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6話 アスティロット、乙女の聖戦へ

アスティロット、暴走!


乙女の聖戦はマジものなのかはたまた(笑)なのか。その結末は・・・?

模擬戦のあったその翌日、颯真の手引きによって明香里&アスティロットとリコリスは晴れて友達となった。アスティロットとリコリス、の組み合わせの場合に限っては少し時間がかかっていたため、明香里が発破をかけて仲良くなった。しかし、問題は別に発生した。



「リコちゃん、どったのその荷物?」

「私、今日から引っ越ししろって先生から」

『引っ越し?』



その日の夕方、リコリスが旅行鞄を抱えて階段を下りていたのを見かけた明香里たちが声をかけた。理由は単純、引っ越し。しかし・・・



「え、でもどこに?」

「ソウマの部屋よ」

「・・・!」



あっさりと言ってのけたリコリスに、戦々恐々としたアスティロット。そんなのお構いなしに明香里とリコリスは話を続ける。



「えー、でも颯兄結構ズボラだよ?面倒だーとか言い出すとそれこそ服脱ぎ散らかすし休みに動きたくないーとか言い出すと夕方まで完全に爆睡しちゃうから」

「そうなの?意外ね・・・。ソウマって言葉はぶっきらぼうだけど真面目なんじゃないかって思ってたわ」

「そうだよー?それこそ超めんどくさがりでさぁ・・・私が起こしに行かなきゃそれこそ朝寝坊もデフォルト」

「・・・アカリ、あなたソウマと同じ部屋じゃないの?兄妹でしょ?」

「ロッテちゃんが超人見知りだから颯兄が『一緒にいてやれ』って」



和気藹々と話す2人に、ついにアスティロットが吠えた。喚いたとかではなく、吠えた。



「り、りこりしゅ!!」

「ひゃぁっ!?」

「ろ、ロッテちゃん!?なんかすっごいかんで声裏返ったよ!?」



完全に声がひっくり返ったアスティロットに驚く2人。しかしそんなの気付かねぇとばかりにアスティロットは口を開いた。



「そ、そそ、ソーマとおんなじ部屋になっても、へ、変なこと、し、しちゃ、だ、だめぇ!!」

「へ、変なことって!?」

「そんなの私に聞かないでよアカリ!」



突然何の脈絡もない、素っ頓狂もいいところなことを言い出したアスティロットに、明香里もリコリスも焦るだけしかなかった。周りの評価の事だけで。



「あ、アスティロット!?私は先生から空き部屋確保で引っ越ししろって言われただけで、べ、別に好きだからとかそんな変な理由で引越ししようなんて思ってないわよ!?」

「そ、そうだよ!というか颯兄の部屋なぜか4人部屋だしそのうち男の人が引っ越してくるって!

「ダメなのはダメなのぉ!!」

「なんかよく分からない言い方になってるよ!?一回落ちつこロッテちゃん!?」



ぎゃいぎゃい喚きだしたアスティロットを宥めるのに術を無くしていた2人であった。

































一方その頃の颯真はというと。



「ぶへっくしょぉい!・・・あー、誰か噂してんなコノヤロー」



盛大なくしゃみと共にぼやいていた。

































「・・・で?アスティロットがなんかよぉ判らん顔しよるけど何があったん?」

「私にもよぉ判らんのよ。リコちゃんが颯兄の部屋引っ越すーってったら突然ぎゃーつく喚きよるの」

「そんだけばか(それだけ)であんな顔になっとると。・・・男にゃ女はねっか(ちっとも)分からん」

「颯兄、女の私にもよぉ分からん」



いつの間にか荷物運び3週目を始めていたリコリスはさておき、むっすーとハムスターよろしく頬を膨らませているアスティロットに苦言を呈することも叶わない2人。さてどうしたものかと考えていたところだった。



「アカリ」

「な、なに?(・・・なんか恐ろしいこと言い出しそうで怖いんだけど)」



なんとなーく嫌な予感を覚えつつ明香里はアスティロットに聞き返した。その返答は、明香里にとって斜め上どころかよくあるAAでメダマドコーなものだった。



「私もソーマとおんなじ部屋にする!」

「・・・ふぁっ!?」



当然斜め上過ぎて明香里は自分の声とは思えない変な声を出した。



「ちょ、ちょっとおまん、いせきないにも程々にせぇよ!?リコちゃん颯兄のとこ引っ越すんがけなるいん!?(明香里風意:ちょ、ちょっとロッテちゃん、せっかちも程々にしてよ!?リコちゃん颯兄のところに引っ越すのが羨ましいの!?)」

