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14 「不安要素しかない!」

 港町ゼオレグを出発してから18日。

 2日目以降は特に大した問題もなく旅は無事に進んだ。


 もっとも、初日に災害指定ともなる魔獣ベヒーモスに出会った段階で、無事な旅路だったとは言えないのだが。


「あれが、クロスロード。自由を愛する者達の町だ」


 大きな馬車が余裕ですれ違う綺麗に舗装された石畳の向こうに巨大な城壁がそびえ立つ。

 遠目に見ても、ゼオレグの物よりも大きい事がよく分かる。


 クロスロードの成り立ちには様々な歴史的な経緯がある。

 元々はガリオスという名の王都リンドンと聖都エレオスの中間点として巡礼者達の為に作られた町であった。

 表向きの理由としてはだが。


 リンディア王国には2人の王がいる。

 1人は国王。もう1人が教皇。

 教皇は国教のラディウス教を司る神殿のトップだ。


 リンディア王国とラディウス教の繋がりは古く深い。

 そもそもがリンディア王国は、初代国王が神託により王と成った事で建国された国だ。

 その神託を下したのがラディウス教の最高神ラディウスだ。

 以降、歴代の王の即位には神の啓示がなければならない。とされてきた。

 結果、国王は神殿、とりわけそのトップである教皇には頭が上がらない。


 表向きは、教皇には神殿関係者を取りまとめる以外の力は無い。

 しかし、国民のほぼ全てが入信している(大半の者が形だけ)ラディウス教のトップを敵に回す事は出来ず、教皇から「この者を王とは認めない」と言われれば即位できず、場合によっては退位を迫られる事もある。(事実退位した王もいる)

 王座が空位になった際に教皇が国王代理を勤める事もあった。


 その為、歴代の国王と教皇は表向きは協力し合い、裏では熾烈な権力争いを繰り広げてきた。


 そしてそれは、クロスロード(当時はガリオス)を舞台にして行われる事でもあった。

 王都と聖都、その中間にあるこの町をどちらが支配下に置くかによって、両者の対立が深刻化し武力衝突に至った際の優位さが変わる。

 両陣営が共に資金を投じ、この町を強力な城塞都市へとしていった。


 そして、ついにその事態が起きた。


 教皇が国王に退位を迫り、国王がそれと突っ撥ねた。

 国王軍と教皇軍が対峙する事態となり、クロスロードにも両陣営より強力要請があった。


 どちらの陣営に属するか議論の末に当時の領主は、どちらにも属さない事を決定した。

 逆に両陣営を脅迫するかの如く「独立自治都市と認めないなら、相手陣営に付く」と宣言した。

 国王軍、教皇軍共に「敵に付かれるよりは良い」と独立自治都市として認めた。

 以降、クロスロードは独立自治都市として在り続けている。


 どこの勢力にも属さない事で、しがらみを嫌う自由人達の集まる町となった。

 その結果として『自由都市クロスロード』と呼ばれる事となった。




「クロスロードのハンターギルドは国内でも最大級だ。迷宮も近くに在るし、主要街道の要所だから往来する商人も多い。仕事には事欠かないさ」

「ま、その前に慣れないといけないけどね」

「分かってます。今のままだと日常生活も困りますしね」


 レイは今、深刻な問題を抱えていた。

 その為、旅路の前半のほとんどを荷台で寝て過ごす事となった。

 それは、神威カムイでベヒーモスを倒した副作用と言えた。


「まさか『急激なレベルアップは危険』てのがそういう意味だったとはな」

 クロードの言う通り、古くから言われている事なのだが、真の意味を体験する者は少ない。

 それは、急激なレベルアップによる体の変化についていけず、上手く動けなくなってしまうのだ。


 高位の魔物であるベヒーモスを倒した事でレイはレベルを40も跳ね上げた。

 筋力が何倍にもなり、立ち上がるつもりで飛び上がり、歩くつもりで飛び跳ねてしまう。

 対処法は慣れる以外は無い。自分の体の微調整をその体で覚えるしかない。


 クロードの説明によれば、レベルアップというのは細胞の進化を指すのだそうだ。

 ノアでは大気中にマナと呼ばれる物があり、それを呼吸で体内に取り込み魔力へと変換している。

 それは魔物も同じで、その魔物などを倒すと体内の魔力が魔素と呼ばれる物になり体外に放出される。その魔素を浴びると体はそれを取り込み、一定量蓄えると細胞が進化するのだという事らしい。



