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無力感 - 2047/08/09 - / Misleading / Fall for a scam / Determination

 ゆのが襲撃され瀕死の重傷を負ったという話を聞いた。搬送された病院に行くと彼女は酸素ボンベなどの様々な生命維持装置に繋がれていた。


「…………彼女……能力者だよね? しかもかなり高位の」


 医者が俺にそう尋ねてくる。こう聞くということは彼が能力者であるか、そう思わせる現象があったに違いない。現在も精密検査でも能力者を見つける方法は見つかっていないから結果的にその二つの選択肢に絞られる。


「どうしてそう思った?」

「いやね。彼女の傷口に入った毒物が一切、毒として機能していないのさ。彼女の体から離しても。まるで”毒を毒で無くしたかのように”毒耐性がついたとかじゃあありえないことだからね」


 これは言い逃れできないだろう。だが……認めるわけには……。


「お父さん! 海斗君を困らせてはいけないって言ったでしょ!」


 看護師姿の見知った人物が病室に入室してきた。


「村雨……絵美?」

「ここはお前の家の病院だったのか」

「うん。看護師免許はないけど免許が必要ないお手伝いをしているの」

「そうか」


 俺は正直彼女との会話など聞こえていなかった。ただただ、ゆのの容態だけが思考を支配していた。


「そういえば、彼女を運んできたのは君のお友達かな?」

「柚木さんと金髪の少女が居たんだけど、柚木さんは夜遅いから帰っちゃったようで金髪の少女は病室の外に居るはずだよ」

「そうか。なら挨拶に行かないとな」


 俺はゆのの病室を出てその人物を探す。病室を出てすぐにあるベンチや周囲にはおらず、少し離れた位置を探索する。思い当たる節としては院内地図を見た限りレントゲン室かトイレ、もしくは玄関方面だろう。そんなことを考えてその少女の正体と立場を考えたところ一番合点が行くレントゲン室前の廊下へ向かうと予想通り、彼女が居た。


「やはりアンタだったか。緋山みなみ」

「来ると思っていましたよ。高階海斗さん」


 みなみは相も変わらずその特徴的な手袋をしながらたこ焼きを食べていた。


「…………MI6も祭りに行くんだな」

「本来は今日、私はオフですから」


 彼女は全然湯気が上がっていない冷めているであろうのに何度もフーフーと冷ましながら食べていた。


「まぁ、私は生物から逸脱しているので睡眠も栄養も必要無いのですがね」


 そう言って彼女は食べ終わった後のトレーと箸を一瞬のうちに手袋を取った手で触れて再び手袋をはめ直した。


「それで? 私に何か用でしょうか?」

「あぁ。まずはゆのを救ってくれた礼を」

「いえ、礼には及びません。凶悪犯を処分した時にたまたま居合わせただけですから」

「凶悪犯?」


 彼女が通り魔に刺されたということは聞いていたがその人物がどういう者なのかはそういえば聞いていなかった。


「レティシア・モリス。先日の貴方のクラスを銃撃したジェームズ・モリスの妻ですね。正確には婚約ですが」

「ソイツを処分したと言ったが?」

「この手で文字通り処分しました。体の内側から破壊したので彼女の治療は不可能ですね」

「ふざけるな! 悪人であろうと殺していい理由などあるものか!」


 目の前の彼女は平然と殺したことを報告した。それについて悲しみも後悔の念も存在していない! 人の命がそう簡単に奪われてそれについて何の感情を持たない。それを、そんなことは許してはいけない!


「その通りですね。ですが事実、殺さなければ赤井ゆの。彼女が死ぬことになっていた。では、貴方は選べますか? 凶悪犯の命か彼女のような一般人の命を」

「―――――――――ッ!」


 反論できない。彼女の発言はどこまでも正しい。罪ある者と罪なき者、どちらを生かすか選択する際にはきっと俺は罪なき者を選ぶだろう。


「…………でも、アンタみたいな強者ならばそんな選択を選ばない第三の選択肢を作れたんじゃあないのか!?」

「…………」


 彼女は少し考える素振りをする。だが、帰ってきた答えは俺の納得できるものではなかった。


「不可能ですね。私の能力は壊すことに特化しすぎています。あの場で第三の選択肢が存在したのであればきっとそれはどちらも死ぬ以外はありません」

「……………ようやくわかった。お前たちは信用できない!」

「信用はしなくて大丈夫です。元々、私は英国の国益を重視する組織の人間。貴方の理想とするような正義の存在ではありません。目的が同じで協力関係を結んだだけの相手柄じゃあないですか」


