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月焦の契り ~竹取物語後日譚~  作者: かやたぼ
第二章 月の姫処刑編
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第十二話 頭中将、屋敷を見分す

 かぐや姫処刑まで、あと六年と十一月―――竹取の翁の屋敷


 田人の謁見から七日後、従者を連れ立って屋敷を訪ねてくる人物があった。頭中将である。

「い、いかがなされたのです!?」

 翁は突然姿を現した中将を見て驚く。以前よりもたくましくなっているように感じるが、間違いない。


「翁よ、久しいな。こちらの備えのほどを見せてもらいたいと思ってな。まさか、のけ者にしようというわけではないな?」

「そ、そのような……滅相もありません」

「戯れだ。しかし翁ならわかってくれるだろう。あの汚辱をすすぐまで、のんきに宮仕えなどしている場合ではない。ここにあるのであろう?かぐや姫が残したという天人の技」

「なんと……よ、よく、ご、ご存じで」

「とはいえ、急な求めで場を混乱させるわけにもいかん。まずは軍備の責任者に目通りたい」


 その言葉を聞いて、翁は一段と焦った。軍備の責任者はイロハなのである。あの狼藉者をこのような高貴な方に引き合わせれば、一族牢獄行きとなろう。ここは田人に任せて―――ところが、翁の願いむなしく、どこからともなくそこにイロハがあらわれた。


「おいイロハ!この方は!」

 イロハは制止しようとする翁をしり目に、中将へ声をかける。

「このような見苦しい所へようこそお越しくださいました」

「おお、随分と幼きものだな。汝よ、そなたは何者だ?」

「はい、恐れながら申し上げます。ここで軍備を任されております、イロハと申します」

「おお……幼いなどと言ってすまなかったな。はて?どこかで会ったことは……」

「気のせいでございましょう。恐れながら、吾はかりそめの者。戦の指揮は(きみ)にこそとっていただけないかと考えております」

「むう、それは(よし)あらばだが……」


 そこへ、中将の従者の中にあって一際目立つ装束を着た若者が声を上げる。

「父君!このような幼子にへりくだるなどと」

「まぁそういうな」

「そんなことであるから、宮中で侮られるのです」

「見知ったようなことを……これは我が子桑麻呂(くわまろ)。この度の件を聞き、いかにも供せんと申して聞かぬ故、連れてまいったのだ」

「左様でしたか。これほど麗しき御子がいらしたとは」

「小癪な……おい、調子に乗るなよ。山里の猿ではわからないだろうが、父君は」

「やめんか桑麻呂。見た目の幼さなどこの屋敷では問題ではない。もうよい。先に戻っておれ」

「いえ、帰りません。我も武芸に覚えがあります。どのような軍備か見定めてまいります」

「まったく……」

「良いではありませんか。ご案内いたします」

 イロハはそう言って作業場へ一行を連れて行く。


 遠ざかっていく背中を見て、翁は思った。

「あいつ……あんな態度もできたのか……寿命が縮んだわ……」


 離れの地下にある研究施設にて、イロハはかぐや姫が残していった技術の数々を説明して回った。


 まだ軍備と呼べる規模ではない。天人に万が一月の技術を用いた兵器の、そのこしらえですら見つかってしまえば、反抗の意志ありと焼き払われてしまう。かぐや姫は使節に悟られぬよう自身の残した技術を徹底的に分解し、隠匿していた。


 炸裂するつぶてを高速で放つ筒。

 光を放ち 敵を穿つ筒。

 乗り込み操り、疾風のごとく動ける道具。

 刃も通さず、鬼神のごとき力を得る鎧。


 イロハは、半年かけて行ってきたその技術の復元や軍備への転用など、今後の計画について丁寧に説明を行った。頭中将は目を輝かせながら、早速帝に対天人軍隊の組成を奏上しなくてはと、意気揚々と都に帰っていく。

 イロハは一行を恭しく見送っている。踵を返すと、そこに田人がいた。


「なんだいたのか。中将が会いたがっていたぞ」

「……一つ、お願いがある」

「なんだ?」

「もう一体、機械人形を製作してほしい。部品はもう一体の分、あるはずだ」

「出来なくはないが。あれまで取ったら装置の処理能力がさらに落ちるぞ」

「わかっている。だがその代わりに、かぐや様がこの地でこれまで蓄積してきた膨大な研究資料があるだろう。それがあれば十分に補える」

「……道理はあるがしかしなぜ?」


 田人が大きく息を吸い、こぶしを握り締める。

「吾は今後、飛車の制作と訓練に専念したいと思っている。これから集まってくる工匠への指導などに時間を割く余裕は無い。その対応にあててはどうかと思っている。これから軍備に忙しくなるだろうから、イロハにとっても必要なはずだ。現に、今の案内だけでも相当な手間を要しただろう」

「理由は分かった……しかし、問題は部品だけではない」

「何……それは?」


 イロハが悩ましげな表情をする。

「似せて作ったとして、果たしてこの俺ほどの傑作が作れるものなのか……」

「け……けっさ……?」

「まぁ、やれるだけやってみよう」


 田人は戸惑っていた。

 自分で言いだしたことではあったが……やっぱり止めたほうがいいかもと不安になった。

後書き


頭中将が屋敷に来て、いよいよ反攻に向けた動きが本格化。さらに、もう一体の機械人形が作成される流れになっています。イロハの次と言えば・・・


次回もお楽しみに!


桑麻呂という新キャラクターが登場しました。不遜な感じですが、どのように成長していくのか、しないのか。


読んでいただきありがとうございます!

応援よろしくお願いします。


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