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 外伝 聖獣の巫女と勇者1

何話か本筋を離れて外伝的な物をお送りします。

 リンディア王国南部最大の都市『エレオス』、別名を聖都。

 国教であるラディウス教の聖地であり本拠地とも言える『大神殿』を囲うように発展してきた。いや、未だに発展し続けている都市だ。


「しかし、凄いわね。あれ最後尾は3時間ぐらい待つんじゃない? USJの人気アトラクションか!って感じね」

「しかもこれが日常的だってんだろ? 毎日並ぶ敬虔な信者もいるんだってさ。気の短いアスカには絶対に無理だね」

「うるさいわよ。 まぁ、確かに無理でしょうけどね」

 アスカは苦笑いを浮かべ肯定しながらも、相棒コンの頬をムニーっと抓る。


 クロスロードでエレオス行きの護衛の仕事を請けたアスカが約半月の旅路を無事に終えたのが昨日の事だ。

 依頼の成功報酬は金貨15枚。

 しかし、それを参加したハンターの頭数で割るため、アスカの取り分は金貨1枚と大銀貨6枚の16000ギルになった。

 特に危険な戦闘もなかったし、食事も出た。半月の稼ぎとしては悪くはない。

 何より行こうと思っていた聖都エレオスに、路銀をかけることなくたどり着けた。良い事尽くめと言って良かった。


 ギルドで教わったお勧めの宿はシングルで一泊2000ギルと中々の高級宿だった。

 勿論、値段相応の立派な宿である。朝夕の二食が料金内に入っており、専用の食堂にてバイキング形式で食べ放題だ。 

 そして、広く清潔そうな室内、厚い壁と魔導錠と言われる特殊な鍵付きの頑丈そうな扉、セキュリティーもバッチリだ。

 荒事上等なハンターとはいえ年若き女性なのでセキュリティー万全な宿を勧めてくれたようだ。


「レイ君には感謝しないとね。こんな良い所いつもなら泊まれないもんね」

 アスカの言葉の通り、いつもであれば一泊5000~7000ギルの宿に泊まる事が多い。

 セキュリティーという面で言えば、九尾の狐コンという心強い護衛がいるので心配はない。

 しかし、それでもやはり良い宿の柔らかく暖かい布団と静かに眠れる個室というのは美容の為にも重要だ。


 護衛の報酬だけでは10日と持たない高級宿に決めたのはレイに貰った魔力結晶石が良い値段で売れたからだ。

 11個の魔力結晶石を60000ギルで買い取ってもらった。


「思ってたより高く売れて良かったぜ」

「1個あたり5500ギル。予想の倍近かったもんね」

 買取値は2000~3000ギルとみていたレイの予想を上回る買取だった。

 勿論、そこにはアスカの根気強い交渉という努力があってこその結果でもある。

 当初に言われた「1つ3500ギル」を、なんやかんやで最終的には2000ギルも上乗せさせた手腕は見事と言わざるを得ない。


「しかし、朝日の中で輝く大神殿はまさに荘厳?て感じよね」

「荘厳の意味が分かってる?」

 この宿の最大の売りが『大神殿が一望できる』だった。

 アスカには大して興味のない売りではあったが、確かにその眺めは一見の価値ありと思えてはいた。

 参拝のために大神殿前に並ぶ長蛇の列までがハッキリと見える。

 もしくは、敢えて見えやすい位置に並ばせているのかもしれない。

 神殿の持つ力・魅力を分かりやすく示す物だ。


「折角だから中を一回ぐらいは見ておきたいよね。3時間も並ぶのは嫌だけど」

「んー、それなら大丈夫じゃないかな。一般の参拝じゃなくて、有料の観光なら別みたいだし」

 そう言うとコンはテーブルの上に置かれた一枚の紙のとある部分を前足で指す。

 それは宿が用意した宿泊客用の大神殿の案内パンフレットのようだ。


「高っ!?」

 それを覗き込んだアスカが驚きの声を上げる。

 そこに書かれていたのは

『入場料:3000ギル(一般開放区画に限る)』

 決して安くはない金額だ。


「ヨシ! 別に良いよね大神殿なんか見に行かなくたって」

「まぁ、そうなると思ってたけどね」

「うんうん。ここでの目的はなんと言っても勇者の捜索なんだから」

「捜すまでもなく見つかったけどね」

「あとはどうやって接触するかね」


 聖都エレオスに来た最大の目的は、最近噂の『勇者』だ。

 その噂は『レッドドラゴンを単独で討伐した』『百人規模の盗賊を砦ごと壊滅させた』等のにわかには信じられない物ばかりだ。

 しかも、その噂のどれもがこの半年ほどの間の出来事だ。

 噂が真実なのだとすれば、とてつもない凄腕の筈だ。そんな人物の噂が最近になって突然出始めるというのは中々怪しい事態だ。