 彼女はそう言って玄関の方に向かって行った。残された俺はやるせなさでいっぱいだった。





「それで~? 海斗君との会話はどうだったのよ~?」

「聞いていた通りですよ」


 私は彼との会話の後に私のバディと連絡する。彼女は彼と私の会話を盗聴器で聞いていた癖にそんなことを聞いてきた。


「みなみちゃんは本当に考えていることと話す内容が合っていないよね」

「そんなことは!」

「あるよ。みなみちゃんは”私たちは英国の国益を重視する組織に居るけどあなたたちのことは最優先で守るよ”って言いたかったのにね~?」

「うっ!」


 私の悪い癖、それは口下手だ。私のコミュニケーションは大抵何かが足りないか余計なことを話して相手を不快にさせてしまう。


「まるであの0みたいに敵作る話し方しているから気をつけな~?」

「0?」

「あれ、知らない? 現最強の能力者の0。LEVEL9で第一位から第三位の席が現在空席だから必然的だけどね。あ、でも第三位が自覚なしで今は瀕死の重傷なんだっけ。もったいないね~第三位の能力者なのに」


 確か第一位のジョン・フィニアスは死亡済み、第二位が不明。第三位が赤井ゆの…………不謹慎な発言は流しておこう。


「それで? 第四位の0ってどんな人なの?」

「うん。会えば分かるよ。ただ、彼のことを形容するなら”孤高を気取る皮肉屋”かな? できれば二度と会いたくないかな」


 ますます分からなくなった。ただ、彼のことを明子さんは心底嫌いなことは分かった。


「じゃあ、私は任務を続けるから後はよろしく~。それと、今手に取っているものは買って損しないんじゃない?」

「な!?」

「じゃあね~♪」


 彼女はそんなことを言って通話を切った。なんで私の手に取っている物を認識しているのだろうか? そんなことを考えながら私は書店で『話下手な人が無自覚にやっている100のコト』と『人を不快にさせない話し方』の本を会計に持って行った。





 気がつくと私は教室で突っ伏して寝ていた。ひどく長い夢を見ていた気がする。


「あ、起きた?」


 なぎさが私と同じように机に頭を乗っけて私の顔を覗き込んでいた。


「私、どれくらい寝ていたの?」

「ざっと一時間かな? 授業とHR終わっているし」

「そっか」


 かなり長く寝ていたようだ。確かに私はここ最近忙しくて碌に睡眠を採れていない状態だった。夏休みだからといって気が緩んでいたようだ。夏休み? ならば何故、学校に? 授業も何故ある?


「ゆのちゃん? そう言えばマントなんてどうしたの?」

「マント? マントなんて……」


 そういえばなんで私はマントなんて羽織っているのだろうか?


「変なゆのちゃん」


 なぎさはそんなことを言ったがすぐに手招くように私に手を差し伸べてくる。


「さぁ、帰ろう? ゆのちゃん?」

「…………」


 何か忘れているような気がするがきっと気のせいだろう。私はそう思って彼女の手を取る。


「うん。行こう、なぎさ」


 私はそう言ってなぎさとともに校門に向かって駆け出す。教室に私がいつの間にか羽織っていたマントを残したまま。






「今日は体力テストをやります~!」


 突然クラスメイトに先生はそう通知した。生徒たちは次々と文句を言い出していた。私も体力の自信が無いので体育の授業があるだけで本当に嫌なのに加えて体力テストとなると最悪だ。


「休めばよかった……」


 私はそう呟く。


「ゆのちゃんは体力が本当にないからね~」

「準備運動の時点で過呼吸になるくらいだから気をつけろよ?」

「心配ご無用よ」


 海斗かと思いきや私を心配した相手は信也だった。…………………あれ? 海斗って誰だっけ?


