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月焦の契り ~竹取物語後日譚~  作者: かやたぼ
第三章 天下動乱編
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第二十八話 白翼、空に舞う

 ———場面は月。


 突如現れた飛行体は、王宮から中央広場へ移送中であったファニの頭上に到達していた。移送隊の兵士たちが叫びを上げる。


「反乱軍の航空機は全て破壊したんじゃないのか!」

 各々が迎撃態勢をとる。結界の異常を知らせる警報は未だ鳴り響き、指揮系統の混乱に拍車をかけていた。移送隊の隊長が大声を張り上げ、迎撃を命じている。


 そのような切迫した状況をよそに、王女を一目でも見ておきたいと沿道で見守っていた民衆は、逃げ出しもせず、不思議と落ち着いて状況を見ていた。耐え難い王女の処刑、それを今、何者かが妨害しようとしている。何者かはわからないが、あれは、王女の救出を狙う存在なのではないかと、期待の眼差しを向けている。


 その期待に応えるかのように、機体の下方に大きな(かぎ)が現われた。


「落ち着くのだ!何も問題はない!航空隊を要請しろ!」

 隊長が一人、檄を飛ばす。そこへ、全隊員の通信機へ、緊急の通信が入る。


「反乱軍、旧帝都街区人質収容区域を襲撃、人質多数逃走。人質の確保のため、余剰人員の応援求む。繰り返す、反乱軍出現、旧帝都街区を襲撃!」


「旧帝都街区!?」

 移送隊の兵士たちは青ざめた。彼らの家族は皆、強制的に住む場所を決められ、実質的な監禁状態にあった。その居住区こそ、旧帝都街区と呼ばれる地区であった。

 兵士たちも許可なしでは立ち入れず、家族は今回の式典ですら、外出が許されていない。


「おい!?家族は無事なのか!」

 兵士たちは思い思いに通信を返したが、応答があるはずもない。何より彼らの心を揺さぶったのは、自身の家族が「人質」と呼称されていた事実だ。


「おい!迎撃しろ!従わなければ反逆と見なされるぞ!」

 茫然とする兵士たちへ移送隊隊長が怒号を上げる。


「隊長!人質とは……隊長は知っていたのですか!?」


「……知らん!聞き間違いだろう!」

 口ごもる隊長に、隊員たちが押し掛ける。


 そこへ、さらなる通信が入る。

「謀反に従う兵の者!聞こえるか!?私は王家のアン・ティークスだ!あなたたちの家族の安全は私が確保した!」


「これは……!?」


「アン様!アン様のお声だ!」

 移送隊の混乱が極まる———


「落ち着け!この通信は罠だ!まずあの飛行体を迎撃しろ!」


「敵襲!」

 移送隊の一人が叫ぶ。


「どこだ!?報告しろ!」

 移送隊の隊長が慌て辺りを見回す。


「全方位に敵軍反応です!おそらくファニの奪還が狙いでしょう!」



「反乱軍か!くそ……収監車を中心に円陣を組め!迎撃態勢だ」

 円状に配備される兵たち。収監車の周りに空間ができる。


「反乱軍はどこだ!?報告しろ!」

 隊長が怒号をあげる。周囲には真上を見上げている民衆の姿しか確認できない。徐々に広がっていく円陣。

 円陣が十分に広まったところで、その中心に飛行体が降りてくる。目的を着陸に切り替えたためか、鉤がすでに格納されていた。


「おい!何をやっている!上からも来ているぞ!迎撃せよ!」

 違和感に気づいた隊長が収監車に近づこうとするが、兵たちが阻む。


「貴様ら!逆らうとどうなるのか!」


「逆らってはおりません!危険です!隊長は周囲の敵軍の警戒を!」


「虚報だ!そんなことよりあれを迎撃しろ!」


「今撃てば同士討ちとなります!民衆も巻き込んでしまいます。ああ、隊長危険です!こちらへ近寄らぬよう!」

 隊長と隊員がもみ合っている。



 その混乱に乗じ、飛行体———田人の駆るツクヨミが収監車の横に着陸する。


「アン姫の遣いです!王女を保護します!」

 田人が叫ぶ。移送隊により収監車の鍵が開け放たれる。


 田人が収監車に乗り込むと、中にファニの姿を確認する。髪を短くむしられ、ひどくやつれ、袖の裾から拷問を受けたと思われるような傷が見えた。


「……っ!かぐや様!」


「……」


「かぐや様!私です!田人です!」


「……あなたは?」


「……助けに参りました!さぁ、こちらへ!」


 ファニは田人に抱えられ、ツクヨミの後部座席に乗せられた。

 田人は移送隊に頭を深々と下げ、操縦席に乗り込む。

「皆さん!下がってください!」


 その白く美しい流線型の機体はすさまじい風と共に浮き上がった。


 移送隊の隊長は一瞬の間に起こった救出劇を呆然と見ていた。見守っていた民衆が沸き立つ。アン姫が見事王女を救って見せたのだと、なりふり構わず喜び合った。



「隊長!追撃しますか!」

 移送隊の一人の兵士が尋ねたが、隊長は自身の階級章を握りしめ、力なく首を振った。

「いや、あの速さ、追いかけたところで……」

後書き


ついに……この時が来ました。しかし、田人のことを覚えていないようで……


次回もお楽しみに。


いつも読んでくださりありがとうございます!

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