「クロスロードに着いたら早速ギルドでレベルの測定して貰わないとな」

 普通は専用の魔導器を用いなければ測定できない為、ハンターはギルド支部等で測定して貰うのが一般的だ。

 しかし、レイは自身の特殊能力により魔導器による測定よりも詳細な値を既に知っていた。

 

====================

レイ・カトー  Lv:52

年齢:18歳  性別:男 

職業:ハンター   称号:異世界人


【HP】 579/579

【MP】 281/281


【STR 】216(206+10)

【 VIT 】207(202+5)

【DEX 】196

【 AGI 】199

【 INT 】176

【MND】193

【LUK 】 47


スキル     【スキルポイント 142】

カードファイター:Lv1(ユニークスキル)

初級剣術:Lv5

初級薬剤錬金術:Lv1

バインダー:Lv1

====================


 他人の数値を見れないレイには今の自分の値の高低は分からないが、自分の体が別物に感じるほど強くなっているという実感はあった。

 後は大分余っているスキルポイントをどうするかだ。


「まぁ、焦る事はないさ、ゆっくり行けば良いよ」

「俺達も5日ぐらいは留まるから、その間に知り合いも紹介してやるよ。存分に使え」

「えっと、レオルード・ベオクレスさんでしたっけ?」

 これまでの道中で聞いたクロード達の元パーティメンバー。

 ちょうどクロスロードで活躍中らしく、レイの面倒を見てもらうようお願いしてくれるらしい。


「噂では、クロスロードでもトップクラスのハンターに成ってるらしいぞ」

「へぇー、あのレオがねぇ」

「え?そんな反応の相手なんですか?」

 まるで信用出来なさそうな反応のマリーに不安が生じる。


「いや、腕は確かだよ。クローが現役の当時で既にパーティでも最強だったからね」

「確かに剣の腕だけなら、アイツ以上の奴は中々いないな。問題は頭が残念な事だな」

「頭が…残念?」

 リックのフォローをクロードが台無しにする。


「気の良い奴だし、人柄も明るいし、それに…」

「諦めなリック。無理だから」

「一度会えば分かる事だしな」

「………」

「諦めないで!がんばってよ!主に俺の安心感の為に!」


 新たな不安に包まれながらレイは新しい町の門をくぐるのだった。


「大丈夫だよレイ。それでも私達は生き抜けたんだから」

「そうだぞ。ちょっと頭が弱くて、お調子者で、空気が読めなくて、格好付けたがり屋なだけだ。良い奴だぞ」

「不安要素しかない!」

次回よりクロスロードでの活躍が始まります。


マリー、リック、クロードのステータスは以下な感じです。

====================

マリアンヌ・シモンズ  Lv:114

年齢:28歳     性別:女 

職業:ハンター   称号:大穴狙いのギャンブラー


【HP】 1415/1415

【MP】  442/442


【STR 】551

【 VIT 】543

【DEX 】429

【 AGI 】436

【 INT 】342

【MND】363

【LUK 】35

====================

====================

リッケンバウム・エイレンス  Lv:106

年齢:27歳     性別:男 

職業:ハンター   称号:家柄を捨てた者

【HP】 1189/1189

【MP】  586/586


【STR 】325

【 VIT 】381

【DEX 】444

【 AGI 】382

【 INT 】488

【MND】437

【LUK 】68

====================

====================

クロード・ギンガム  Lv:152

年齢:35歳     性別:男 

職業:商人     称号:見届けた者


【HP】 1781/1781

【MP】  760/760


【STR 】393

【 VIT 】489

【DEX 】773

【 AGI 】245

【 INT 】509

【MND】456

【LUK 】66

====================

 クロードは片足不随のペナルティー込みです。


 いろいろ突っ込み所も有るでしょうが、未来への伏線という事で。

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