「ほら、着替えて準備しよう?」

「そうね」


 私は着替えをするために女子更衣室へ向かう。私はいつも716番ロッカーを使用している。このロッカーは私の誕生日だからというのもあるがなぎさがよく使う1111番ロッカーのほぼ真向かいっていうことも挙げられる。


「いつもながらすごい量のロッカーだよね。全校生徒用のロッカーがある上に銭湯みたいにコインロッカーじゃないタイプの鍵付きのヤツだし」

「せんとう?」

「あれ? 銭湯知らないの?」

「戦うの? ボクシングとか?」

「いや違うよ。公衆浴場と言えばわかるかな? 古代ローマでもあるでしょ?」

「なるほど」


 勉強になったがどんなものなのか気にはなるが正直、誰かに裸を見せるような気にはならない。私の背中には下着で隠れるものの事故で負った大きな傷があるので見せたくないのだ。


「着替え終わったね。行こう!」

「うん」


 私はロッカーの鍵を閉めて更衣室からグラウンドに向かう。この学校のグラウンドは人工芝でできているのである程度の天候を気にせず運動ができる反面、割と抜ける芝が靴の中に入るとチクチクして痛い。


「暑いね~」

「熱を帯びやすいからね」


 私は踵でトラックレーンを蹴る。こうしても砂が舞わないというのは利点だがかなり暑い。


「暑いのでちゃっちゃといくよ~! まずは100m走から! 去年の女子の平均は17.22だね。これ以上目指して頑張って!」

「ゆのちゃんは20秒切ることを目指したら?」

「22秒かな?」


 私は各自でやれと言われた準備運動を順番を待ちながらその場で駆け足、足前腕斜上振、腕回旋膝半屈、腕水平側開、首の運動………深呼吸と21ステップに分けて準備運動をする。


「赤井! 今日は妙に元気がいいな! しかも自衛隊の準備運動を知っているとは先生感心するな~!」

「え!?」


 そういえば、私は自然と準備運動をしていたが過呼吸どころか息切れ一つ起きなかった。


「ゆのちゃん、体力ついたんだ!?」

「そう……みたい?」


 私は自分でも驚いていた。正直、そんなこと一度たりとて起きた試しがない。


「じゃあ、その勢いのまま走ってみな! 位置について! よ~い!」


 クラウチングスタートの姿勢をとる。目指すはゴールではなくその先。卵を入れたように手には空間を作り、腰は高く上げる。


「ドン!」


 ピストルの音が鳴る。その瞬間、スターティングブロックを強く蹴って私は走り出す。妙な気分だった。まるで背中に翼が生えているかのように全身が軽く、そして力強く感じた。いつもであれば私はきっと他の走者に追い越されて中間地点でゼエゼエと息切れを起こしそうになりながらゴールへと向かっていただろう。でも、今は違う。遠くの景色を見据えながら私が他の走者よりも前へ前へと突き進んでいた。


「赤井1着、堺2着、柚木3着!」

「ゆのちゃんいつの間にそんなに早くなっていたの!?」

「1着、9.60。…………9秒!?」

「赤井!? 世界記録狙えるぞ!?」


 現世界記録は2009年に樹立した9.58だ。しかも男子の方で女子は1988年の10.49。そんな記録に私が…………!?


「いやいやいやいや!? 私、運動音痴ですよ!? たまたまって可能性は無いですか!?」


 クラスメイト達もそうだそうだと言っている。私自身も信じられないし私よりも運動ができると思っていたクラスメイト達も絶対に認めないだろう。それに私はそんなスポーツ漬けの生活なんて耐えられる気がしない。


「じゃあ、もう一度計測してみる?」

「いえ、疲れたのでいいです」


 私は思ってもいないことを口にした。先生は納得がいかないようだったがこの授業はひとまず難を逃れられた。






 赤く紅くどこまでも朱いその水溜まりは海と表現するのが適切というべき程に広がっていた。それは錆びた鉄のように臭く掬っただけで触れるのが嫌になるその感触はすぐにその液体が血であることを理解させられる。そして立っているこの地面はブヨブヨとした感触でそれが血肉でできたおぞましいものであることが分かり私は瞬時にその世界の持ち主の精神の異常さが分かった。


「全く、何なのよこの精神世界は!?」


 私の名前はレティシア・モリス。この心象世界の持ち主を襲撃した人物であり、『入れ替わり(チェンジリング)』の能力者だ。私の肉体が緋山みなみに破壊される前にこの体に入り込んだのだが彼女の精神世界に恐怖を覚えた。本来、私の能力は他者の精神世界に入り込み、その中心にある核。いわば心を自分に置き換えることで入れ替わりが起こる。だが、その核が存在する精神世界の中央が一向に見えない。


