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プロローグ 旅は道連れ、世は情け

夕暮れの沈む、地平線。今日という平凡な一日もまた終わりを迎えようとしている。私は目の前に広がる海を目の前にタメ息をついた。

「そろそろいきますか…」

「何処にいくっていうのさ?」

急に声をかけられ、思わず振り返るとそこには一人の女性が居た。パッと見、同年代くらいだろうか。

「まぁ、立ち話もなんだしとりあえず座ってよ。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「でさ、結局どこにいきたいの?行きたい場所なら連れてってあげるけど」

「なんで見ず知らずのあなたにそんな事言わなきゃいけないんですか…」


(というかそもそもそんな誘拐犯みたいなこという人に着いてく人なんて居ないでしょ)

と返答しつつ心の中で毒づいた。


「確かに、それもそうか」

納得したようにうなづいた彼女を横目に、じゃあもういきますのでと私が言い終わるよりも早く、彼女は言葉を発すると凄まじい速度で詰め寄った。


「私の名前は琴木優奈、あなたは?」

「お、大嶋純子です。」

「よし、これで少なくとも見ず知らずの関係ではなくなったね」


「っていやいや、流石におかしいですよ」

「何がさ?」

「何がってそりゃ…」

「まぁまぁ、そこの自販機でなんか奢ってあげる。もう少しだけでいいから、話そうよ。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「純子、だっけ?海は嫌い?」

缶コーヒーを飲み干しながら彼女は質問してきた。


「まぁ普通って感じですかね。嫌いって訳ではないです。なんでそんな事聞くんですか?」

「だって純子、さっき海見ながらタメ息ついてたじゃん。」

「見てたんですか!?」

「こちとら、耳の良さなら誰にも負けないからね」

「じゃあ、そういうあなたはどうなんですか?海、嫌いなんですか?」

「普通かな?まぁ多少は好きかも」


私にとっては気まずい沈黙が流れた。自分自身で言うのもあれだが、あまり社交性の無い私はやはり初対面の相手と話すこと自体相当ハードルは高かったようだ。何を話そうか迷っている内に沈黙を破ったのは彼女だった。


「純子はどうして今日ここに来たの?」

「……あなたは?」

「質問に質問で返されちゃ、困るなぁ。まぁいいけど。私はね、姉を探しに来たの。」

「姉?」

「そ。お姉ちゃんさ、昨日の夜書き置き残して家出したの。」

「その書き置きには、なんと?」

「探さないでくださいってさ。私、その書き置きにさっき気づいてさ。思い返せば昨日、深刻そうな顔していたしで随分焦ったね。自転車で家から15分、ここまで飛ばして来たってわけ。ここ近所でも有名な飛び降りスポットだしね。」

「…………………」

「……純子も命は大切にした方がいい。こんな上から目線でしか言えないし、純子のことをよく知らない私が言えたことでもないんだけどさ。」

「気づい、てたんですね。」

「そりゃね。まぁ、悩み事あるなら教えてよ。でも別に純子の過去について詮索する気はないし、話したくないことを無理に聞こうとも思わないから安心して。なまじ自分のことを知ってる人よりなんにも知らない人の方が案外喋りやすかったりするよ、悩み事ってのは。」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「私、人生って何のために生きるのかが分からなくなったんです。」

彼女の言葉からまた数分、私からこぼれた。

それと同時に彼女、琴木優奈は立ち上がり私の手を引いた。

「じゃあさ、探そうよ。私はお姉ちゃん、純子は生きるための意味をこの広い日本中からね。」

そう言って彼女はスマホを取り出した。


「これ、お姉ちゃんのSNS。さっきここに来る直前に見つけた。」

「京都駅、ですか?」

「多分ね。投稿時間もついさっき。私たちも追いかけるよ。」

「ちょ、ちょっと待ってください。今、私"たち"って言いましたか?」

「ん?そだけど。」

「私、お金とか持ってないですよ!?それにどのくらい行くのかの予定とか準備もしてないですし…」

「お金なんて全部私が出すし、そういうめんどくさいことはあとから考えたらいいよ」

「マ、マジですか?」

「大マジだよ。旅は道連れ、世は情けって言うでしょ。さ、レッツゴー!」


こうして私は半ば引きずられながら旅?に同行することになった。見上げれば空が暗くなっていた中で星が輝いていた……

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