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65534、「久しぶりだね、きぃちゃん」

書きなぐりです。多分そのうち推敲します。

2012/07/29 少々修正しました。

「……わたしは自動人形です。そう認識しています。そのわたしが先祖かもしれない、とは、どういう意味なのでしょうか?」

「言葉通りさ。君は、いや君達は、KEY型の自動人形だろう? 子孫を残せるのに何が不思議なんだい?」

 わたしの問いに、コウは不思議そうに答えた。

「確かに、知識として、自動人形であるわたしにも子孫を残す機能があることは知ってはいますが……。わたしには子供を産んだ記憶はありません」

 何度か瞬きをして目の前の青年を見つめなおす。それから、その後ろのわたしと同じ名前の少女を見つめる。

「あなたたちは、自動人形ではないですよね。それに、わたしの認識ではわたしと同型の自動人形はまだ存在していないはずですが」

 少女の胸からはわたしと同じ音が聞こえていたが、わたしは彼女がわたしとは違うものだと認識していた。おそらく、純粋な人間ではなく、また純粋な自動人形というわけでもないのだろう。そして、目の前の青年からは違う胸の音が聞こえている。こちらはおそらく、純粋な人間に近いのではないかと思われた。

「……驚いたな。まさか、オリジナルなのか?」

「よくわかりません。説明を要求してもよろしいでしょうか?」

「……」

「……」

 無言でコウと、わたしと同じ名前の少女が顔を見合わせた。

「兄さん、あたしから」

 そう言ってコウの後ろから少女が前に出た。

「同じ名前じゃ不便だし、うちは代々同じ名前の人間が多いから、家族内では愛称みたいなものがあるの。あたしの名前は漢字で書くと希望の希の字に衣って書いて希衣キイだから、親しい人には最初のの字からノゾミって呼ばれてるの。あたしのことは、ノゾミって呼んでね」

「了解しました。ノゾミさん」

「……まず、あなたにとってはたぶん、とてもつらい事実になると思うんだけど……」

 ノゾミはそう言って、わたしの手を取った。そのまま口をいったんつぐむ。

 了承を求められているのだと感じたわたしは、小さくうなずいた。

「お願いします」

「あなたは、あなた達は、八百年ほど前の遺跡からあたしが発掘しました。あなたがどういう経緯でそこに埋められていたのかはわかりません。きちんと棺に納められて、埋葬されていました」

「八百年……?」

 何を言われたのか理解するのに、少し時間がかかった。

「落ち着いて、ね?」

 手をそっと両手で握られて、我に返った。

「遠いご先祖様が、今の世の自動人形の祖を発明したと伝わっています。まだ記憶が混乱してるみたいだけど、あなたはおそらくその時代か、近い時代に生きていた自動人形なんだと思います」

「……」

 よく思い出せない。

「兄とあたしは先祖に自動人形が居るので、純粋な人間とは言えないかもしれませんが、今の世の中ではそれほど珍しいことではないです。むしろ完全に純粋な人間の方が少ないかもしれません。いろいろあって、普通の人間には生き難い世の中になっていますから」

「何が、あったのですか?」

 わたしの問いに、ノゾミは口をつぐんでコウの方を向いた。

「……人類は、バカやって滅んだのさ。アレのおかげで色々な問題が発生したとはいえ、結局の所戦争を起こして全部を灰にしたのは人間自体の愚かさだ!」

 コウは吐き捨てるように言って、それから「すまない」とわたしに向かって頭を下げた。

「声を荒げてすまなかった」

「いえ」

「具体的に語っても気が滅入るだけだから詳しくは語らないけどね。そういうわけで今の世の中には人類はほとんどいない。地球の支配者は、アレになってしまった。生き残っているのは自動人形と、自動人形の血を受け継いだヤツくらいだろう」

「そう、なのですか」

「戦争で壊れてしまった自動人形も大勢居る。人間は死んでしまったらもう生き返らないけれど、自動人形なら直る可能性がある。だから僕とノゾミは、暇さえあれば壊れた自動人形を修復する作業を続けている」

「そう、なのですか……」

「起きたばかりの所に、暗い話ばかり聞かせてしまってすまない」

「いえ」

 八百年、ですか。

 人類が滅びかけているというのもかなり衝撃的な話だった。それに。……それに、なんだろう。わたしはまだ、とても大切なことを思い出せていない気がする。

「いくつか質問があります。よろしいでしょうか?」

「なんだい?」

「まず、わたしの認識ではわたしと同型の自動人形は人間と交配可能ではありません。あなた方が自動人形の血を引いているとはどういうことなのでしょうか?」

「今話している4番目の君。その身体は少々構造が違うもののKEY型で間違いない。その身体は人間と交配可能だよ。つまり、こうして会話している君の意識そのものは、4番目の君の物ではない、ということになるね?」

