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1、私は機械じゃありません。人形です。

 前半9章分は地の文が主人公の独白、会話文はかっこの種類で発言者を表すという変則的な書き方をしています。小説というより何かの脚本みたいに見えるかもしれません。

 文字数制限のため序文単独で投稿できないため前書きではありますがここに書いておきます。


 序 ~はじまりのおと~


   かちかち、キィキィ。


   歯車の音。


   私のいのちが刻む音。

 こんにちは。私の名前は、キィといいます。コウさんに作ってもらった人形です。

 私の身体は、小さな歯車とか、バネとか、そういういうもので出来ているので、私が歩くとキィ、キィと音がします。

 それが私の名前の由来です。

「おい、キィ。誰か来てるのか? っと、なんだ音声入力か」

 あ、コウさんです。ご紹介します。この、眼鏡をかけたぼさぼさ頭のさえない男の人が、コウさんです。

「おいおい、ひどいな。これでも身だしなみには気を使ってるつもりなんだがな」

 すみません、とてもそうは見えません。

「明日、床屋へ行こう……」

 そうしてください。

「あれ、もしかしてこれネットにつながってるのか?」

 はい、先ほど知り合った方に、ご挨拶をしていました。

「おい、まさか俺の姿を送ったのか?」

 はい。現在もコンマ二秒刻みで画像を送信中です。

「うう、相手は女の子じゃないだろうな?」

 さぁ? 向こうからは画像が来てませんから、判断できません。

「……まぁいいや。邪魔して悪かったな。話が終わってからでいいから、メシ作ってくれないか?」

 はい。では一度、通信終了します。

 ディエンテッタさん、また後でお話しましょうね。

「ゆっくりしてよかったのに」

 大丈夫です。キッチンの方でまた接続し直しますから。

 ところで、私は朝食と昼食のどちらをつくればよいのですか?

「十時か……確かに朝飯には遅いが昼食にはちょっと早い時間だな」

 本日のスケジュールに影響します。どちらにすればよいのか、はっきりしてください。

「融通のきかんやつだな」

 あなたが私を作ったんじゃありませんか。

「朝昼兼用で少し多めに作ってくれりゃいいよ」

 わかりました。十五分ほどお待ちください。




”コウさんって、面白いね”

 そうですか?

”あ、目玉焼き焦げちゃうよ?”

 ありがとうございます。大丈夫です。

”ねぇ、きぃちゃんってほんとに自動人形なの? お話してると、とても機械には思えないんだけどな”

 私は機械じゃありません。人形です。

”自動人形なら、機械で出来てるんじゃないの?”

 私は機械部品で作られた人形であって、機械ではありません。

”ふーん。よくわからないけど、嫌なら機械って言わないようにするね?”

 そうしていただけると嬉しいです。

”でも、ほんと、端末でみてると普通の人間にしか見えないよ”

 間近で見ると、普通の人間の方との微妙な違いが分かるのでしょうけれど。

”へー。それなら、きぃちゃんに会ってみたいな。会いに行ってもいい?”

 私の方はいつでもかまいません。

”じゃ、あとで行くね?”

 到着予定時刻を教えていただければ、歓迎の準備をしておきます。

”気を使わなくていいよ。あ、ちょっと、何やってるの、それ?”

 コウさんが朝食と昼食を一緒に言われたので、混ぜているところです。

”うっわ~。目玉焼きを中に入れたオムレツってどうなんだろう?”

 さあ? 玉子どうしですから、特に問題は無いと思われますが。

 あ、それともお味噌汁に浮かべた方がよかったでしょうか?

”……目玉焼きを?”

 もちろんです。よいしょと。

”……そのオムレツ、ご飯の上に乗っけちゃうんだ?”

 せっかくなので全部混ぜてしまおうかと思いまして。

 天津オムライスといったところでしょうか。

”え、天津って。それ普通のオムレツじゃなくてカニ玉だったの? うわ。中華にデミグラスソースかけちゃうって……。えー、中華のあんまでかけちゃうの?!”

 これでコウさんのお昼ご飯が完成です。

”……コウさん、大変だね”

 コウさんは、私の作ったものは残さず食べてくれます。意地汚いですから。

”やさしいんだ?”

 違います。食い意地が張っているだけです。

”きぃちゃんって味見できるの?”

 私は人形ですから、食べ物は食べません。

”じゃ、味見したことないんだ?”

 はい。

”やっぱ、コウさんっていい人だ”

 ディエンテッタさんの言うことが理解できません。

”コウさんにも興味出てきたな、うん”

 もしかして、ディエンテッタさんは男性ですか?

”……え。わたしの声って男の子に聞こえる?”

 いえ、コウさんが女性から興味をもたれるとは思いがたかったので。

”自分のマスターにそこまで言う?”

 コウさんが女性にもてないというのは、厳然たる事実ですから。ところで、ディエンテッタさんは本当に、男性ではないのですね?

”わたしはねー、ん? ええっ? あ、え? ちょっと、うわ、きゃぁ!”

 ディエンテッタさん? 今、何かすごい音が聞こえましたけれど?

”……”

 回線が切れたわけではないようですが。どうしたんでしょうか、ディエンテッタさん。

’……今日の午後、そちらへ伺おうと思います。コウにそう伝えてもらえますか?’

 ディエンテッタさん、じゃありませんね。

 どなたですか?

’私はディエンテッタの母親で、ヴィオレッタ・ヴィスコンティと言います。コウにはヴィスが来ると言えば分かります’

 お母さん、ですか?

 あの、ディエンテッタさんも一緒に来られるんですよね?

’ええ、そのつもりです’

 ディエンテッタさんは、どうかなさったのですか?

’ご心配なく。ディエはちょっと転んだだけです’

”むー、むー!!”

 今。ディエンテッタさんの声が聞こえませんでしたか?

’ああ、私が端末を取り上げたので、騒いでいるだけですよ’

”もがもが”

 ……微妙に、違う気がします。

’とにかく、午後には……そうですね、三時過ぎくらいには二人でそちらに伺いますので、コウにはそう伝えて下さい’

 はい、お待ちしております。

 あの、ディエンテッタさんは、本当に大丈夫ですか?

”んー、もぎゅー! ぶぎゅー!”

’……えい’

”……”

 あ、静かになりました。

 大丈夫でしょうか、ディエンテッタさん。

 地の文が主人公の独白という変則的な書き方をしていますので大雑把な世界観などを。

 一応の設定上として、1990年代後半くらいの日本が舞台となっております。ちょっと大きめの地方都市の住宅街にある、レンガ造りの平屋の洋館(屋根裏部屋あり)です。母屋と離れに分かれています。住宅街のはずれにあるため、窓からは小さな森が見えます。近くに昔ながらの商店街があり、キィはお店の人たちの人気者です。

 中世の錬金術が魔法じみた方向に発達すると同時に、特定分野の科学技術も現代の日本より発展しています。

 錬金術と称していますがホムンクルスの技術はバイオテクノロジーな感じです。

 同様に自動人形の技術はからくり人形というよりはロボット技術(どちらかというとサイバネティクス?)な感じです。

 街には普通にホムンクルスや、自動人形が歩いています(人工比率で10%くらい)。

 早くに転移装置が実用化されたため、飛行機やトラック、鉄道などはあまり発展せず、そのため公害なども大きな問題にならずに街には割と緑が多いです。

 

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