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この身が朽ちても果たすべきことがある - 2047/09/06 - / Living dead - 06/09/2047 -

さて、お久しぶりです。お元気でしたか? 私は前回の投稿日当日にインフルエンザに感染して現在も不調が続いています。なんで~!!


久々の投稿ですが前述のとおり不調かつ物語の流れ的に文章が少ないです。すみません。

2047/09/06


 物心ついたときからこの力を手にしていた。代償だって分かりながら当たり前に使っていた。それがどんなに恐ろしい行為なのかも理解しつつ、平然と生きている。いや、生きているという言葉すら正しいのかわからなくなっている。


「お前の目的を果たすにはお前自身を薪として数多のお前を燃やし尽くすつもりでないと達成できない」


 わかっているさ。そんなこと。どこからともなく聞こえてきた誰か分からないソイツがそんなことを告げてきても俺のやるべき行為は変わらない。既に兆を超える俺という存在を薪としてこの身を燃やし続けてきた。そして…………もう本当に後がないことも理解している。

 

「………あと少しだったんだけどな」


 小さく舌打ちをする。どこまで生きていられるかは分からない。でも、最後まで戦い抜くんだ。






 クラスでは修学旅行の説明が先生の口から伝えられていた。行き先はヨーロッパ。フランスやドイツなどの有名な国はもちろん、ベルギーやルクセンブルクなどEU加盟国の先の二つの国よりは有名でないものの主要国も巡る一週間の旅だ。


「右目……何かあったのか?」


 ハンドシグナルでやけに右目を押さえる仕草をするゆのに問いかける。


「何でもないわ。ただ……見えづらいだけね」


 まさに厨二病の塊のような恰好をしている彼女だが好きでその恰好をしている訳ではなく、合理性故にあの恰好をしている彼女だからこそ邪眼・魔眼云々は言うはずがないと思ったが見えづらいときた。確か、彼女の視力は2キロ程度先にある一瞬だけ反射したスコープすら気づくチートじみた視力だったと思うが……?


「見えづらいって何かの冗談か? 視力滅茶苦茶良くなかったか?」

「左目はね。右目は違うのよ。コンタクトでごまかしているけど手元ですら見えないくらい悪いのよ。っていうかモノクルしている姿見たことあるでしょ?」


 そういえばつい最近、見た気がする。確かゆのが泊まった日の朝だ。ただすぐにコンタクトに変えていたみたいでモノクルをしていた記憶なんてさっぱり覚えていなかった。


「さしたる問題は無いのだけど極端に悪いから少し心配になるわね」

「少しじゃない。病院行けよ」


 彼女は割と自分のことを軽視する傾向がある。時間遡行者にありがちだと思うがかなり目的のために自分自身の身体を粗末に扱うことが多い気がする。勿論、人のことを言える立場ではないが。


「もう少し自分を大切にしろよ? お前という存在はお前だけのものじゃないんだから」

「…………?」


 ゆのは分かっていないようだった。告白の意図は無いが少なくとも彼女が倒れると悲しむ者は少なくない。だからこそ、彼女には自分自身を大切にして欲しいが…………この調子だとあまり変わらないのだろうな。


「とにかく、授業が終わったら病院に行けよ?」

「そうね。何事も身体が資本だものね」


 ちょっと意外だったがすんなり聞き入れてくれた。ただ、少し弱みを見せるようになった彼女は少し信頼されてきたとも言えるのだろうか?






 夏休みから完全に学業重視の態勢に入った学校だが私たち二年生は修学旅行が控えていた。場所は欧州4か国。フランス・ドイツ。そしてベルギーとルクセンブルク。私の母国……? のイギリスが含まれていないのは欧州連合に加盟していないからだろう。


「ルクセンブルクってまた変わったチョイスだよね」

「そんなことはないぞ? ルクセンブルクは欧州連合の司法の本部があるからな」


 相変わらず海斗はそういう知識が凄い。地理の内容ではあるもののさらっと言えるのは純粋に尊敬できる。


「行動班は相変わらずいつものメンバーなんだ。各々、各国で行きたい場所を挙げてくれ」


 フランス・ドイツ・ベルギー・ルクセンブルク。この四か国は正直、過去に飽きるほど有名スポットは観たために別な場所か有名どころでないマイナーな場所に行ってみたい。


「やっぱり、フランスと言えばパリだよな!」

「花の都っていうもんね!」

「紺碧海岸なんてどうかしら?」

「紺碧……?」


 なるほど……知識がなかったか。


「有名な海岸観光地よ。お金持ちが集まる少しリッチな場所ね。モナコ公国っていう世界第二位の小ささを誇る国も近くにあるわね」


 この学校が割とそこそこの金持ち学校であることを考えればそれなりに行ったことがある生徒は数人は学年にいるだろう。

 私は幼いころに一回行ってそのまま観光……ではなく、モナコのカジノに連れられて子供ながらルーレットで大勝ちして出禁をくらった記憶がある。


「…………賭け事しないよな?」

「私をギャンブラーか何かと勘違いしていないかしら?」


 私自身、賭けに近い戦闘を繰り返したことはあるが断じてギャンブラーではない。株やFXといった賭け事で生活を成り立たせているが別にギャンブラーというわけではない。


「ギャンブラーじゃないわよね?」

「不安になってるじゃないか」


 競馬とかパチンコとかには染まってない分まだましなはず…………還元率で考えるとどうだっただろうか?