 コウはそういってわたしの腕の中のわたしの首を指差した。

「A、B、C、Dの四つの自動人形の中でその機能が無いのはAだけだ。つまり、君の意識はその壊れたAのものだと推測できる」

 わたしは、わたしの腕の中のわたしの首をじっと見つめた。

「……そうかもしれません。ここにいるいくつものわたしのうち、このわたしの顔が一番、わたしの記憶の中にある”私”の顔に近いと思います」

 ベッドの上にいるわたしの左手で、ベッドの上にいるわたしの頬に触れる。

「鏡のようなものはないでしょうか」

「ちょっと待ってて、今もってくるね」

 ノゾミがぱたぱたと駆け足でわたしの中から出て行き、すぐに戻ってきた。

 差し出された小さな手鏡に映るベッドの上のわたしの顔は。

「……ヴィス、さん?」

 正確には思い出せなかったが、口から思わずもれたその言葉は、誰かの友人の名前だったように思われた。

 誰かって、誰なのでしょうか。

 ふいに浮かんだその疑問は、はっきりと意識する前に泡のように消えてしまった。

「……ヴィスっていうのは、まさかヴィオレッタ・ヴィスコンティ博士のことじゃないだろうね?」

 コウが無表情に言った。

「そうか、君の顔はどことなくアレに似ていると思っていたけれど。そうか、やっぱりそうなんだな……」

「先ほどから何度か話に出てきますが、そのアレ、というのは何を指す言葉なのですか? それに、ヴィスさんの名前は八百年後にも伝わっているほど有名なのでしょうか」

 首をかしげると、コウが不機嫌そうに顔をしかめた。

「その昔、三億年以上前からこの地球上に生息していたという、黒い昆虫がいたのを知っているかい? 今現在はアレに駆逐されてほぼ絶滅しているけれど」

「ゴキブリ、のことでしょうか?」

「そう、それだ。昔はその昆虫のことを黒いのが出たとか、Gが出たなんて言ったそうじゃないか。アレ、と僕達が呼んでいるのはそのゴキブリのようにどこにでも現れ、しぶとい生命力をもち、ものすごい勢いで増殖する生き物のことさ。通称は……ディ。おそらくデーモンとかデヴィルだとか、そういうものの略称なんだろうけれど正式な名称はわからない」

「あなたは、最初にわたしのことをディーと呼ぼうとしていませんでしたか。それは、少しひどいのではないでしょうか。ゴキブリって呼ばれるようなものですよね」

「すまない、いや、だってなんか似てるからさ、君」

 苦笑いでコウはごまかした。

「その悪魔のような生物を作ったのがヴィオレッタ博士なのさ。なんでも食い、何とでも繁殖し、凄まじい勢いで増殖するあの恐ろしい生き物。アレのせいで大量の遺伝子汚染が起こり、食糧危機が起こって、結果的に戦争になったんだ」

「その、わたしに似ているという、アレ、さんは今でも見ることは出来るのですか?」

 わたしの問いに、コウはため息で答えた。

「……地球の支配者は、今やアレさ。外に出てごらん。見渡す限り全部がアレといっても過言じゃないくらいだ」

「そうなのですか」

 わたしはベッドのそばにある窓のカーテンをそっと開けた。

 窓の外は薄暗く、夜なのかと思われた。

「窓をあけるんじゃないぞ。やつら、噛むからな」

 コウが忌々しげにつぶやいて、ふと隙間から光がのぞいたのに気がついた。

「え」

 よく見ると、窓にはびっしりと何かが張り付いていた。そのせいで外が見えず、夜のように思えたのかもしれない。それ、は肌色をした小さな生き物で、手のひらに乗るサイズの小さなはだかの女の子のように見えた。

