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4話 決戦、颯真VSリコリス

いよいよ戦闘!


この戦い、どちらに軍配が上がるのか、どんな戦いになるのか・・・

「先に行くフリして逃げたと思ってたわ」

「また面倒になってくるから逃げねぇよ・・・」



颯真が第3グラウンドへ着いたその数分後にリコリスは姿を現した。



「ま、その覚悟だけは認めてあげるわ。私に消し炭にされるのを怖がらなかったその覚悟をね!」

「どんな覚悟だよ・・・」



颯真はリコリスの余りに自信家の過ぎた発言に何度目とも分からなくなった溜息を吐いた。同時に、リコリスからとんでもない発言が飛び出してきた。



「一つ提案があるのだけど?」

「・・・なんだよ」

「この戦いの勝者が敗者を下僕にできるってのはどうかしら?」

「意味分からん」

「文字通りの意味よ。勝てば相手を下僕にできる。それ以上の説明がいるのかしら」



勝者が敗者を下僕にできる。あまりに無謀で、自分が負けた時のことを全く考えていない発言。



〈童。あの小娘は末恐ろしいことを言うものだな〉

(ホントもうバカなんじゃないかと思いたいよ)

〈ああいう気の強い小娘ほど跪かせて啼かせるのもまた一興というものよ〉

(ゲスだなお前)

〈歴代の主に大抵その趣味のじんが多かった故な〉



ラファールからの猥言にも突っ込みを欠かさず、颯真はリコリスに向き直った。



「何言っても聞かなさそうだからそれでかまわねぇよ・・・。観戦者も多いから裏は簡単に取れるだろうしよ・・・」

「成立ね」



ニッと笑みを浮かべたリコリス。その笑みには自身の勝利、目の前の相手を下僕にできるという喜びも含まれていた。そして中央モニターにそれぞれの名前や情報が表示された。



『宮城颯真 風ランク4 顕現武装:UNKNOWN』

『リコリス・ベルスレット 火ランク4 顕現武装:災禍の炎剣』



その2つの表示が画面端へと流れて行ったと同時に、カウントダウンが始まり・・・
































開戦を知らせるブザーが鳴った。



(流石にラファール本体を使うわけにゃいかねぇ・・・!先ずは様子見で・・・)



颯真は様子見を選択したが・・・



「来よ、古に伝わりし災禍の剣!『災禍の炎剣フランベルジュ・レーヴェ』!!」



リコリスは自身の周りを炎で包み、その目の前に一振りの剣を顕現させていた。



「・・・マジかよ」

〈今の言葉で言えば、『マジ』であろうな〉



ラファールの言葉にも返せないほど焦る颯真。目の前の少女に陽炎が見える時点で、かなりの熱が剣から発せられているのだろうという推測は容易いものだ。



「本気で来なさい、そうじゃなかったらただじゃ済まさないわよ!」

「・・・本気出そうにも出せないんだよなぁ・・・」



颯真はリコリスの挑発にも見向きもしないような感じで頭を掻く。



「・・・ウインドソード」



かなりぶっきらぼうに顕現。しかも呼び出したのはラファールではなかった。



「・・・あんた、ふざけてるの?」

「ふざけてんじゃねぇよ・・・こうでもしねぇとアカンっつー話」

「・・・よくわかんないけどあんたは本気で戦わないってわけね」



そうだけ言ったその瞬間、剣から炎が噴き出した。



「あんたのそのそよ風ごと!私の炎で焼き尽くしてあげるわ!!」



そういうや否や、リコリスは颯真めがけて突っ込んできた。



〈ほれ童。ぼうっとしておると焦げ死ぬぞ?〉

「あーもうめんどくせぇな畜生が!!」



振り下ろされ横に薙ぎ払われる『災禍の炎剣』をランクの低いただの剣でどうにか受け流し下がる。悪態を吐きながらも颯真は『とりあえず負けない程度に戦える』策を講じていた。が・・・



「手加減しといて防戦一方なんて、女々しいにも程があるわね!」

「ちぃっ!」



自分よりはるかに戦い慣れている相手に、颯真は防戦一方を貫いていた。反撃の狼煙を上げられない、その転機が見つけられない。無傷ではいたがジリ貧だった

































「ソーマ・・・・」



第3グラウンドの観覧席、そこに明香里とアスティロットがいた。ギャラリーに紛れ、2人も試合を見に来たのだ。



「だーいじょうぶだって。颯兄は絶対負けないよ」

「で、でもケガとかしちゃうかもしれないし」

「そこまで」

「んみゅっ」



心配する言葉の止まらないアスティロットの口を人差し指で抑え込んだ明香里。ちょっと可愛らしい声で呻いて黙った。



「確かに颯兄には越えなきゃならないトラウマがあるのも知ってるよ。・・・私だってトラウマになってたもん、指を切っちゃって出てきちゃう自分の血を見るのも怖いくらいに。だけど颯兄はもっと恐ろしい感覚が体に染みついちゃってる」

