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For me, life is boring if I'm not all in all the time.- 16/09/2047 - / 自分にとっての彼女は……

どうも、スバルちゃんです。修学旅行編は実は3つ明確にやりたいことがありまして、それが飛行機・そして今回のと次回のエピソードでした。正直、そこまで必要な内容ではなかったのですが構想を練り続けていたら割と重要な回になっちゃいました。まぁ、重要な回の方が対して重要でない回よりもいいでしょう?

「お前の傷は治癒できた。だが、ソレは治せない。人間の構造上明らかにおかしいのだが呪いのように何かが邪魔をしている。恨まれることでもしたのか?」


 おじいちゃんが私の説教の後に話したそれはわかっていたことだが衝撃的な内容だった。私は心臓が悪い。それはいつからか私を蝕み続けている。


「無理に動くと死ぬぞ? 冗談抜きで」

「どうにかならないのかしら?」


 私はそう尋ねる。だが、その答えは私は知っている。経験上、私の体は一番私が分かっているからだ。


「その能力が一応カバーしているようだが同時に蝕む要因にもなっている。俺の見立てだと今年度いっぱい生きられるかどうかだな」

「…………」




 

 そんな話を聞いた私は少し考えたかったため、寝静まったホテルの廊下を歩いていた。時差ボケをしている生徒は数人いるものの、飛行機内では制服で過ごすようにと定められた規則に沿っていた生徒たちはその(理事長が勝手に決めた変な)規則の疲れですぐに寝てしまっている。もちろん海斗やなぎさたちも例外ではない。ただ、私は先程の話もあるが気絶して寝てしまっていたため全く眠くない。


「眠れないのですね」

「緋山さん……」


 そこには緋山みなみ、その人が居た。彼女はまるで私が来ることを分かって待っていたかのように読んでいた本を閉じて私に向き直る。


「みなみでいいですよ。赤井さん」

「それなら私もゆのでいいわよ」

「でしたら、そう呼ばせていただきます。時にゆのさん、カジノに興味はありますか?」

「カジノ?」


 少し嫌な予感がした。海斗から「カジノなどの賭け事には関わるなよ?」と出発前の時点から釘を刺されていたからだ。


「念のため聞くのだけど何故?」

「そりゃあ、組織の壊滅の囮になってほしいのです」


 みなみが話した内容は以下の通りだ。

1.カジノ施設にブラック・ジャック構成員がよく出入りしている。

2.ちょうど組織のトップ5の一人が今夜来る予定である。

3.欧州全域で顔が割れているみなみよりも私の方が安全に囮ができる。

4.あくまでカジノに襲撃して壊滅させることではなく情報の抜き取りがメイン。

5.イカサマが可能そうな人物かつ連勝したら驚く見た目であること。


「要するに迷子の幼女のフリして我々の囮をカジノで連勝し続けて欲しいのです」

「………私にメリットは?」

「そうですね。結果的に組織の壊滅に繋がる糸筋になりますし、何よりもその身長が”小さい”ことを指摘されたときにキレ散らかす性格を治すいい機会になりますよ?」

「ちっさい………ッ!」


 今すぐ殴りかかりたい気持ちを抑える。確かに私の見た目は小学生…………もしくはそれ以下に見られなくもない。何ならムハンマドの時はそうやって誤魔化した。だからと言って好き好んでやりたいとは思えない。


「前例があるとお聞きしましたが?」


 みなみが何故かムハンマドの時の写真を見せてきた。


「なんでそれを!?」

「ゆのさんが交渉に応じなさそうであればコレを使えって私のバディが送ってきたんです。経緯は私のバディに聞いてください」

「ッ…………………!」


 正直、物凄く断りたいしそれを流出させるような組織ではないことはわかっている。バレなければいいのだ。


「もしかしたらゆのさん単体に有益な情報もあるかもしれませんよ?」

「というと?」

「その心臓病に関して有益な情報とか?」

「なんで知ってるのよ……」


 私の体調に関して知る人物と言えば先程、知ることになったおじいちゃんと私の担当医である村雨絵美の父、あと何故か私よりも私のことを知っている海斗に同じ症状があったであろう結城希本人だけだろう。ただ、私の知る限り彼らがそんな情報を他人に漏らすような性格ではないはずだ。となると病院内のカルテのハッキングか、先程のおじいちゃんとの会話の盗聴か何かだろう。