「・・・羨ましいんだもん・・・私だけソーマと一緒の部屋にいたことないのやだもん・・・」



明香里はそんなアスティロットの呟きを聞いた瞬間、思わず颯真に言ってしまう。



「・・・颯兄、私ロッテちゃんがあんなたわけたこと言いよると思わんかった・・・」

「・・・俺も同じ意見」

































アスティロットの暴走は引っ越しから始まっていた。3つの個室が颯真(とリコリス)の部屋にはあるが、そこで早速アスティロットが宣戦布告。



「わ、私ここ!」

「ここ・・・ってソウマの隣なだけじゃない。というか私そこに荷物運び込んでるわよ?」

「だ、だけじゃ、ないもん!だって、だって・・・(ごにょごにょ)」



もじもじと尻すぼみになる言葉に、リコリスは大丈夫なのかと思わず思ってしまう。



〈もうじゃんけんで決めちまえー〉



そして完全に投げやりな颯真。リコリスはそこにいない明香里に助けを求めたい気持ちになっていた。



(・・・アカリ・・・助けて・・・)

































そして引っ越しも無事|(?)終わり、アスティロットの暴走も一度は収まった(颯真の隣の個室を手に入れたため)が・・・



〈ソウマ、ちょっといいかしら?〉

「面倒だからお断りだ」

〈ちょっ、断るの早すぎるわよ!少しくらい話聞きなさいよ!〉



『戦おうとか言ってるわけじゃないんだし』と用があるアピールをするリコリス。しかし颯真の次の言葉にリコリスは思わずドアを開け放ってしまうのだった。



「既に面倒事が起きてるから余計に面倒事は持ち込まんでくれ」

〈面倒事って何・・・よ・・・」



もう面倒になり、リコリスは個室へと突撃した。そこで見たものは・・・



「・・・こうなってんだよ・・・」



ベッドに横たわった状態の颯真と、時々ばちっ、という音を鳴らし抱きついているアスティロットがいた。



「・・・これ一体どういう事なの?」

「知らん分からんというか助けてくれ・・・」



リコリスにとって、目の前の光景が何なのか・・・というかそれ以上に訳がわからなかった。



「・・・ソウマ、まず動こうとしなさいよ」

「・・・動けねぇから助け求めてんだけど・・・というかアスティロット、いい加減神経麻痺らせるの止めてくんね?」

「私が満足するまでやだ」

「ま、麻痺って・・・」



暴走したアスティロットがまさか颯真を麻痺させているとは思わなかった・・・というか麻痺させてまで何でそこまでするか理解できないという状態。



「・・・もう、何度も言ってるけど私はソウマに対して変なことをする気は全くないわよ。というかそういうことするって思ってたら先にソウマの親御さんに挨拶しに行くわ」

「・・・段階踏むんだなそこは」

「当たり前でしょ?それ以前に私は一貴族の娘よ?」



一瞬颯真はそれもそうか、と思う。だがそこでさらに問題が発生した。



「だったらとりあえず一安心ぁばばばばばばばばば!?」

「そ、ソウマ!?」

「絶対に渡さないもん・・・」



ついに放電にまで至ったアスティロット。目の前でバリバリと電撃を食らう颯真にリコリスは慌てるしかなかったが・・・



「そぉい!」

「ふぎゅっ?!」



どこからともなく現れた明香里が電撃などものともしない勢いでアスティロットの意識を闇へと沈めた。



「まったく・・・もう。こんなことやってたらいつか颯兄死んじゃうって言ってるじゃんかー」

「あ、アカリ?だ、大丈夫なの?」

「だーいじょうぶ大丈夫。何年ロッテちゃんと一緒にいるってんだって」

「そ、そう、なの?」

「そういうもんなの」

































「しかしまぁ、アスティロットがあんなになったのって久しぶりじゃね?」

「かもねぇ?」



アスティロットを縄でふんじばって(文字通り)、部屋の真ん中にあるリビングルームで3人。颯真と明香里は昔から颯真関係で暴走するアスティロットを見てきたため、どこかなれた感じで話していた。



「アスティロットって・・・あ、アカリ、もしかして・・・」

「あ、気付いちゃった?あぁそうだ颯兄、ちょーっと席外しててくんない?乙女同士のお話タイム♪」

「お前が乙女言うかって・・・とりま把握、終わったら呼べよ」



颯真は自分の個室へと消えていった。それを確認した明香里はリコリスへと向き直る。



「で、リコちゃん聞きたいことあるんやけんどさぁ」

「聞きたいこと?」



リコリスが聞き返すと、明香里は普通に机に頬杖をつく。まだよく分からないと首を傾げるリコリスに、アカリは爆弾発言投下。



「颯兄のことどう思ってんのかにゃー、って」

「どうって・・・いいやつじゃんって思ってる程度よ?自分でも自爆した、って思うあの賭け事やったのに『それ無しにして友達としていこうぜ』って言うんだもの。聞いたばっかりの時は正気かしらと思ったけど・・・」

