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3、私の設定年齢が全てを物語っています。

’こんにちは’

 こんにちは、いらっしゃいませ。

’あなた、キィさん?’

 はい、初めまして。私はキィです。コウさんに作ってもらった、人形です。

’……人形? あなたが??’

 はい。

’……信じられない。コウのやつ、なんてもの作ったのかしら’

 あの、ヴィスコンティさんですよね?

’え、ええ。そうよ。自己紹介が遅れてごめんなさいね。私はヴィオレッタ・ヴィスコンティ。ヴィス、と読んで頂戴’

 かしこまりました、ヴィスさん。あの、ところでディエンテッタさんは? ご一緒ではなかったのですか?

”もぎぃー! むぎゅー!”

’あ、バッグに押し込んだままだったわ。ごめんなさいね、ディエ?’

”ごめんですむかーっ! もうちょっとで窒息するところだったじゃないかぁーっ!”

’生きてるんだから文句言わないの。ほら、このちびっこいのがディエンテッタよ’

”こんにちは! きぃちゃん”

 こんにちは、ディエンテッタさん。驚きました、ずいぶん小さいんですね? 私の手のひらに乗せられそうです。

”うん。まだ試験管から出て、二ヶ月しかたってないからね。あと何年かしたら、ヴィスと同じくらいバインボインになるんだっ!”

 試験管……ディエンテッタさんは人工生命体だったのですか。

’あら、知らないで話をしていたの?’

 はい。ディエンテッタさんの方から突然メールが来まして、お話しましょうということになったんです。

”んとね、ヴィスんとこの端末に入ってたメールアドレスに、手当たり次第にメールをだしたんだ。おともだちになろ、って。お返事あったのはきぃちゃんからだけだったけど”

’私のとこからそんなメールが来たら……。みんな冗談と思ってくれたのならいいのだけれど’

 私も最初は何事かと思いました。メールを開いたら、突然メインフレームに侵入しようとしてきたものですから。

’……ちょっと、ディエ?’

”え。ほら、送った先を乗っ取ってさ、そこのメールアドレスを元にまた次に送ってもらうようにすれば、最初に一回お手紙出すだけですんごくいっぱいの人にお手紙とどくじゃない?”

’……ディー。あとで地獄みせてあげる’

 あ、ウイルスなら全部つぶしておきましたから大丈夫です。こちらから逆にそちらへ乗っ取り仕掛けまして、他の方の所に送られたメールは開かれる前に私の方で破棄しておきました。

 幸い私が一番最初にメールを開いたようでしたから、実害は無かったようですし、問題はないんじゃないでしょうか?

’ありがとう、キィちゃん。でもあとでちゃんと全部の宛先に確認しとかないといけないわ……ね’

 あの、立ち話もなんですから、中へどうぞ。

’そうね、お邪魔するわ’

 どうぞ。今、コウさんを呼んで来ます。






「よう、久しぶりだな」

’ええ、三年ぶりだったかしら’

「大学を出てから会ってなかったろ。そのくらいにはなるな」

’ま、挨拶はこのくらいにしときましょう。この子がなんだか、うずうずしているみたいだから’

「……ホムンクルスか? そのちびっこいのは」

”えーっと、コウさんこんにちは、初めまして。ディエンテッタです”

 私のお友達です。

「なるほど、ヴィスが母親ってのはそういうことだったか」

’あら、まさか私の実の子供とでも思っていたのかしら?’

「助手代わりに養子でも取ったのかと思ってたんだが」

’私は何でも一人でやるって、知ってるでしょう?’

「ああ、よく覚えてる」

’でもまぁ、私もキィちゃんのことをあなたの恋人か何かだと思ってたから、お相子かしらね’

「……まさかそれでいきなり訪ねて来たんじゃないだろうな?」

’コウと付き合おうだなんて、そんな物好きな女に直に会ってみたいと思ったことは否定しないわよ?’

 あの、私はコウさんの作った人形であって、恋人ではありません。

’直に会うまでは自動人形だなんて思いもしなかったわよ? いえ、この目で見ても信じがたいくらいなのだけれど’

「こいつの外見には気を使ったからな。端末の画面で見てたのなら、分からなくても無理はないだろ」

’最初はコウの所にメイド姿の女の子がいるなんて信じられなかったから、何か犯罪でも犯したのかと思ったわ’

「失礼なやつだな。まずは俺が人を雇ったとか、そっちを疑えよ」

’ふふ、ごめんなさい’

”ねえねえ、ヴィスばっかり話してないで、わたしにもコウさんとお話させてよー!”

「ああ、ほっといて悪かったな。なんだい、ちっちゃいお嬢さん」

”コウさん、ちっちゃい女の子に興味はある?”

「んー、それは難しい質問だな。だが、好きになるのに年齢は関係ないと思うぞ?」

 私の設定年齢が全てを物語っています。今更もっともらしいことを言っても、コウさんの性癖はバレバレです。

”そういえば、きぃちゃんって、ぼん、ぎゅ、ばーんって感じじゃないよね”

 擬音で言うなら、ぺちょ、きゅ、つるん、というところでしょうか。

 なんか、萌え萌えじゃなきゃだめだってこの外見になったらしいです。

「ロリコンで悪かったな!」

 悪くはありませんが、犯罪にだけは走らないでください。恥ずかしいですから。

「なあ、俺って、そんなにヤバ気にみえるか……?」

 私のような、実物大の人形をこそこそ作ってる時点でアウトだと思います。この辺で何かそういう事件が起こったら、警察は真っ先にここに来るんじゃないでしょうか。

「……あはははは。笑えないぞー、それ」

 今、笑いましたよね。

”……なんか、きぃちゃんとコウさんっていいコンビだね”

「……漫才でもやるか?」

 内輪ネタじゃお客が喜びません。

「俺だっておまえにコケにされてばかりじゃ面白くないしな」

 コンビ解散ですね。

「おう、解散だ。これからは独立して俺一人でやっていくぞ」

 出来るものならやってみてください。むさい男一人でやっていけるほど、この業界甘くはありませんよ。

「むむ。ではコンビ再結成といくか」

 リーダーは私ですよ?

”いったいどこの業界なのさ! あのー、ノリだけの会話はそろそろやめて欲しいな。わたし、ついてけないよぅ”

’ディエ、こんなおバカな会話についてく必要なんか無いわよ?’

 ナイスつっこみです。

「これは三人でトリオを組むしかないな」

”わたしは入れてくれないのー?”

「むぅ、それじゃカルテットにしよう」

 かわいいキィちゃんとそのおまけカルテット結成です。

”わーい”

’いーかげんにしなさいっ!’

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