「私のバディが仕入れた情報ですが彼女曰く「外的要因があるかもね? それこそ、まるで”赤井ゆのという存在を殺すために仕組まれた”自滅機構みたいな?」だそうです。彼女はそういう重要な情報源の出どころは話しませんがかなり信憑性の高い情報であると私は経験上、思っています」

「何でそこ聞かないの………………」

「すみません………彼女はそう思ってないみたいですがビジネス上の関係でしかないので………」

「それなら仕方ないのかしら………?」


 私は少し呆れつつ後で海斗に聞いてみるためにメモをしておく。


「それで、カジノは何処なのかしら?」

「そりゃあ、カジノと言えばモナコ公国しかないでしょう?」

「いや、栄光ある国だって道歩けばそこらへんに色々あるじゃあないの?」

「孤立してませんよ? それに、関係あるのはモナコなんですもの」


 正直、行きたくない。ここから電車を使っても日が昇り始めるころに着くだけで学校に迷惑が掛かるのは目に見えてわかる。だが、目の前の少女もどきは見た目を意識しているのかわからないが存分に活用して情に訴えてくる。


「行けばいいのでしょう? 行けば?」

「そう言ってくれると思ってました。それでは、行ってらっしゃい!」

「へ?」


 みなみが突然、手袋を外した。手袋を外す。それ即ち何かの破壊が行われる。その万物を破壊するその右手はいつの間にか私の足元にあった何かに触れた。その瞬間、私の足元が崩壊し私はそのままそこに向かって一直線に落ちていった。





 たどり着いたその先はきらびやかな建物の前であった。その豪華さに見惚れていると急に背中に硬い金属質の物が当てられた。


「赤井ゆのかな?」

「だとしたらどうなのよッ!」


 私は後ろの人物に回し蹴りをお見舞いしてやろうとしたが寸前でその行為は止まった。いや、止めざるを得なかったの方が正しいだろう。その人物はみなみが持ってきたトークンに酷似したモノを持っていた。


「MI6なの?」

「えぇ、みなみから聞いてないんですか?」


 どうやらお互いの情報伝達があまり上手くいっていないのかもしれない。そんなことを考えながらその人物を見ていると彼女は急に私をそばの車に強引に招き入れた。その車の後部座席には女児がパーティーなどでちょっとおめかしをする際に着そうな衣装だらけだった。


「まさかと思うけど…………これを着ろと?」

「何を当たり前のことを……そのブレザーに黒マントはいかにも赤井ゆのそのものです。でも、顔は変わらなくても服装が変われば印象も変わるものなのです。ってことで着てください。あと、着替え終わったら私のことはパパかダディって呼んでください」

「貴女、ダディやパパっていうよりもマァムでしょうが…………それにそんな見た目じゃあ…………」


 そんなことを言っているうちに彼女はいつの間にかダンディな紳士へと姿が変わっていた。


「何か?」

「…………いえ、なんでもないわ」


 変身の能力のようだ。ただ、見た目だけでなく仕草や息遣いに体臭までも変化している。正直、彼女? が味方でなく敵に回った場合を考えただけで恐ろしさを感じた。


「ダッド、着替えたよ」

「あぁ、似合ってるぞ」


 父を名乗る相手に合わせて子供らしく振舞うが慣れない口調な上に服装までも慣れない。なんでこんなにもフリフリの服を着なければいけないのだろう。しかもよく目立つピンクなんて……いや、囮なら最適なのだろうか。


「身分証の提示をお願いいたします」

 

 店員が私の隣にいる人物に身分証の提示を促してくる。とはいえ、きっと偽造されたものであろうがどのような身分証を出してくるのかが気になる。


「なんと……いえ、確認致しました。のでどうぞお入りください楽しいひと時になることを祈っております」


 差し出したのはコインのようなものであった。よく見えなかったがあれはモナコ公国の……?


