第二話 少年、帝に対面す
帝は回想する———
かぐや姫の昇天後も、帝はかぐや姫との別れが受け入れられず、これまでやり取りした文を見返す日々を過ごしていた。
時候の挨拶、趣のある草花の話、送った歌への軽妙な反し。
さらに読み込めば、自身がこの地上の人間ではないこと、いずれ月に帰る身であること、さらにそのための準備の協力を願いたいという内容も繰り返し書かれていた。
帝はこのような文を見ても、かぐや姫は不明なことを言い誘いを断るのが常であると聞き及んでいたため、まともには取り合っていなかった。
(いつか心を開いてくれるだろう……)と、期待を込めて何度も文を送っていた。
十五夜に天に上ったかぐや姫。
翁の要請で天人を追い返そうと帝が現地に遣わした兵たちは軽くあしらわれ、その将兵たちからも、天人の尋常ではない様子が報告されていた。
文の内容は真実だったのだ。
(おや……?)
帝はふと目を通した文に、気ががりな点が見つけた。
そこには、『従者の中には優れた者がおり、その者は八方を見通す知恵を持ち、天人の技を理解し、いずれ天人がこの地に攻めてきた時に、必ずや力となるであろう』と書かれていたのだ。
(男を寄せ付けなかったのは、心に決めた相手がすでにおるのでは?)と、帝は何度も考えたことがある。
そのような帝であったから、(かぐやが認めるこの従者、何者だ……)と嫉妬心が湧いてくるのも当然の事。
帝は、竹取の翁へ従者をこちらへ遣わすよう命じた。
周りの者たちは、ふさぎ込んでいた帝が以前の生気を取り戻す兆しのように思ったのか、喜んで、急ぎ使者を出立させた。
―――かくして、目の前に現れたのがこの少年である。
恐れ多い帝の御前にありながら態度は堂々としたものだが、見た目はどこかあどけない。
(かぐや姫と文のやり取りを始めたのは三年以上も前のこと。この少年と男女の関係というわけではないのか……)と、帝は少し拍子抜けしていた。
帝が重々しく口を開く。
「なぜここに呼ばれたのか、わかるか?」
帝が貴族でもない、ましてや宮仕えでもない庶民と直々に会うなど異例中の異例であった。周りの者は現人神である御方の振る舞いとして相応しくないものである、と諫めたが、かぐや姫に対する執着が消えない帝は直接話したいと言って聞き入れなかった。
「かぐやのことだ」
「はい」
帝は少し姿勢を崩す。
「かぐやから何か聞いておるか?」
「信じがたい話かもしれませんが、天人がまたここに現れ、戦を仕掛けてくるやもしれぬと。よって、備えをよくしておけと」
「その話か……」
帝は少し態勢を後ろにさげながら、話を続けた。
「訓練された二千の兵、天人には相手にされず、歯向かう気すら起こせなかったと……神通に立ち向かえるのか?」
「はい、かぐや様もまた天人であり、その技を残していかれました。それをもとに備えをすれば叶うかと」
「技……それは興味深い。しかし、天人が仏や神の化身であるならば、逆らえば罰が当たるものではないか」
「かぐや様がおっしゃるには、天人も人であり、神仏ではないと」
泰然と返答をする少年。無礼ではないが、愛嬌もない。
「……ならばその、天人であるかぐやがなぜこの地に現れた?」
「それについても事細かに聞いております……」
「申せ」
「信じがたい話とはなりますが……」
少年は、かつてこの地にあった時のかぐや姫の様子や、かぐや姫から伝え聞いたという話を、詳細に語り始めたのであった———
竹取物語にも描かれている、帝とかぐや姫の文のやり取りのシーンから物語が展開します。
一体、少年は何を語るのでしょうか?
次回も是非、お楽しみに!
帝・・・竹取物語に登場する国王。かぐや姫のうわさを聞き、権威を振りかざしてなんとかかぐや姫を得ようとした人物として描かれていました。さて、今作ではどうなることやら。
天人・・・竹取物語に登場する。月の都からかぐや姫を迎えに来た方々。宙に浮いているという普通ではない人たち。兵を揃え撃退しようとしたが、皆が酔ったように倒れこみ、何とか矢を射る人もいたが届かず……と描かれています。
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