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2 「スキル名【カードファイター】」

「「チートスキル!」」

 「イエーイ♪」とハイタッチを交わす2人。


「ただ、残念なお知らせが有ります」

「え?」

 突然真顔に戻ったマルクト。

 その変わり様に玲は驚く。


「私は、チート過ぎる能力はどうかと思います。

 RPGでオープニング直後のカンストとか、ダメージ無効とかは反対です。

 よって独断で、最強無敵系能力は却下いたします」

「え~と、え?」

 突然の決定事項の報告に玲の思考が停止する。


「だって、最初から最強とか面白くないじゃない?

 やっぱり、友情・努力・熱血が有っての勝利じゃない?

 困難に立ち向かってこそ勇者よ」

「何か有ったのか?」

「…以前の適合者がちょっとね」

 何かトラウマでも有るのだろうか、マルクトは深く溜息を吐く。


「さて、スキルを決めましょうか?」

 『チート』という単語が消えたのは敢えてなのだろうか?


「使い方次第では強力というユニークスキルを1つ。後はちょっとした補助能力を2つ。そんなところかな、どうしよう?」

「どう?て言われてもな」

「生前の趣味とか、特技とかは?」

「趣味? 最近はアパートと会社の往復ばかりだったからな~。

 学生の頃ならトレカ収集だったけど」

「トレカ?」

 聞きなれない単語にマルクトは首を傾げる。


「ああ、トレーディングカードな。

 様々なカードを集め、デッキを構築して戦うゲームさ。

 強いカードを揃えれば良いってもんじゃない。カードの相性を考えて、有効なアイテムカードなんかの補助カードをバランス良く配置しないと勝てないんだぜ。知的な戦術ゲームなんだぞ。

 まぁ、良いカードを引けるかどうかの運が大事だけどな」

 昔を思い出し、懐かしそうに話す。

 バイト代の大半を注ぎ込んでボックス買いをしたものだ。

 隕石のせいで全て無くなってしまったが、部屋の押入れには未だに大量に保管されていた。


「それで行こう!」

 突然目を輝かせたマルクト。


「スキル名【カードファイター】

 能力、カードを使って戦います」

「………。え~と、以上?」

「フフ、冗談冗談。ちょっと待っていて、考えるから」

 そう言うとマルクトは、なにか考え込むように唸っている。


「ヨシ!これで行こう」

 時間にして約30秒程か、悩んでいたマルクトが顔を上げる。


「それでは能力の概要を説明しましょう。異世界に行ってからのチュートリアルは無いので、そのつもりで。

 まずは、キミのスキル『カードファイター』はドローする事でカードを得られる。

 そして、そのカードを[使用]するか[装備]するかして戦います」


 説明によると。

 カードは[使用][装備][両用]の3つに分類される。

[使用]はカードを消費して、そこに書かれたアイテムを入手したり、能力を発動したりするらしい。カードは使い捨てになる。能力はその場限り(時間制限)。

[装備]はカードを専用のスロットに装備する事で書かれた能力や魔法の使用が可能になるらしい。効果は装備している間は持続する。ただスロットから外す際にカードは破棄される。