「そうだモネガスク・フランだ。かつて発行されていたものだがその中でもコインは特別で公国が特別に信用に足る人間のみに渡すように作られた特注のものだ」

「そうなんだぁ。じゃあ、ダッドは信用されているんだね」

「まぁな」


 偽造のような気もするがそんな都合の良い話は聞いたことないし本物なのだろうか? ただ、この件についても考えてもらちが明かないので考えるのをやめた。



 


 しばらく時間が経った後に私はあえてトイレに向かった。このタイミングで離れるためだ。そうして意図をくみ取ったのか私と彼は離れ離れになった。その事実を確認した私は父親を捜す子供のように泣きながら彼を探す演技を始めた。


「ダッド~? どこに居るの?」


 しばらく私はフロアを何周かして周囲の人間に親とはぐれてしまった可哀想な子供という印象を植え付ける。そうして子供らしく歩き疲れたのを演出するために休憩スペースとして設けられたソファーに座ってすすり泣く。


「ひっぐ……ひっぐ……」


 割と渾身の演技だがどうだろうか? さぁ、私に注意を向けろ。


「お嬢ちゃん、どうしたんだ?」


 特定の誰かに意識を向けて欲しいわけではないのだが……。


「ダッドと離れちゃったの」

「お父さんとか…………それなら、おじさんと簡単なゲームでもしてみない?」


 店員に尋ねるなどの行動よりもゲームか。人としてはダメだが今回に限っては好都合かもしれない。


「ゲーム?」

「そう、簡単なゲームさ。ここにあるルーレットが黒か赤のどれかにかを当てるゲームだよ。0から36の数字でもいいが簡単に黒と赤に絞った方が簡単だろ?」

「じゃあ、黒」

「了解……黒だね?」


 いいや、ただ黒なんてつまらないでしょう?


「黒の17」

「は?」


 男が聞き返す。だが、私は変えるつもりはない。


「黒の17だよ。お兄さん?」

「マジかよ……」


 私はディーラーによって近くに置かれた椅子でゆらゆらと体を揺らして座りながら様子を伺う。


「ノーモアベット」


 チップがこの合図によって変更も置くこともできなくなった。そして私が指定したチップはちゃんと黒の17においてある。そんなことを考えながらルーレットを見ると玉の位置が確定していた。場所は……


「黒の17……」

「わーい! 当たった!」

「マジかよ嬢ちゃん……36倍って……」


 こういうのは得意だ。賭けの場に立った時点で相手が負けるように立ち回る。だが今回はしていないがそうなる気がしたのだ。


「……じゃあ、次はどこに賭ける?」


 まるで金稼ぎの新たな道具を見るかのように私を見つめてきた。でも、ここは間違えずに私が思う場所を指定する。


「じゃあ、0」

「……は?」


 またもや彼の口から変な声が出た。本来の黒と赤の二色から外れた色と数字の場所、それが0だ。彼は保険のために先程は黒に賭けていた。だが今回は黒でも赤でもない0だ。確率にしてみれば約2.7%に入るその場所は奇数にも偶数にもカウントされない。ただ一点狙いの場所。それが0。


「ノーモアベット」

「あっ……」


 そう彼が言った瞬間、このゲームは何も賭けないただの観戦となった。そうしてルーレットが止まり玉の位置が確定した。場所はやはりと言うべきか……。


「0……」

「また当たったね!」

「ちょっと信じられない……次の場所はどこにする?」


 彼が私に問うてきた。まるで子供が新たな玩具を受け取った時にするかのようなまなざしだ。いいだろう。彼も周囲の人たちにも誰も退屈させないゲームにしよう。私はチップをテーブルの盤上に投げ入れる。投げ入れる場所はもう決まっている。赤の16だ。




 

「は? ゆのが居ない?」


 突然、夜中に訪問してきた柚木なぎさがそんな話を話してきた。


「なんだ? なぎさ、海斗に夜這いか?」

「ちょっとお前は黙ってろ」


 頭ピンクの信也に話の主導権を握られるわけにはいかない。それに、俺にとって柚木なぎさはタイプではないし若干の恐怖心が勝つ。


「それで? そばに居なかったのか?」

「うん。トイレに行こうと思って起きたらゆのちゃんがいるはずのベッドに居なくて、トイレかなって思ってトイレを探しても居ないからメッセージを送っても既読がつかないの。

「…………だとしたら……」


 なんかまた厄介事に巻き込まれているな。予想ならばあのMI6の場所に行けばなんか分かるかもしれない。


「とりあえず、そのことは俺がなんとかしておく。お前は気にせずぐっすり寝てろ」

「わかった……あと夜這いじゃないよ?」

「…………その話は蒸し返すなよ」


 俺は頭を抱えつつ彼女と離れ、少女もどきの部屋に向かった。


「夜分遅くに失礼」

「高階さんじゃあないですか。何か………いえ、そういうことですか」

「分かっているなら聞くな」

「分かっているからこその質問ですよ。”赤井ゆのの行先”それは確かに私が関係していますし、貴方には追うことはできません。かといって彼女が危害を及ぼされるわけでも逆に彼女がそうする立場にもなり得ません。その上での質問です。ここでの質問は意味がありますか?」

「は?」


 何を言っているんだコイツは?