「どんだけ広いのよ! この世界は!?」


 私はかれこれ体感二・三日間程度この世界を探し回ったが一向に見つからない。核が小さいような気さえもしてきたが世界が広いのに加えてこの気が狂いそうになる精神世界をしている彼女がそんな小さい核をしているわけがないとも思う。


「全く、なんでこうもLEVEL9の連中は…………」


 そう言いかけたところで今まで見当たらなかったソレを見つけた。寝そべっている核など見たことないが私はソレに向かって駆け寄る。途中、足場が悪くてこけそうになったがなんとか近寄れた。核を見つけた喜びで満ち溢れていたがすぐにそれは覆った。


「ヒッ!?」


 そこにあったのは死体だった。しかもこの顔は組織のメンバーだ。彼は今は生きているが彼女に別の世界線で殺されたとも聞いている。見ればその辺にも。彼女の親友の柚木なぎさの死体さえも。


「………………」


 親友の死体を精神世界に抱えながら生活している。それだけで彼女の異常さを感じた。死した彼女のことを思い出しながら生きている彼女と接する。それは並大抵の精神ではできない。そんなことを考えながら適当に歩き回っているといつの間にか中央へ到達したようだった。中央には黒衣のマントを羽織り、黒い光沢を持つ特徴的な二本の剣を手にもっていた。構えているかと思いきやその剣を握る手は力なく、誰かに押されればポロっと手から滑り落ちそうで頭はどこにもない星を見つめるように上を見つめていた。


「貴女のその身体、貰い受ける!」


 私は精神の核たる彼女に勢いよく近づく。一刻も彼女の気味が悪い精神世界から抜け出して上書きしたい気持ちが強かった。だが、彼女の顔を見たときにそんな気持ちが無くなっていった。


「………涙?」


 彼女は泣いていた。数多の時間を繰り返し、親友を何度も何度も失った彼女は精神が疲弊することなく泣きたい気持ちを心に押し留め、それを決して表に出さずに闘っていた。感情を無くすこと。それが同じ時を繰り返す彼女の最適解である。だがそれをせずに彼女と共に生きるために人間性を捨てなかった。それに対して私は………。


「何やっているんだろ私…………」


 大事な彼を亡くし、組織を脱退しようとして洗脳されて本来、非がない彼女に八つ当たりして挙句の果てに彼女の身体を奪おうとしている。


「情けないな…………」


 私は彼女の精神世界の中央のそばに立ったことで外の世界を認知した。私のせいで彼女は瀕死の重傷を負っていた。生命維持装置に繋がれて放っておけばいつ死んでもおかしくない状況だった。


「私の落とし前は私でつけないと」


 私は彼女の身体を一時的に借りて彼女の能力で傷を治した。その瞬間、に理解した。それがどういう結果をもたらすのかを。


「構うものか。私は私のすべきことをするだけだ!」


 自分では彼女の能力を使うことができなかったようで自分の精神体が消えかけていた。なんとか存在を維持して傷を完治させることに成功したが私には猶予がほとんど残されていなかった。


「お別れね。貴女には本当に迷惑をかけてしまった。…………………応援している」


 身勝手で傲慢だが聞こえているかわからない彼女にそう伝えた。心なしか泣いていた彼女は泣き止んだようで赤くなった瞳で決意に満ちた顔になっていた気がする。





「次の問題を……………赤井さん!」

「え!?」


 突然の指名に私

は困惑した。私は指名されるのが嫌いだった。勉強も運動も何にも取柄が無い私にとって目立つことが途轍もなく嫌いだった。だって、自分がどれだけ出来損ないの存在であることが理解させられるから。


「うっ………………」


 私はホワイトボードマーカーを手に取る。”log₈4の値を求めよ”という問題だ。数学は元々苦手だし、答えだってわからない。こういう時は決まってこう言う。


「わ……………」


 わかりませんと言おうと思ったが私の脳がそれを否定した。私はもう一度問題に向き直る。指数関数の方程式に変形させれば解きやすくなるから。変形させるためにlog₈4をxとすると、8のx乗=4だから2の3x乗=2²。したがって3x=2より、x=2/3。よって、log₈4=2/3。


「log₈4=2/3ですか?」

「正解!」


 先生から拍手を貰った。いつもは解けないのに解けて嬉しくてとても照れ臭くなった。


「ゆのちゃんが勉強できるようになってる!?」

「まぐれだよ~」


 私は頬を掻きながらそう返答する。だが、先ほどから途轍もない違和感に襲われていた。私の頭に入っているはずの無い情報。本来ないはずの実力が違和感を生んでいた。勉強も運動も私はできない人間のはずだ。テストは毎回赤点ギリギリだし、運動もできないはずなのに何故かできるようになっていた。その事実が私の頭を混乱させていた。