『両用』はどちらとしてでも使える。自身の判断で選べる。


 種類としては『アイテム』『魔法』『スキル』『基礎能力』『特殊能力』の5系統がある。

 『アイテム』カードは[使用]する事でアイテムが手に入る。『水』や『保存食』から『神宝具アーティファクト』まで様々用意されている。

 『魔法』『スキル』のカードは[使用]すれば一時的に使用可能になるか、規定回数だけ発動出来る。[装備]すれば修得したのと同じ効果が出る。


「あれ?だとしたら[装備]の方が断然良いんじゃないか?」

 説明を聞きながら玲は疑問を口にする。


「ん~、そうとは限らないね。例えば、これは『火球ファイヤーボール』のカード」

 ニヤリと笑ったマルクトは、そう言って虚空から1枚のカードを取り出した。

 そのカードには、飛んでいく火の玉の絵が描かれていた。


「このカードを[使用]すると一度だけ『火球ファイヤーボール』が撃てる。

 [装備]すれば『火球ファイヤーボール』が魔力の許す限り何度でも使えるようになる。

 一見すると、確かに[装備]の方が良いように見えるけど、実はそうとも言い切れない」

 そう言うとマルクトはもう一枚カードを出す。

 そのカードに描かれていたのは惑星に落ちる隕石のようだ。


「このカードは『隕石招来メテオストライク

 これも[装備]すれば修得したのと同じ事になる。だけど、多分ノアに行ってしばらくは使えない。理由は魔力が足りないから。

 修得しても使用する為の条件が揃っていなければ発動はしない。

 でも、カードを[使用]するならどんな状況でも一度は発動する」


 つまりは、身の丈に合わない能力は[装備]していても発動しないという事だ。

 だが、[使用]なら最低一度は発動出来る。

 下手に[装備]して無駄にするより、いざという時に[使用]するのが良い。まさに切り札という訳だ。


 ちなみにレアなカードには[使用]する事で能力を修得出来る物も在るらしい。


 『基礎能力』のカードはSTR(ストレングス)VIT(ヴァイタリティー)といったステータスの基礎能力値にボーナスを付けられる。

 やはり[使用]は時間制限付きで[装備]は装備中永続となる。


「この『基礎能力』系は[装備]するのがオススメだけど、装備スロットは限りがあるし、その辺はキミの感覚次第かな」

 マルクトはそう言って笑う。

 その辺りのバランス感覚こそがカードゲームでプレイヤーの個性を表す所だ。

 極振りするか、奇を衒さずにバランスを重視するか、予想ナナメ上を行くか。


 昔の血が騒ぐのを玲は感じていた。


「そして、この『特殊能力』というのは、……まぁ、これは実際に手に入るまでのお楽しみ。という事で」

「え~?なんだよ。気になるじゃないか」

「フフフ、じゃあチョットだけ。

 このユニークスキルの真骨頂その名は『神威カムイ』どんなカードかは手に入ってからのお楽しみ」

「ヌウォー!気になんじゃねぇか!」

 中途半端に教えられる方が余計に気になるもので、玲はまだ見ぬ『神威カムイ』に思いをはせていた。


 ドローにも【ノーマルドロー】【ダブルドロー】【トリプルドロー】の3種類がある。

 言葉の通りに引ける枚数が違う。

「ドローすると再度ドロー出来るようになるまで一定時間のクールタイムが発生するよ。クールタイムが残っている内のドローは出来ないから気を付けてね。あと、当然ながらクールタイムはドローの種類によって変わるから」

 

 カードには10段階のランクがあり、星の数で表されている。

 1~4星が(ノーマル)カード

 5~6星がNN(ダブルノーマル)カード

 7~8星が(レア)カード

 9星がSR(スーパーレア)カード

 10星がEX(エクストラ)カード


「まぁ、簡単にだけど、こんな所かな?何か聞きたい事は?」

「ランク毎の出現率は?」

「ん~、大体(ノーマル)カードが40%、NN(ダブルノーマル)カードが50%、(レア)カードが9%、SR(スーパーレア)カードが1%、EX(エクストラ)カードが0.05%かな」

「EXは2000分の1か、クールタイムはどの位だ?」

「ノーマルドローで30000秒の予定」

 玲は頭の中で素早く計算する。

(30000秒だと500分か、つまり8時間20分。だと取得出来るのは1日で3枚かな? だとすると333日で約1000枚、EXが手に入るまで2年近くかかるかもな)


「確率がちょっと厳しくないか?EXが手に入るまで大分時間がかかるぞ?」

「まぁ、イロイロ考えては有るよ。トリプルドロー時はアレがこうなるとか。

 とにかく後は実際にやりながら楽しみなよ」

 マルクトは「質問はここまで」と打ち切る。


「後は、補助スキルを決めようか。何か有る?」

「え~と、魔力無限とかは「ナシ!」…ですよね~」

 両手で大きな×を作るマルクト。


 どうやら本気で最強系のチートは認めないつもりの様だ。


「あ~、じゃあ、ノアではステータスの確認とかは出来るのか?」

「専用の魔道具が有った筈だよ。でもそれなりの大きさだから持ち歩く事は出来ないね」

「ほう!じゃあ、スキルの着脱とかは?」

「基本的には取得可能になったスキルがステータスに現れるから、修得したければ教えてくれる修行場に行くか、秘伝書みたいなスキル修得のアイテムを手に入れるか、だね」

「それで行こう!」

「ん?」

「ステータスの確認とスキルの着脱が可能な『ステータス確認・操作』みたいなスキル。オートマップもあると便利だな」

「ん~」

 玲の意見にマルクトは考え込む。


「ヨシ!ステータス確認とスキル着脱はOK、オートマップはダメ」

 オートマップ機能は元々そういうスキルが普通に有るので欲しければ修得しろとの事。

 結果、ついでに簡単なログを残す機能と簡易的なヘルプ機能が付いたステータス画面を脳内に映し出すスキルとなった。


「もう1つ、『カードファイター』にちなんで『カード化』なんてどうだ?