 たくさんのちっちゃな少女が窓から静かにこちらをのぞきこんでいる。

 こちらが見ているのに気がついたのか、ちいさな少女同士でなにやらヒソヒソと会話を始め。

「おかーさんだ」「おねーちゃんだ」「きぃちゃんだよ」「こっちみてる」「おーい」

「つたえなきゃ」「つたえなきゃ?」「でんごーん」「でんでん?」

 見ていると、なにやらごにょごにょしばらく話したあと、ちいさな少女たちは一斉に窓から離れた。それから一人だけが窓に近寄ってきて、こん、こん、と小さく窓を叩いた。

「あの?」

 窓の外を指差して、コウに窓を開ける許可を得ようとしたら、コウもノゾミも目を丸くして窓の外を見つめていた。

「あの、彼女たちとお話をしてみたいのですが、かまわないでしょうか?」

「あ、ああ」

 ひどく驚いた様子でコウがうなずき、わたしは「手」を使って窓の金具を空けた。

 すると、すぐさま代表者のちいさな少女がちいさな羽をふるわせて入ってきた。

「こんにちわですー」

 ちいさな少女はベッドの上のわたしの目の前で静止すると右手を小さくあげて挨拶した。

 間近で見るアレ、と呼ばれる生き物の顔は、確かに先ほど見たばかりのベッドの上のわたしの顔によく似ているように思われた。

「こんにちは」

 ベッドの上のわたしの口から挨拶を返すと、ちいさな少女は、にーと小さく笑って「ちょっとだけ噛んでもよいです?」と言いながら近寄ってきた。

 蚊が、血を吸ってもいいですか、と聞いてくるようだとパチンと叩きづらいんじゃないだろうか。意思の疎通が出来る相手だと、なおさら断りにくい気がした。

 わたしは少し考えて、「痛くしないのなら、ちょっとだけかんでもいいです」と答えた。

「じゃ、いただきまーす」

 ちいさな少女は空中でくるりと一回宙返りをして、それからわたしの肩に乗った。

 耳朶に小さな何かが触れ、ちくり、と小さな痛みを感じた。

「ごっくん。んー……。きゅうじゅうきゅうてんはちきゅうぱーせんと、きぃちゃんだねぇ」

 小さな少女はどこからとこなく取り出した小さなハンドベルをカランカランと打ち鳴らした。

「おめでとうなのです。なのなのです。しょーひんもしょーきんもでないけれど、おおあたりなのですー」

 ベルを打ち鳴らしながら、空中でくるくると回る小さな少女を見ながら、わたしはこの少女は何がしたいのだろう、と考えていた。コウはアレは噛む、と言っていたが、自動人形であるわたしの体内を流れているのは人間のような栄養分を含む液体ではない。

 だとするならば、何の目的で?

「でんごんなのです、なのなのです。よーくきいてね、おねいちゃん!」

 空中に飛び上がった小さな少女が、再びわたしの目の前で静止した。

「”こまったときは、ぺんだんとにおまえじしんをいれなさい”いじょー。ごせいちょうありがとーございましたっ!」

 小さな少女はぺこりと空中でお辞儀をして、それから小さく手を振りながら窓の外に出て行った。

「……はぁ。いったい、なんなんでしょう。よくわからない人たちですね」

「君はいったい何者なんだ? アレがあんな風に人と会話しようとするところなんて初めて見た。アレは人に似た姿をしているが、基本的には意味をなさない言葉しか話さないものだし、まさか意思疎通できるなんて、思いもしなかった」

 わたしのつぶやきに、コウが驚きの声をあげた。

 答えようとして、ふとキーンという小さな高い音がどこかから聞こえてくるのに気がついた。

 何かが遠くからこちらに向かって高速で飛んできている?

「っこぉ~~~らぁ~~~っ! ディエちゃんたちぃ~~~!」

 声が聞こえたと同時に、何かが窓から飛び込んできてそのまま出入り口の扉にぶつかって跳ね返り、一瞬でまた窓から出て行く。

 その声と衝撃に驚いたのか、窓のあたりにまだ何人か飛んでいた小さな少女達が、きゃーきゃーと小さな悲鳴をあげて逃げ惑った。

「きぃちゃん見つけたら真っ先に知らせろって言ったでしょ~~がっ?」

「えー、しらせたからきたんでしょー」「おこりんぼ」「ぼーぼー」「でんごんしたよー」

「ほめてほめてー」

 窓の外から怒鳴り声と、それに答える小さな少女達の声がして。ベッドの上のわたしの体を動かして窓から外を覗き見たら、アレ、と呼ばれていたちいさな少女達とは違う生き物と目が合った。わたしと目が合ったことに気がつくと、ソレはちょっと恥ずかしげにコホン、と小さく咳をして「ほんとにもう! しょうがないんだから」と最後にもう一度だけ小さな少女達に声を上げてから、ふわりと宙に浮かんだ。

 再び窓から入ってきたのは、先ほどの小さな少女達よりふたまわりほど大きいちいさな少女だった。身長は一メートルはないだろうが、手のひらサイズと呼べるほど小さくも無い。先ほどの小さな少女たちと異なり、身体にぴったりとした薄い服を身にまとっている。

「久しぶりだね、きぃちゃん!」

 少し大きな、ちいさな少女はそう言ってベッドの上に降り立った。

 その顔は先ほどの少女達とは異なっていた。

 わずかな記憶を探ってみるが、その顔に覚えはなかった。

 後半戦その2。ますます混沌として参りました。後半戦開始一話目でガラリと雰囲気変えてますけれど、ディエちゃんズとなぞの少女の登場で多少はほのぼの感が戻ってきましたでしょうか?

 ちょっと一気に書きなぐりすぎてあちこち文章まとまりが悪いのでそのうちに修正する予定です。

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