「・・・あの、『惨劇』の感覚・・・だよね」

「そ。颯兄自身が私にだけ教えてくれたのかもしれないけど、ずっと言ってた。『完全に暴走して意識もなかったのに、なんでか手の中に人を斬る感覚が残ってる』とか『二度とこの力を使いたくない。できるなら永久に』って」



そう言って明香里は兄の戦うグラウンドを見た。



「頑張れ、私の強くてかっこよくて、そのくせ弱くありたがって結局強くなってっちゃう自慢のお兄ちゃん」

































一方。



〈ほれ童よ、何時まで経っても逃げの一線では永劫決着せぬぞ?〉

(うるせぇっ!こっちもこっちでいっぱいいっぱいなんだよ!)



ラファールに対し防戦一方なのは致し方なし、と叫ぶ颯真。その一方で、リコリスにも確実な焦りが生まれていた。



(・・・なんなのこいつ!?何時まで経っても致命傷どころか切り傷擦り傷1つも付けられない!?それどころか私の剣技を強引に弾き返すなんて!そんなの・・・そんなのありえない!!)



互いに焦りを生む戦い。ついに焦れたリコリスが剣戟を止めた。



「・・・もういいわ。あんた、ランク4だからどれだけ強いのかと思ったけど・・・逃げてばっかりで話にならないわ」

「そりゃどうも、こっちはこっちでギリギリだったがな」



そこまで苦しそうでないリコリスに対し、肩で大きく息をしている颯真。誰の目にも颯真の劣勢は明らかだった。



「追い詰めるのも時間がかかるから・・・一気に仕留めてあげる。私の・・・最強の魔剣技でね!」



そういうとリコリスは『災禍の炎剣』を地に突き立てた。そして口を開く。



「『出でよ紅焔、その御身、火竜と成りて炎獄の苦しみ彼の者に至らしめん、其の出立いでたち、煉獄の使者也!』」



長く紡ぐ詠唱文言。その長さを聞き、颯真は冷や汗を掻いた。



〈ほう、小娘がここまでの文言を唱えるとは・・・〉

「あー、死んだなこれ」

〈もうよかろう?我も加減を試みる。恐れず振うと良かろうて〉

「・・・ホントは嫌なんだけどなぁ・・・」



ここまで拒もうとする颯真に対し、リコリスはついに詠唱術名を口にした。



「焼き尽くしなさい、『煉獄の紅焔竜ヘルプロミネンス・サラマンディア』!!」



リコリスが突き出したその手を起点に、放射状に現れる火竜。いくつものそれは颯真へと向かう。



「・・・はぁ、『諦めるか』」

「!」



颯真の『諦める』という言葉に、勝利を確信したリコリス。しかし攻撃を止めることはしなかった。



「さぁ、これで終演よ!!」



颯真へと向かう火竜は颯真の周りで円を描き、火災旋風となった後・・・上空から一気呵成に降りてきた。手を上に掲げた颯真にぶつかったと思えば、颯真を包みその炎は拡散した。

































「ソーマぁ!」



目の前で『煉獄の紅焔竜』の直撃を受けた颯真に、アスティロットはいてもたってもいられなくなる。周りですら、颯真の負けを確信していた。しかし・・・



「・・・大丈夫」



明香里だけは違った。ただ一人の兄を信じていたのだ。

































「・・・さぁ、私の勝ちね・・・」



終わった、とばかりに目の前の赤の奔流を見つめるリコリス。巡り巡る火竜は颯真のいた場所へ何度も降り注ぎ、傍から見れば颯真はすでに戦えないのではないか、と思われるほどだった。しかし。



「誰が負けたってんだ?」

「っ!?」



聞こえるはずもない颯真の声。その声が聞こえたことにリコリスは驚きを隠せないでいた。



(なんで!?間違いなく『煉獄の紅焔竜』の直撃を受けたはず!なのになんで!?)



リコリスが混乱しているその最中、さらに混乱を加速させる事が起きる。



「・・・『我、時代に移ろう颶風の贄なり。眼前に在りし己が力に浮かれ驕りし者に其の颶風を以て絶対為る恐怖を齎さん。我が眼前にその御身を具現せよ、古の颶風の王』」



リコリスが『災禍の炎剣』を呼ぶ時よりも遥かに長く古い文言。その文言を聞きリコリスはさらに混乱する。



(こ、この詠唱・・・まさか!嘘よ、そんなのありえない!なんでこんな所で伝説とされる剣の所有者が!?)



