身内の来訪者2
【反骨者】ランバート=フランロッド
王様により選ばれた四番目の勇者で、【勇者】の称号と共に、国の有数の魔術師と鍛冶師が作り出した人工的な魔装
"肆儀筆頭の神突護槍"を所有する。
見た目は厳つく眼光を鋭く光らせ、茶色の髪を全てオールバックにしている。
ワイルドさを醸し出していると顎鬚を伸ばしているが、ただの不清潔なだけだ。
俺よりも慎重が十センチ高くて、武装された防具は、全て魔装となっている。
魔装と云うのは、魔力を循環させる事でその武器特有の能力を扱う事が出来る武器。
魔力次第で動くため、魔力が低い者は扱う事が難しいが、それを引き換えにしても、その威力は絶大だ。
俺の様に戦闘外の能力を開放させる魔装もあるが、通常の人間が扱うことはまず出来ない。
魔法と、魔装の違いは、威力、性能、持ち運びの三つに分かれる。
まず威力、これは魔法と魔装は対して差は無い、あるとすれば、魔装は元からその場に留まっているので使用魔力が削減されている。
次に性能、魔法には具現化系統と干渉系統の二つのみだが、魔装には、その制限が無い。
魔装には決められた能力と云う制限はあるものの、ダンジョンに潜り込めば、時たまドロップアイテムとして落ちるため、能力方面に関しては殆ど未知数である。
最後に持ち運びだが、これは圧倒的に魔法が良い、魔法は魔力から骨組みを構成させ、そこから干渉、具現化をする為に嵩張る必要は無い、対して魔装には、元から空の器が転がっているような状態なので、持ち運びをするのにとても不便になるのだ。
まあ、総合的に見てどちらが良いかといえば、紛れも無く魔装と云うものも多いだろう。
俺の場合は、両方を扱うが、可も無く不可も無い二つの魔術は、俺にとって使い勝手が良かったからだ。
「―――久々だな、ジーク、どうだ?元気にしてたか?」
久しぶりに出会う、叔父さんは変わらぬ表情で笑う。
槍の循環される魔力が遮断されると、四方に広がった矛先が、花の咲く前の如く一点に閉じる。
くるくると、槍を回してとん、と肩に担った。
「………どうしたんだよ、叔父さん、こんな所に来て」
おじさんは、先程まで怪物の集団だった場所によたよたと歩む。
「ん?別に、攻略出来てないってから、王様の"依頼"が来たんだよ、『序列四位と、序列九位は、速やかに十二層をクリアせよ』ってな」
両手を合わせ、頭を垂れる、ブツブツと何かを呟いて、叔父さんはこれで許せ、と言った。
後悔の念か、それとも無念の念か、どちらにせよ、俺も許しを乞うべきだったのだろうか。
しかし、俺はそれを口に出す事無く、叔父さんの話に耳を寄せる。
「―――序列九位は、何処にいるんだよ、叔父さん」
「勿論、アイツはエリアボスを倒しに行ったぜ? 別段、ここを通らなくても、端から行けば、入り口と対極してある出口に辿りつくからな」
あの勇者達を見殺しにしたのか?と云おうとして言葉が詰まる。
見殺しにしたのは、俺も同じだ、奴らを救ってくれたのは叔父さんだ、手を汚したのも、叔父さんだ。
俺は、見殺し云々を云う資格すらない、俺が出来ることは、救えなかった奴らの変わりに、生きる事だけだ。
―――でも、ごめん、救えなくて、助けられなくて。
「さぁって、んじゃあ一応、エリアボスにでも行って見るか?」
「………あぁ、行こう」
俺は、まだまだだと今知った。
あの時、一瞬、いや、数秒程、俺は意識を食われていた。
あんな光景、俺が目指す道なら、何度でも見ることだ。
気を引き締めろ、歯を食いしばれ。
これは教訓だ、もう一度こんな事が起こったとしても、もう絶対に、取り乱してはならない。
無常な死を糧に、前に、前に進むんだ。