「今日一日、大活躍だったねゆのちゃん!」

「う、うん!」

「まぁ、相変わらずだったのは音楽だったけど…………………」

「うっ!」


 勉強、運動と来てできるようになっていたものは何かと思っていたが音楽は一切、上手くなっていなかった。


「まぁ、センスの問題だからな。これは」

「信也………」


 まただ、また違和感を感じる。何かが足りない。だがそれの何かがわからない。


「帰ろうぜ~」

「そうだね~」

「………」

「どうした? ゆの?」

「ねぇ、もう一人居なかったっけ?」

「もう一人?」


 そうだ、一人足りない。あのキザで本気で正義の味方を目指しながら子供が苦手なそんなヤツ。彼が足りていない。


「海斗。そう! 高階海斗が足りないのよ!」


 ようやく思い出した。彼が居ないことに。そして私の違和感に。


「ゆのちゃん?」

「私、行かないと……」

「おい!? どこ行くんだよ!?」

「屋上!」


 私はそう返事して教室から屋上に向かって駆け出す。その人物がいるであろう場所に向かって駆けていく。一歩、また一歩と私は階段を駆け上がる。息切れは当然のようにしなかった。だって私は…………。


「もういいのか?」


 扉を開け放ったその先に居たのは高階海斗その人だった。きっと彼は彼であって彼ではないだろう。そんな彼は私にとって戦いの日常の象徴となる存在。平穏な日常では居ないのは当然の摂理だ。ようやく合点がいった。


「お前が望めばこの世界をそのまま現実にすることができる。だが、そうではなくてお前は現実で足掻く選択をするんだな」


 彼はそう問うてくる。その問いに対しての答えなどとうに決まってる。


「えぇ。これは”私が手に入れる”べき世界であって誰かから”与えられる”ことによって得るべきではないわ」


 それにと付け足して私は言葉を続ける。


「貴方が居ない世界なんて物足りないからね」

「そうか。…………なんだか照れ臭いな」


 海斗はそう言って頬を掻く。酷く長い夢を見ていた気がする。


「行くんだな」

「えぇ。私の、私たちが目指す世界を作るために」


 私は黒衣の外套を羽織る。慣れた服装だというのにとても久しぶりの感覚だった。私は背中から剣を取り出して思いっきり振り下ろした。その断面から世界が割れてこの世界が元のあるべき世界へと変わっていく。


「頑張れ。それしか言えないがお前ならやれるって信じている」

「ありがとう。私、頑張るから!」


 海斗から差し出された手に対して私は同じように手を出して手を合わせる。私はもう立ち止まらない。自分のため、みんなのために進み続けるんだ。





 目が覚めるとそこは病室だった。仰々しいぐらいの生命維持装置に繋がれていたが傷一つなく健康な状態だった。私はその生命維持装置を自分の身体から引く抜いて立ち上がる。


「え!? 赤井さん!?」

「あ、村雨さん」

「何してるの! 傷が傷が!? あれ、無い?」

「傷なんてどこにも無いわよ」

「え、でも赤井さん一週間も寝込んでいたんだよ!?」


 それは想定外だった。一週間も寝込んでいるとは…………。


「みんなは無事かしら?」

「無事……? 何事もなく生活してるよ。みんな赤井さんが気がかりだったようだけど」

「心配かけたようね」


 私はそんな会話を彼女とし、精密検査をして退院した後すぐにみんなに連絡をした。

どうも、作者のスバルです。某英雄ゲームでロウヒというキャラが一向に出ず石を浪費しまくっています。全然出ない!


さて、本編についての話題です。以前、彼女が努力の天才と称されていましたが私としては彼女は事実、そうではと考えております。能力があったにしろあそこまでのダメダメから人並み以上に成長し、化け物レベルになっていますので。それに、彼女みたいに機会があったにしても成長できない人は沢山居ますしね。みなさんは努力型ですか? それとも天才型? もしくは…………? ちなみに私は天才と………の中間ですね。努力嫌~い! 嫌いな言葉は一番が「努力」で二番目が「ガンバル」なんだぜーッ

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