混乱がさらに混乱を呼び、リコリスはついに処理の限界を超えた。そして颯真は最終文言としてその名を告げた。



「顕現せよ・・・『颶風王剣ラファール』!!」



名を告げた刹那、今まで颯真を包んでいた火竜がすべて霧散した。ゆっくり消えるとか残滓が残るとかそういったものではなく、たった一瞬で完全に消え失せてしまったのだ。そして、颯真を中心とする暴力的な風。雷雨無き台風はリコリスはおろか、観客にも牙を向こうとしていた。



「あ、あんた・・・くぅっ、なんてもの持ってるのよ・・・!」

「・・・これは俺にもまだ完全に扱い切れる代物じゃねぇ。下手したらお前を殺してしまうかもしれねぇって思ってな・・・。だから最初から全力ってわけにはいかなかった」



飛ばされないよう必死に耐えるリコリスに対し、平然と立つ颯真。荒れ狂う風は、周りをすべて吹き飛ばさんとする勢いのある風だった。



「さっきお前は俺に最強の技を見せてやるって言ってたよな?だったら・・・俺のも見せてやるよ。ただし・・・」



颯真の二の句に、リコリスはぞっとする感覚を感じた。



「避けねぇと命の保証はねぇぞ」



ぞわり、と身を震わせるリコリスに対し、颯真は目の前で剣を振るい上げた。



「『最終強化ラスト・エンチャント』・・・でもって、ぇっ!」



剣に周りの風が凝縮していく。颯真の腕には纏わりつく風の分も相まって、かなりの重量を腕に感じていた。自らの力を最大限にまで強引に引き出す『最終強化』を使用してもなお、重さを感じる。それでも腕を上げるのが辛い。



非殺傷設定アンチキリングモードっつっても直撃は避ける、でもって火力はできる限り落とす!現在位置から右側に少しだけ向き直す、火力は精々当たっても服がちょっと切れる程度に!)

〈威力はそう変わらないだろうがな〉



ラファールの茶々も気にせず、調整を行おうと試みる颯真。時間のかかる大技となっているにも拘らず、リコリスは攻撃できずにいた。



(あ、あんな大技・・・当たったらいくら非殺傷設定と言っても大ケガじゃすまない・・・に、逃げなきゃ・・・!?)



とりあえず射線上から速やかに退避を、と思うリコリス。しかしそこで異変に気付いた。



(あ、足が!?な、なんで!?どうして!?)



避けないと命の保証がない、と言われるほどの大技。普通ならばそんなのありえないで済ませられるものなのに、目の前の少年が振るうのはそれもできてしまうほどの強大な剣。それに凝縮されていく先ほどの暴力的な風。無意識のうちにリコリスは恐怖を覚えていたのだ、足が竦むという形をもって。



「空裂破斬・・・これが・・・颶風の王の一撃だっ!!」



颯真がラファールを振り下ろしたその刹那、リコリスの真横を目に見えぬ風の刃が通り過ぎた。大きく加減したとはいえ、その強大過ぎる力は誰もいない観客席の前の壁をきれいに切断していた。



「・・・さ、降参サレンド、します・・・」



その一撃に力量差を思い知ったリコリスは、ぺたりと座り込んで降参の意を告げた。その瞬間、画面には立て続けに文字が並んだ。「BATTLE END」「WINNER 宮城颯真」と。だが、リコリス含め、全員がさらに唖然とする事態が起きた。



「・・・がっ・・・ぐぅっ・・・」



リコリス達の眼前で、颯真が唐突に膝をつき、そのまま倒れこんでしまったのだ。



(や、っぱ・・・『最終強化』と『空裂破斬』は・・・負荷が強えぇ・・・か・・・)



下着が見えてもお構いなしな感じで観客席の防御壁を飛び降り駆け寄る明香里と、少し遅れて飛び降り駆け寄るアスティロットを見て、颯真は意識を失った。

































(あの人・・・凄い・・・)



観客席の一席、女子生徒は担架で運ばれていく颯真を見ていた。彼女もまた、颯真とリコリスの試合を見ていた1人である。



(最後に放ったあの技、当たれば間違いなくベルスレットさんがケガをしていた・・・なのに振る直前に軌道を変えて当たらないようにして降参を促す結果にした・・・)



ちらりと割断された観客席の一部を見て、颯真の優しさを垣間見る。



(私・・・あの人に会いたい・・・会って話がしたい・・・)

































その金髪ブロンドヘアが映える女子生徒は、誰にも気づかれることなく観客席から離れ、颯真が運ばれていったであろう保健室へと向かった・・・が。

































「め、面会厳禁・・・」



個別治療室の前に表示された電光掲示に為す術がなかったのだった。

まずはひとつ、戦闘描写が稚拙で申し訳ないです。



たった一振りの刃でリコリスを降参させた颯真、次回は和解と颯真の過去が明らかに。




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