「ともかく……パリ。そしてコートダジュールだな?」

「ドイツはどこがいい?」

「ドイツだったらベルリンの壁じゃないかしら?」


 ドイツという国の歴史を語るならばこの場所は欠かせないだろう。それに、海斗と同行するならばどこぞの人のようにドイツの歴史書が敗北を記すだけでこの厚みかと言わせないような話をいっぱいしてくれるだろう。




 

 高階海斗という人間は破綻している。だから気に入った。彼の生き方は文字通り人としてあってはならない生き方だ。正義の味方を目指すのはいい。そして他人のために行動するのはいい。だが、そのやり方が人としておかしい。彼は…………この一年間で一体どれだけ消耗するのだろうか? 5か? いや7万は下らないな。

 対して赤井ゆのという人間ほど読めない人間は居ない。彼女は自分の予想とは全く違う方法で多くの困難を乗り越えてきた。彼女は決して頭がいいとは言えないだろう。彼女には多くの経験と知識が人よりも導きやすくしているだけで彼女本来の力はそこまででもない。だが、それだけでここまでやれたのかと言われたら断じて否であろう。きっと…………彼女は…………いや、言うまでもないな。彼が上手くやっているのだろう。努力しないあの天才が唯一努力する対象だから。





 ふと気になったことがあったので下校中、病院に行く私を連れ添ってくれた海斗に聞いてみる。


「ねぇ、何で『なぎさのことを名前や苗字じゃなくてフルネームで呼ぶの?』」


 思い返せばそうだ。私や信也はそれぞれ「ゆの」「信也」と名前で呼び、絵美の場合は「村雨」と苗字で呼んでいた。けど、先生などの役職名以外でそれ以外の名前の呼び方をする相手は柚木なぎさ、彼女しかいない。


「………そりゃあ、彼女が彼女だからだな」

「………? 理由になってないわよ?」


 あからさまにため息をつかれた。「妙なところで察しがいいんだよな。さて、どうやって納得させるか………」などと考えていそうな顔をしている。


「俺の能力について話をしよう」

「今その話、関係ある? 聞きたい内容ではあるのだけど……」

「あるとも」


 そこから語られた内容はあまりにも濃い内容であった。

 彼の本当の能力は『IF』。その能力は今歩こうとしている時に右足から踏み出すか、左足から踏み出すか。そんな些細な変化で生じた分岐による世界線を認識・干渉する能力だ。彼の能力はよく言われるような右の道・左の道どちらに行くかどうかや朝食はパンかご飯かどちらかなどの選択ではない。本当に些細な行動の分岐からできた世界線に干渉する。


「その反応は『ここに居るお前は』どうやら知らなかったようだな」


 海斗にそう言われた時、彼の異常さに気が付いた。かつて私は彼に協力を持ち掛けられた際に非協力的だったかつての彼を今の彼に非難した。だが、それは間違いだった。彼はそもそもとして戦い続けている彼とは別の存在であったのだ。

 彼がかつて戦い、離れた世界線において私は彼の能力を知っていた。…………いや、その可能性だけでない。結城希。別の選択肢を選んだ彼女。彼女は彼の能力を認識している? いやそれだけじゃあない。そもそもとして、どうして彼女が私の別存在だと認識していた?


「そう重く考える必要はないさ。…………それで本題だ。この能力は『やろうと思えば』瀕死の重傷を負った時には別の世界線の自分に意思や記憶を引き継いでこの世界でやれなかったことを続けることができる。………ここまで言えば何が言いたいかわかるよな?」

「なぎさも同じと言いたいの?」


 もし、それだと……私は……何も守れて………何のために……………?


「似た立場ではあるが同じとは言わないさ。少なくともお前が認識している彼女は世界線が変わらない限りずっとその彼女は彼女のままだ」


 そう言っていた彼の表情は覚えていない。私を安心させるかのように優しい顔だったのか、悲観的な少し悲しそうな顔だったのか。でも…………きっと…………彼は限界に近い。


「限界が近いのは君もだよ?」

「へゃっ!?」


 急に思考に受け答えされて変な声が出た。


「全く、話しかけてもずっと考えているんだもん。微かに出る思考に耳を傾けていいタイミングで割り込むしかないよね」


 それ確かダメなヤツだったのでは? いや寝言だったか? 見ず知らずならまだしも医者とはいえ村雨絵美の父親にそんな反応を見られたのは少し恥ずかしい。


「君が能力者であることは知っているよ。そして能力の代償が何なのかも。君の能力の代償は右目の視力だけじゃない」

「…………」


 なんとなく分かっていた。強力な能力を頻繫に使用していたんだ。身体がボロボロになっていたとしてもおかしくない。


「心臓………君の心臓は損傷が激しい。時々、胸が痛むことが最近増えているんじゃあない? 君の余命は二年生を無事に終えられるか分からないレベルだ」


 残り約半年………この身が朽ちようと果たさねばならないことがある。それがどれだけ辛かろうが。どんな結末が待ち受けようが私は歩み続ける。

あとがき………最近、生きづらいって言葉をよく聞きます。確かに生きづらいけど彼女らの境遇に比べれば多少はマシではないでしょうか。


能力あるだけいい? それもそうかも?

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