表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fade  作者: 蒼瀬尊
6/9

5、立斗と黒斗

 長い会議が終わった。

 ダークについて以外は大した内容じゃなかったので議題が多くて長かったが理音と影乃の二人とも、そこまで疲れは感じられなかった。




「さぁて、帰るか」


「奢るからご飯行きたい。お腹すいた」


「行くけど…部下に奢らす程、私、ケチじゃないよ」


「理音」


「あ、立斗」




 帰ろうと言っていた二人に立斗が話しかける。その後ろにはやる気のなさそうな黒斗。彼は立斗以外の命令を聞かず、かなりの問題児として扱われている。




「単刀直入に聞くが…お前、何を隠している?」




 ズバっと擬音が聞こえる程ストレートに聞いてきた。何かを隠していうというのはもしかしたら立斗の思い違いかもしれないのに。そんな姿に黒斗はブハッと吹き理音は苦笑する。




「…確かに隠してるけどさぁ…もしもの時のために何か隠していないか?って聞いた方がよくない?間違ってたら恥ずかしいから」


「あはは、確かに!リュウはストレートすぎるからね」


「お前らうるさいな…」




 影乃はこの二人の存在はもちろん知っていたが、話した事は今まで一度もない。この二人はアドックの中では手の届かないような存在に感じていた。




「キミは…噂の影乃クン?」


「そうだけど…噂って?」


「理音がキミの事をよく話すからね」


「黒斗、余計な事言わない」


「…何話してるの?俺の愚痴…?」


「ちーがう!で、立斗の質問だけど…」




 軽く黒斗をにらみつけて、(メロディー)が掴んだ情報を立斗に教える。情報は何にも勝る宝と言われる程貴重な物。それを無償で教えるという事はこの二人の事をかなり信頼しているという事だろう。




「なる程…」


「メロちゃんが掴んだ情報なら多分、間違えないんだろうね。リュウ的にはどう思う?」


「俺も、その情報は間違いないと思うが…確かに、あの場で言うにはふさわしくない発言ではあるな」


「まあねェ。でも、メリットもあった」


「……シャインの人達に図書館に行くのを控えさせるって事?」


「そう。キミ、頭いいんだ」




 からかいながら言うと立斗が黒斗の頭を軽く殴る。軽く、のはずだがかなり音がした。痛そう、そう思い影乃は自分の頭を反射的に押さえる。




「一応、それも考えたけど…もし嘘だったら図書館に行かなくなってしまうってデメリットもあるし…あそこはシャインの書類も秘蔵してるからデメリットの方が大きくない?」




 それに、図書館でないと手に入らない情報もたくさんあるだろう。それを潰す様なマネはしたくないし、それが最善とは言い難い。だからと言ってその情報を知りながらも図書館に行けば自然と挙動不審になりもし、本当にダークが居た場合やっかいな事になりかねない。だから言わない方が良いと判断した。




「あ、そっか」


「微妙な所だな…だが兵器の件については知っておいて損はないし、言って正解だったろう」


「…俺としては、どっちも言って良かったと思うけど」


「へェ、どうしてだい?」




 やけに突っかかる黒斗に少し不信感を抱きながら、説明する。

 もし、その情報が本当なら今のうちにダークの手に渡ったら危ない書物を移動させておいた方がいいだろう。書類などは結界を施した地下倉庫に眠っているが結界を張れる者が居れば解く者もいる。危ないのは確かだ。




「…いや、大丈夫だろう」


「なんで?」


「あそこにある書類は見られないに越した事はないが、見られて困る物は少ない。そういう物は上層部の深い所に保管してあるし…変に行動して警戒されるよりはいいはずだ」


「ふーん…」


「まあでも、確かに見られたらダメな物もあるし、念のため上層部に相談するってのもアリかも」




 よくわからない。さっきは突っかかってきたのに今は肩を持つ様な態度をとる黒斗。先ほどまではライバル意識みたいな物が見え隠れしていだが今は感じない。影乃の言葉でライバル心が消えたのか、それとも試していたか。




「まあ、後者だろうけど」


「何か言った?」


「別に…」


「そ?で、どうしよっか。相談するの?」




 黒斗の言葉に少し考えた後、理音は首を横にふりながら答えた。




「…もう少し情報を掴んでからにする」


「ああ、それが賢明だろう」




 丁度話がひと段落ついた所で、理音の携帯の着信音が鳴り響いた。シンセサイザーをメインとした、機械チックだが落ち着いた曲。この着メロはある人物専用にしてある。




「勇魚?」


『…こんばんわ、リーダー』


「ばんわ。どうしたの?」




 電話の相手は茉理勇魚(まつりいさな)。特殊部隊第五小隊の隊員で理音の直属部下。先ほど異空間でやった会議に出席していなかったのは彼女が理音達と同じ瀬戸高校に入っていないから。しかも彼女はまだ中学生(1年)で、しかも隣街に住んでいるから時間が合わなかった。




『カナデ先輩からダークの事聞きました。で、あたしが調べた情報なんですけど…ダークの一人が瀬戸高校の近くにいるっぽいです』


「え」


「何?どうしたの、理音」


「それ、本当?」




 後輩からの爆弾発言で影乃の言葉など耳に入る余裕がなかった。立斗も黒斗も、何かあったと悟り先ほどとは比べものにならないほど真剣な空気を漂わせていた。




『はい。情報源は…リーダーにも言えないんですが…間違い無いらしいです』


「…そ。わかった、また何かわかったら連絡して」


『了解です』




 電話を切り、ため息をつく。瀬戸高校にシャインが居るのは有名な話だから監視のためダークの一人や二人、居てもおかしくはないがそれでも、驚きが隠せなかった。




「理音?」


「瀬戸高校の近くにダークが居るらしいよ」


「え…」


「ふうん…もしかしたら襲撃されるかも、ね?」


「クロ、縁起でもない事を言うな」




 またゴツン、と頭を殴りながら黒斗を注意する。その行為に少し痛そうな顔をしたがその顔はすぐに黒い笑みを浮かべた。




「ふふ、でも…キミが"縁起でもない"なんて言うなんて…珍しいね?リュウも思ってるって事でしょ?」




 にやり、と笑みを浮かべる黒斗は冗談半分、本気半分と言った所だろうがこの笑みを見ると冗談というか茶化しにしか見えない。というか、影乃には優しそうな(と言ってもやる気なしな表情だが)顔をしている黒斗がこんな風に悪意を満ちた表情をするとは予想できず、思わず顔が引きつる。




「(こわっ…)」


「思ってない事はない、だが瀬戸高校に通っている本人達の前でいう事はないだろう…」


「いいじゃんか。…あ、そろそろ帰らないと。第一小隊は第五と比べて隊員の数が多いからね。今日の会議内容を報告する時間が大変だよ」


「…それはどう取ればいいの?嫌味?それとも僻み?てか二人しか違わないし」


「愚痴。さ、帰るよ。リュウ。」


「命令するな…」




 そうして風の様に消えて行った二人に影乃はぽかーんとし、理音はため息をついていた。

立斗はツンデレ系黒斗はヤンデレ系です。勇魚はしばらくは電話とかでしか出ない予定。ちなみにこの子もツンデレ系です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