「そうだねー。観客席一部叩っ切っちゃうんだもん」
あの戦いのあの一撃・・・颯真が放った一撃は余りにも凄まじく、破壊された箇所は今なおグラウンドの観客席の一部を封鎖して修復作業に追われている有様であった。そして颯真の次・・・序列5位が発表されたが・・・
『・・・なん・・・だと・・・』
リコリスの名が上がらないことに一斉にその一言を告げるだけに留まった。・・・というかそうとしか言えなかったのも事実だったり。
「序列上位5人はこんなメンバーだね。この人たちに挑めー、なんて言わないけど、自分より序列の高い人と戦って勝てばその人とそっくりそのまま序列入れ替えってシステムだから、勝てたら一気に1位、なんてこともあったりなかったり」
『おおぉーっ!』
湧き上がるクラス。なおただ一人だけは溜息だった。
「・・・めんどくせぇ・・・」
「あー、やっぱ颯兄のめんどくせ病始まった」
「・・・じょ、序列、1位・・・!?」
他のクラス、同時にクラスメイトがざわついている中、自分に与えられた序列に驚きを隠せないでいる少女がいた。その少女が・・・序列1位、天ヶ崎禮華その人だった。
(む、無理、無理だよぉ・・・。私なんかが1位だなんておこがましいし術式がちゃんと使える人からすればなんでお前がみたいな状態だもん・・・)
彼女が序列1位になったその理由が、『顕現武装のみで今までの戦い全戦無敗だった』から。が、彼女は『顕現武装のみで今まで戦わざるを得なかった』のが現実であった。
同じクラスに序列1位の存在がいる。しかも今現在完全無敗の猛者がこんな少女だという事実。
(うぅ・・・負けて序列を譲りたい・・・)
「ところでリコちゃん、序列6位なのに戦いをーなんて言わないんだ」
「・・・言うわけないでしょ・・・あんな負け方しておいて」
リコリスはさすがにあの時のようなことを言うことはないと言い放つ。大口を叩いて挑んでおいて、蓋を開ければ自ずと降参。あんな状態で戦いたい戦え戦わせてとまで言っても誰も戦おうとはしないかもしれない。最悪嘗めてかかられるかもしれない・・・と思ったのだ。
「それに・・・『煉獄の紅焔竜』じゃソウマのような威力もないただの見世物状態だし」
(いやあれで火力がないというあんたがおかしいと思うのは私だけじゃないかなううんきっとそうかもしれない)
明香里はリコリスの一言に心の中で思い切り変だと言っていた。一応彼女も兄と目の前の彼女の一戦を見ていた1人であり、『煉獄の紅焔竜』の威力はしっかりと見ていた。だからああまで言えたのだ。
「じゃあ新しく術式でも考えてみたらどうかな?」
「アカリ・・・そんな無茶言わないで」
「無茶でもお茶でもないのが事実だったりするんだよこれが」
明香里はリコリスにただただ淡々と『術式を組み上げるのが簡単なことだ』という事を説明し始めたのだった。
まずは学年序列について説明します。
学年序列は文字通り学年別での強さを示すランキングです。1年生だと1年生だけでの、というもの。
入学時の序列の決定方法は、実技試験での戦闘状況や結果、その時点で保持しているランクで決定されます。
その後は公式な模擬戦の結果で変動します。
学年序列以外に、学内序列も(今回触れませんでしたが)存在し、こちらは学園全校生徒の強さランキングです。決定方法は学年序列と同じ。
次回は颯真に新たな出会いが。なお、4話の女子生徒はまだ出てきません。