 カード化した物は腐敗や品質の劣化はしないとか、同じ物は一枚のカードの中にまとめられるとかの便利機能付きで」

 玲の提案にはある思惑があった。

 『カード化』の能力によって運搬コストの削減や鑑定能力の肩代わりを見込んでいる。


「フム、面白いかもね。うん!それで行こう。

 ただし、生物はカード化出来ない。死体ならOK。植物は根が抜けるか、木から切り離されるかしたらOK。他人の所有物はカード化出来ない。カード化・具現化するには対象物に触れていなければいけない。

 発動条件は、こんなところで良い?」

「ああ、それで行こう」

 玲の狙いは達成されそうだ。

だが、ノアにはそんな物より遥かに優れたアイテムボックスが、それなりに普及している事を彼はまだ知らない。


「あとは言語。まぁ、不思議なパワーで自動翻訳されるから、主要言語になっているヘルサニル語は問題なし、もし他の言語を修得したいなら、別途がんばって」

「ん。助かる」

 玲は「テンプレ乙」と心中で呟く。


「こんな所かな?」

「こんなもんだろ」

 欲を言えばもっとイロイロ欲しいのだが、それよりも早く異世界を楽しみたい玲は頷く。


「まぁ、能力のアップデートは後からでも出来るから、何か面白そうなものを思いついたら、バージョンアップするよ」


 そう言って笑うとマルクトは立ち上がり玲の下へと歩み寄る。

 同じように玲を立ち上がらせると、両手の間にソフトボール大の光の玉を生み出した。


「これが私の魂の一部。霊的質量で言えば何億分の1程度だけど、この中にさっきの能力とかを入れてある。これを今からキミに同化させる」


 光の玉は静かに玲の胸へと溶け込む。


「さぁ、これで準備は完了。あとは異世界ノアに行くだけ」

「そうか、いろいろとありがとう」

 玲はマルクトと握手を交わす。


 玲が足元から光の粒子へと変わっていく。


「そうそう。言い忘れたけど、気負う必要は無いよ。『勇者になろう』とか『英雄になろう』とか『世界を救おう』とかね。Take it easy! 気楽にノアを楽しむと良い」

「なにそれ?そんなのが必要な世界なの?」

 勇者や英雄が必要で誰かが救う必要がある様な世界。

 

 今更ながら「もしかしてヤバイいんじゃないか?」と玲は気付き始めた。

 だが、時すでに遅し。


 胸までを光の粒子に変え、玲の異世界転移はカウントダウンが終りかけていた。


「最後に1つだけ良いアドバイスをしておこうかな。

 最初のドローは【トリプルドロー】にすると吉!」


 その言葉が聞こえたかどうか、玲は全身を光の粒子に変え、弾けて消えた。


 玲の立っていた場所を慈しむような眼差しでマルクトは見詰めていた。





「今度の彼はどうなるかな?」

 玲を見送ったマルクトは突然背後から声が掛けられた。


「ダアト。何か用?」

「別に用と言うほどの事じゃないさ。

 ただ、ケセドやティファレトなんかも送り込んだみたいだし、マルクトの選んだ相手がどんなのか、興味が有って見に来ただけさ」

 音もなく現れた相手にマルクトは驚く事はなかった。


「そんなつもりで彼を送った訳じゃないわ」

「あれ?そう、じゃあマルクトは放っておくんだね、ケテルを。

 まぁ、思う様にしたら良いさ。後悔しないと良いね。以前のように」

「………」

 マルクトは再び音もなく消える相手を睨みつける。


「『最後の剣』か」

 その呟きを聞く者は誰も居なかった。

最後に意味深な展開がありましたが、当分関係無く話は進みます。

それどころか、そのままお蔵入りすら…。


次回から異世界ノアに。

そんなにいきなり活躍は出来ません。


温かく見守って下さい。


*カード化能力に発動条件追加

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