4、無理矢理つれていかれた定例会議
「はぁ…」
「影乃ぉ、ため息ばっかだと幸せ逃げるよ?」
「誰のせいだよ、たく…」
馬鹿でかい議事堂。アドック用に建てられたこの議事堂はダークの奇襲から守るための特殊加工をされている。
特殊加工というのはこの議事堂の中では特殊能力が使えないというモノ。そのためアドックからしたら馴れていない者は体調を崩してしまう程空気、というか居心地が悪い。よくこの居心地の悪さで暮らせるな、と影乃はここに来るたびに思う。
「別に、あたしの後ろに立ってるだけでいいから」
「立つのが面倒なんだよ…」
「あ、そ。じゃあもれなく発言権もついてくるケド…座る?」
「嫌」
座席に座れるのは発言権を持った者だけ。付き添いは後ろに立って控えているのが規則。その上会議は少なくとも1時間以上はあるので終わるまでずっと立っていなければならない。
インドア派で体力がない影乃とはいえ、アドックの身体能力を考えると最低でも5時間は立っていれるが疲れるのは疲れるし空気が悪いし、とにかく最悪だった。
「ってもう時間ないし…早くいこ」
★
重苦しい空気。会議室は部屋に入るだけで冷や汗が流れる程の圧力と重苦しい雰囲気が漂っていた。
「影、大丈夫?」
「ん…これくらいなら平気…」
長い事定例会議に出席していなかったせいで忘れていた。この重くて気持ち悪い空気を。
「では、失礼します……あっ」
受付からこの会議室まで案内する係の人が入ってきた。まだ20代前半の若い、一般人の女性だ。彼女はこの圧力に負けてフラリと後ろに倒れる。それを支えたのはアドックの特殊部隊第一小隊の小隊長、立斗だ。ちなみに理音は第五小隊の小隊長で影乃は第五小隊の隊員。
「大丈夫か?」
「はい、すみません…」
「立てるか?」
「はい、なんとか…」
「歩けるならこのまま医務室に行け」
「ありがとう、ございます…」
この様なやりとりは別に珍しくない。案内役には基本的に一般の受付嬢を使うので、貧血などを起こしやすい女性は得に倒れやすい。
「……よし、時間だ。これより、定例会議を始める」
定例会議の議長の合図で始まった定例会議。多少のもめ事はあったが順調に進んでいき、4つ目の議題、ダークの動きについてになった。
「では、先週行われた定例会議の報告であったダークの動きについてだが…これについて、発言したい者は」
「特殊部隊第一小隊小隊長、立斗より申し上げます」
「…申せ」
「我々が掴んだ情報によるとダークは日本のどこかに拠点を建てている模様です」
立斗の発言にざわめきが起こる。同様に、理音も影乃も驚いた。だが、二人は他よりすぐに冷静を取り戻した。奏は能力の関係上日本国内の事しか知ることができない。それを思い出せば、彼女の情報は国内で調査した事になる。日本に王立図書館はないため国内で話していた情報を耳に挟んだのだろう。
「ふむ…他には?」
「理音、言わないでいいのか?」
「うーん…言う、かぁ…」
ダークが国内に拠点を建ててるという事は奏の情報が本当の可能性が高くなる。あまり混乱させたくないので言うのは気が進まないが言わなければならないだろう。
「特殊部隊第五小隊小隊長、香津理音から申し上げます」
「…申せ」
「は。我々の情報によるとダークは何か兵器を作っている模様です。この情報はまだ不特定要素を含んでいるため、確実とは言えませんが…」
「兵器?」
「どのような物かはまだ存じ上げません」
「そうか…」
理音の発言が終わると、影乃が小声でおい!と話しかける。
「ん?」
「なんで図書館にダークの姿があるって事言わないんだよ」
「アレは兵器の事よりも信憑性が低いから。この場で言う事じゃない」
とは言っても、言った方がいいと思ったが。
兵器の事はほぼ間違いないだろう。数年前理音自信が小耳に挟んだ話に、ダークが何か兵器を作っているという話があった。それを思い出し、兵器の事は発言した。
「でも…」
「いいから。もし嘘だったら混乱するだけでしょ」
そんな二人の様子を、第一小隊の立斗が見ていた。
「……」
「ふふ、気になる?リュウ」
「まあ、な」
そんな立斗に、付き添い人である黒斗が話しかける。真面目そうな雰囲気な立斗に、少し不真面目な雰囲気がある黒斗。仲が悪そうに見えるがこの二人はアドックで有名なペアだ。この二人の手にかかればどんな強敵も倒せる、と。
「理音…何か隠してるよね」
「ああ、恐らくそうだろうな」
「会議が終わった後にでも話しかけてみる?」
「…そうしよう」
新キャラ、立斗と黒斗。この二人は結構主要キャラの位置にいます。ちなみに二人とも「斗」がつくのは仕様です。
頼斗は忘れてたけど…