「いや、あるだろ。アイツが困っているかもしれない。だとしたら全力で助けになりたいってのが仲間ってヤツだろうが!」

「耳触りの良い言葉ですね。私が彼女であれば惚れ惚れしそうです。ですが、私の前では不正解ですよ。彼と仲がいいのは同じ詐称者だからでしょうか?」

「何が言いたい?」

「わざわざありがとう”仲間”って言ったことですよ。貴方と彼女の関係を我々が知っていないとでも? 彼女は知らないようですが貴方が知っていることは既にわかっています。その上で仲間と称した時点で貴方への信頼は無いんですよ。赤井ゆの、彼女は口数が少なく内向的な性格であること以外は基本的に我々から見て欠点はないです。ですが貴方の技術は信用していますが貴方という存在は信用できません。だからこのような対応をいたします。明日の朝には無事に帰ってきますよ。ですので、お帰りください」


 こう言われても俺には返す言葉がない。言い返すことはできるが、それは即ち俺にとっての存在意義の消滅にも繋がる。軽率に発言をすることはできない。


「耳が痛いな。だが、おいそれとお前が望む発言はすることはできない」

「そうですか。でも、安心してください。先ほども言いましたが夜明けまでには帰ってきますよ。クリスマスの時と違ってね」

「それを言うなよ」


 



 

「マジかよ嬢ちゃん!」

「カードは…………相手がツーペア、そして嬢ちゃんはフルハウスだ!」


 あれから4回もルーレットをしたら周囲の人たちが私にチップを手渡して代わりに賭けてもらうようになってきていた。それだと周囲の観客に飽きられかねないのでカードのテーブルに移動していた。私の豪運は思ったよりも凄まじく、気付けばたった一枚だったチップが周囲の貸しが多少あったものの10万枚以上になっていた。


「貴方のカードは10のスリーペア、そして私は9から13までのストレート。私の勝ちだね!」

「馬鹿な……なんでこんなにも運がいいんだ!? イカサマをしているかと思えばそうでもない。何故だ! 何故そこまで運がいい!」


 正直、私自身でもわからないがこういう賭けの時に限って私は豪運になる。他の勝負事でも役立ってほしいものだが……。


「さすがね、赤井ゆの……」

「ありがと…………へ?」


 何故か私の名前が呼ばれた。その声の主に向き直るとそこには老婆が居た。


「何故、名前をって反応だね。だってバレバレなんだよ。黒い髪にその背丈、そして異様に勝ち続ける豪運の持ち主。そんな人物なんて私は一人しか知らない。しかも、今日から丁度欧州に修学旅行で来ているという話じゃあないか」

「…………囮としては上出来だったでしょう?」


 私はその老婆に向かって微笑む。


「あぁ、上出来だが私たちの方が上手だったね。ここには君たちに知られて困る情報など無いからね。何なら私は君が来る前から君と賭けをしたいとまで思っていたくらいだ」

「言うじゃあないの。ゲームは? このテーブルのポーカー? ルーレット? シックボー? それとも……貴女たちの組織名にもなってる”ブラック・ジャック”?」

「…………ブラック・ジャックは最後のゲームにしよう。まずはこのテーブルでポーカーと洒落込もうじゃあないの」

「勝手に進めているけどやると一言も言っていないわよ? まぁ、こういう勝負事は大好きなのだけどね」

「君は天性のギャンブラーだろうね。それも、勝ち続けているから破滅のラインを見極めたいのかな?」


 破滅などしたくないのだが…………。


「カードを配ってちょうだい」

「だってよ。彼女にカードを」


 ディーラーがカードを渡してくる。カードは4と10のダブルカード。配布されたカードで役ができているのはとてもいいことだが目の前の老婆は生粋のギャンブラー。これでいいと考えた時点で負けになるだろう。


