大嫌いな上司の机に、1年間バレないように鼻糞をつけ続けた話
営業部の佐伯は、田所課長が大嫌いだった。
理由は単純。声がでかくて、人の話を最後まで聞かずに「つまり君は間違ってる!」で締めるからだ。
ある日、昼休みに机を拭いていて、ふと課長のデスクの裏側に手を入れたとき、彼はひらめいた。
(ここ、見えないな…)
その日から佐伯は、くしゃみの副産物を、こっそりとそこに定着させる「極小アート活動」を開始した。
1日1回もしくは週に数回、気分と鼻のコンディション次第。
やがてそこは、静かに増殖する“ミュージアム”となった。
1年が経った。
総作品数は数十点。色合いや形状に四季の移ろいが表れていて、佐伯の中ではもはや立派な連作だった。
事件はある金曜の午後に起きた。
「おい佐伯!机が揺れるぞ!」
課長がデスクを少しずらした瞬間——。
バララララ…!
乾燥しきった“作品群”が、床にパラパラと降り注いだ。
「……な、な、なんだこれは!?」
課長は顔を引きつらせ、慌ててデスクを元の位置に戻した。
その横で佐伯は、マスク越しに微笑んだ。
「……積年のホコリですよ、きっと」
次の月曜から、課長の机は新品に変わっていた。
佐伯の“ミュージアム”は閉館したが、彼の胸の奥には、あの日の作品展の光景が永久保存された。
何気ない日常に、くすりと笑っていただけると幸いです。
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