「ほんとにそんだけ?」

「それだけよ?」



普通に返したリコリスに対し、明香里はさらに突っ込んだことを聞いた。



「いやー、颯兄のこと好きなのかなーなんて思ったんだけど」

「ぐっ?!げ、ほっ!ごほ、ごほぉっ!?」



突っ込んだ・・・というよりもぶっこみ過ぎたその問いに、リコリスはたまたま口に含んでいた飲み物が気管に入りかけ盛大に噎せ返った。



「な、何をいきなり言い出すのよ!」

「え、だってさ、普通男の子と同居なんて兄妹じゃない限り拒絶するよ?というか兄妹でも拒絶するパターンも否定不可」

「そ、それは・・・」



口どもるリコリス。



「なのに!リコちゃんは拒否しないで普通に同居を受け入れた!なぜか!?」

「ちょ、ちょっとアカリ!?」

「それは颯兄が好きだという事実に他ならない!否、そうでないと言い張っていても本心は好きだったんだよ!!」



明香里の力説。しかし誰かが「なんだってー」と賛同するわけでもないため、この力説は宙に虚しく響き渡るのみであった・・・



「そ、そんなのありえるわけが」

「おんやぁ?だぁい好きな颯兄が一緒にいるっていうこの空間が辛いとか言っちゃう?」

「うぐぅっ・・・」



リコリスは明香里の言うことが余りに図星過ぎて言い返すことができないでいた。実は颯真の事が気になっていたリコリス。本来嫌なことであったろうあの事件も包み隠さず話したこと、明らかに自爆したあの発言に対しなかったものにして友達になろうと初めて言ってくれた少年が気になっていたのだ。



「べ、別に・・・アカリが言うようなことは・・・ない、わよ」

「ふぅーん?そうなんだぁ〜?」



にやにやとリコリスを見る明香里。その瞬間、別室から盛大にドスンという音が聞こえたのだ。



「あの音・・・アスティロット?」

「あー・・・目ぇ覚めちゃった?」



音源の部屋に向かう2人。その戸を開けると、簀巻き状態のアスティロットがもじもじとしながら蠢いて(文字通り)いた。



「ロッテちゃんどうしたの?」

「あ、アカリぃ・・・」



とても困ってます、という目で明香里を見たアスティロットはこう告げた。

































「も、漏れちゃうぅ・・・」

「トイレーっ!!」

































閑話休題。



「さて、リコちゃんもあからさまな好意を颯兄に持ってることが分かったという事で」

「・・・」

「・・・や、やめてアカリ・・・アスティロットがすごい目で睨んでくるから・・・」



明香里が話をまとめようと切り出した。が、内容が内容であり、アスティロットは即行リコリスを睨みつけた。



「ただ思ったのはさ、ロッテちゃんが独占欲の塊過ぎることとリコちゃんが少なからず颯兄が好きだーってことなんだよね」

「だ、だから私は・・・」

「嘘だっ!」

「ひぅっ!?」



どこかで聞いたことあるような言葉で叫ぶ明香里に、リコリスは二の句を潰されていた。



「リコちゃんがくっつくとロッテちゃんが嫉妬するしロッテちゃんがくっつくとリコちゃん多分怒るだろうし・・・どないせぇっちゅう話」



少し逡巡した明香里。が、答えは意外な速さで出た。



「どっちかがくっつくと余った方が嫉妬オア怒る・・・あ、だったらどっちともくっついちまえばいいんだ」

「あ、アカリ!?」

「ど、どっちもって・・・どっちも!?」



明香里は突然颯真の将来重婚を思いついたのだ。というか・・・



「だいぶ前に法律代わって重婚OKなってたの忘れてた!」



というだけだった。



「じゅ、重婚可能って・・・そ、それは・・・」

「に、ニホン・・・恐ろしいわ・・・」

「そういや正妻は2人までOKだったような気がするけど・・・どうだったっけ」



明香里は「どこ見りゃよかったんやっけ・・・総務省やっけ?」と言いつつ端末をスライドさせまくっていた。



「ソーマと・・・結婚・・・ソーマと・・・はふぅ・・・」

「ちょっと!?アスティロット!?なんで気を失うわけ!?ちょっと!起きなさいよ、ねぇ!!」

「あったー!やっと見つけた!えと?「正妻3人まで」・・・あ、ちょっと思い違いしてた。で、結婚可能年齢は18かぁ・・・」

































その頃颯真は。



「・・・まったくもって何もかも丸聞こえなんだよ・・・。なんだよ正妻とか結婚とか、気が早ぇのわかってんだよ、ったく」



外の喧騒が丸聞こえだったことに顔を赤くしつつも呟いていた。



「何時まで経っても呼びゃしねぇだろうから・・・もう寝るか」



颯真はそう言って布団にもぐりこんだ。



「どうせ明日は高校初の休みだ、いつものスタンスで寝潰すか・・・」

アスティロットは嫉妬するとます颯真を押さえに行きます。そして痺れさせます。


無理なら相手を凄い目で睨みます。


リコリスはどうするのか・・・



次回はこの小説で、割と重要なシステムが出てきます。


少々特殊なシステムなので、次回後書きで少し説明します。

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