「そうだね…………2枚チェンジで」

「私はそうね……5枚チェンジで」

「は? 何を馬鹿なことを……5枚チェンジって正気の沙汰じゃあないね。このゲームを愚弄する気かい?」

「そうかしら? 本当に正気の沙汰じゃない行動を平然とやって結果を残してきているのは紛れもなくここにいる私なのだけど?」

「そうだったね。約2.7%をポンポン当てて、その上でポーカーも全勝。常識で考えちゃあいけないか」


 もともと、常識なんて能力がある時点で無いも同然でしょうに……。


「私のカードは……」

「キングのフォーカードだね。では、私のカードだ。悪いね。ストレートフラッシュだ。それじゃあ、そのチップは私のもの……」


 私は私の賭けたチップに差し出される手を掴む。


「何かな? 君の負けは決まっているはず。そのカードで逆転できるはず……」

「逆転できるはず……何かしら?」


 私はその4枚のカードで隠れていた一枚のカードを提示する。


「ジョーカー! まさか、ファイブカード!」

「このカジノでのファイブカードの役は通常のゲームにおいて最強の位置に属するロイヤルストレートフラッシュを凌駕する。いわばこれこそ最強の役よ」

「面白いなその豪運! どこまでの豪運なのか気になってきたところだ!」

「私自身、把握しきれていないの。だから付き合って貰うわよ。私か貴女の運が尽きるまで」

 




 情報を入手したであろう頃に私はバディに連絡を入れる。高階さんにああ言った手前、無事かつ安全にゆのさんを送り返さないといけないからだ。


「どうです? 進捗は?」

「進捗……あぁ、ダメダメだね。そもそもとして有益な情報が無い。いい情報あるかと思えば骨折り損のくたびれ儲けだよ」

「ゆのさんの方はどうなってますか?」

「ゆの……あぁ、赤井ゆののことだね。うわっ………彼女えげつない量のチップ稼いでない?」

「は?」


 未成年に賭け事をさせているんですかあの人は!?


「ちょっと! いくらなんでも非合法な行為をやっちゃあいけませんよ!」

「いや、彼女が自らやってるんだけど。うわ……マジかブラック・ジャックじゃん」

「え、組織の人と対戦しているんですか!? ちょっと!」

「両方両方。ゲームがブラック・ジャックだし、対戦相手も組織のNO.5だ」

「何しているんですか! 今回の囮で彼女が傷一つ負っちゃあだめなんですよ! 信用問題にも関わります! 早くゲームを止めさせてください!」

「オールインするの? ここで?」

「いや、何しているんですか! 早く止めないと!」

「無理。私は傍に居ないから」

「はぁぁぁぁ?」


 思わずそんな声が出てしまった。ゆのさん含めてたった二人で行ったんですか? あのバディは!


「今は監視カメラのモニターで見てるの。わ、スプリットしてるし……」

「もういいです。早く安全に撤収してください。必要であれば早めに私に応援要請も」

「了解!」

「返事だけはいいんですから……」


 私はバディとの通話を切ると大きなため息が出てしまった。どうやらまだ眠れないようだ。



 


「そういえば、こんな賭けをしていなかったね。君、文字通り”命を賭ける”ゲームはしてみたくないかい?」

「内容によるわ」

「そこで拒まないあたりやはり君の感性は常人のモノではない、ギャンブラーのものだよ」

「そういうのはいいから。内容は?」

「せっかちだなぁ。私からの賭けは”君の第二の能力についての話”だ」


 第二の能力。私自身にそれが存在しているのかしていないのか。また、それがどういったものなのかすら把握しきれていない。その能力の話とは大きく出たものだ。


「割に合わないわよ。そんなもののために命を賭けるなんて」

「そうかい? 私からすれば組織の壊滅に繋がるかもしれない情報だ。それは君によっての行動がこの場にいる組織のメンバー全員が間接的に殺されるかもしれないという条件を背負っての話だからさ」