 過去の逸話が全く出回らないという事から『最近突然現れた』と勘ぐってしまう。


 つまり『転生者』ではないかと疑っているわけだ。


 そんな勇者についてギルドにて情報を集めてみようとしたところ、予想以上にボロボロと出てきた。

 名前はジークフリード。家名はどういうわけか誰も知らないらしい。

 現在は神殿に頼まれる形で協力者として主に魔物討伐に尽力しているらしい。

 『フォレストウルフ100匹切り』『15メード級サンドワーム一本釣り』などこれまた常軌を逸した噂を聞かされた。


「オイラはアイツ嫌いだな」

「まぁ、アナタの嫌いなイケメンだったもんね」

「そんなんじゃないやい」

 コンは不機嫌そうにそっぽを向く。


 ギルドから出たアスカとコンは大通りに集まる人だかりを見つけた。

 魔物の討伐に出ていた勇者ジークフリードとその仲間御一行の凱旋に沸く人だかりだった。

 その成果であろう飛竜らしき魔物が一行の後ろに荷車に載せられ連れられていた。

 人垣の向こう側だった為に一行の姿はよく見えなが、先頭で馬に乗っていた男が勇者なのだろう。

 パッと見た感じでは金髪の端正な顔付きだった。


「しかし、あの飛竜赤かったわね」

「変異種だな。きっと火を吹くタイプだぜアイツ」

 飛竜は竜=ドラゴンの亜種とされている魔物で、青黒い鱗を持ちその鋭い爪と牙で獲物を捕食する。

 一般的には飛竜が火を吹いたりする事は無いのだが、変異種と呼ばれる特殊な個体はその例に当てはまらない。

 空中から火を吹いてくる変異種は非常に厄介な相手であり、ハンターギルドに討伐の依頼が出せれれば大掛かりな討伐隊が編成される事となる。


「アレをあの人数で狩ってきたとなると、Sランク級かしらね」

「かもね。まぁ、周りの連中も神殿のパラディンに司祭かな? かなり高レベルみたいだし、勇者抜きでもいける面子だったんだろ。場合によっては勇者は何もしてないかもね」

「どういう事?」

「勇者の名を売りたいんだろ。本人がなのか、神殿がなのかは分からないけど」

 コンが勇者を気に入らないと言った理由は『狩った魔物を人目に晒す』事だ。

 本来そんな事をする必要はない。さらに言えば、あの状態で町まで帰ってきた訳ではないだろう。運搬の不便さを考えるのなら、誰かがアイテムボックスの中にでも入れていた筈だ。

 きっと町に入るところで飛竜を台車に乗せたのだろう。

 何の為に? 決まっている。成し遂げた偉業を人々に見せ付ける為にだ。

 『この偉業を称えよ』そう言っているのだ。


「どのみち、あの勇者が転生者かどうか接触してみないといけないのよね」

「フン、まぁね。でも、どうやって接触するのさ? 受付のお姉さんの話じゃあギルドにはほとんど顔を出さないって言うし、住まいは大神殿の中らしいし。町には現れるけど、いつになるか分からない」

 以前のようにギルドに依頼を出してもそれを勇者が見る事は無さそうだ。

 町で偶然出会うには確率が低すぎる。

 神殿に仲介して貰えるほどの伝手はない。


「勇者が魔物の討伐に出たところにコッソリ付いて行って接触するしかないかな」

「そのへんが現実的だな」

 アスカのため息交じりの言葉にコンも頷く。


「いっその事神殿の外壁にでも落書きしちゃおうか、日本語で。……意外と良い案じゃね?」

 冗談めかしたコンの提案。しかし、意外にその案は効果的なものに思えた。

 注目の集まる場所、多くの人目が集まる場所に日本語によるメッセージを残せば、効果はあるかもしれない。


 ただし、

「却下! 大神殿の外壁に落書きなんかしたら、下手したら死刑よ」

 流石にラディウス教の聖地である大神殿の外壁に書くというのは無謀だろう。


「まぁ、とりあえず朝食に行きましょう。その内なにか良い案も浮かぶでしょ」

「オウ! メシだメシ。昨日の炙り肉、美味かったよな。またあるかな?」


 現状でアスカとコンにとって大事なのは勇者と接触する事よりも、美味い食事にありつくことのようだった。

アスカ・スドウと相棒コンによるサイドストーリーです。


大まかな流れは決まっていますが、勇者のキャラに迷っております。

①引き篭もりの不登校中学生。力を得て俺様最強な中二病。

②漫画やゲームに憧れる高校生。理想の勇者であろうと熱演中な小心者。

③就活中のオッサン。神殿に力を利用されているだけの事なかれ主義者。


テンプレで行けば①か。②は化けそうで、③も意外と懐の深い大物感が。


というわけで参考意見お願いします。

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