 そう言われると言い返せない。だが、情報源がどこなのかを知りたい。


「情報源は確かなの? 適当な人の見解で言われても信用できないのだけど」

「それなら安心したまえ。君が知っているであろう人物。第三次世界大戦の生き残り。名前と能力、そして性別以外のすべての情報が無に等しい能力者、0からの情報だ」

「また0……」


 彼については謎な部分が多い。だが、彼の性格などは信用できなくとも彼の情報は信用できる。


「いいわよ。それならばこの場にあるすべてのチップと私の命を賭けるわ」

「グッド」

「ただ、そちらにこのチップに見合う対価を望むわ」

「と言うと?」

「貴女たちの組織の計画の全貌を吐いてもらう」

「…………ふむ。別にいいけど?」

「へ?」


 私はてっきりもう少し狼狽えるのかと思っていたが…………。まぁ、嬉しい誤算か? それとも…………。


「私のカードは…………エースの二枚?」

「あぁ、スプリットかい?」


 ブラックジャックにおいて同じカードが配布された場合、スプリットという手札を二つに分ける手段をとることができる。


「そうね。新たに二枚のカードを頂戴。新たな手札の掛け金はそうね…………入るときにくすねたモネガスク・フランでどうかしら?」

「…………手癖の悪いガキだこと。いいよ。それも賭けに加えても。こちらから出せるものはそうだな……こちらが把握している君らの情報の開示かな」

「一気に豪華になったわね」

「そりゃそうだ。それは欲しても手に入れられるものじゃあないからね。市場にも出回らないこの国最強のトークンさ」

「そんなにすごいものなのね」


 信用できなくてくすねたのは相当悪かったな。あとで謝っておこう。


「新たなカードは……またエース……?」

「スプリットかい?」

「そうね。新たにまた二枚、そして私の全私財を賭けるわ。はい、誓約書」

「全私財って君ねぇ…………うわまじか………結構なボンボンなお嬢様?」

「いいえ、ただのМI6の娘よ」

「稼げるんだねぇ………………」


 といっても、私の資産のほとんどは私の手によって増やしたものであるがそこまで彼女にいう必要は無いだろう。


「それで? 貴女はこの金額に何を賭けてくれるの?」

「いや、もうお金しかないね。情報とか別に無いし……」

「そう。はい、ブラック・ジャック」

「さらっと三つもブラック・ジャックしないでほしいんだが」

「貴女は……バスト。私の勝ちね」

「言ってた通りだね」

「は?」


 どういう意味だ? 誰が?


「0が当初の賭けの”君の第二の能力についての話”をしてきた時の話だ」


 そういえばそんな賭けだった。勝つことに集中していてすっかり忘れていた。


「アイツは賭けに行くって時に私に接触してきて「きっと赤井ゆのにとって当たり前のように勝つだろう。だが、それがどういう意味なのか分かっていないだろう」ってね。訳わからないしムカツクヤツだけどアイツはそんなことを言っていた。私から言えることはそれだけだ。あとはそのフロッピーディスクに情報がすべて入っている」

「フロッピーディスク?」

「は? フロッピーディスク知らないだと? もしかしてUSBメモリもSDカードも知らないのかい?」

「知らないわよ。SSDみたいなもの?」

「はぁ~これだから今どきのヤツは……」

「やめなさいよ。おばさんアピールに繋がるわよ?」

「ムカツクガキだね! 直接殴り合ってもいいんだよ!」

「お互いに利益がないでしょうに……………………」


 フロッピーディスクなんてどうやって読み取ればいいのかしら? そもそも、何故フロッピーディスクなんかに記憶しているのかしら?


「とりあえず、高階海斗に渡せば万事解決だよ」

「わかったわ」


 私はそのフロッピーディスクを受け取った。このディスクが私たちに何をもたらすのかはわからない。けれど、決して目を背けてはいけないものであるのは確かだろう。

カジノというよりも賭け事、みなさんはお好きですか? 私は人生に対して常にオールインですよ。その時々にやれることを全力にやる。ただ、そのせいで物凄く燃費が悪いのですがね。





⸺ おまけ・人物紹介 ⸺




赤井ゆの/生粋のギャンブラー

豪運には実は理由がある


高階海斗/明かすことができないプリテンダー

言えるものなら言い返したかった


柚木なぎさ/寝起きの少女

夕食に食べたチーズをもう一度食べたい


緋山みなみ/バディに振り回される人

事前に通知して欲しかった


0/データロスト

約束された勝利は見る必要がない


石越明子/赤井ゆののダディ(自称)

監視カメラでトークンを見た瞬間にめちゃくちゃ焦った


五十嵐清/厳つい雰囲気の優しいおじいちゃん

割とゆののことは心配している。


竹中昴/この物語の作者

賭け事自体はカジノどころかパチンコもしたことがない

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