Encount - 29/07/2047 - √B『一人暮らしを続ける』
「ありがたいけど……私は一人暮らしをもう少し頑張ってみるわ」
「そうか。辛くなったり人が恋しくなったりしたら俺を頼るといい」
少し寂しそうな顔をしたがすぐにおじいちゃんは冷静な様子を取り戻してそう伝えてきた。本当にありがたい。
「どんな時でも俺はお前の味方だからな」
先生はそう仏頂面だった顔から一変して私にお盆に久々に会ったかのように出迎える祖父のような優しい顔があった。
「…………ありがとう。私は優しい仲間がたくさんできたの。だから今は大丈夫!」
私は両手を広げてBBQで盛り上がっている彼らに向き直って歩いていく。そうだ。私には家族という存在ができた。でも、今はこの仲間とともに問題を対処していきたいんだ。
私は…………幸せだ。きっとこういう機会はいつだってあった。でも、気付いていなかっただけでたくさんあったんだ。祖父という私のあるはずでも認識していなかったその存在を認識したことで見つめなおすことができた。
「お前は………いい仲間を持ったんだな」
おじいちゃんがそういう。だから、私はその言葉に対して
「うん!」
満面の笑みで回答するのだった。
「おじいちゃんねぇ…………」
私は自分の執務室の机でペン回しをする。昼間の出来事を少し反芻する。私に祖父が居たとは…………当たり前の事実ではあるものの実感が沸かない。そんなことを考えているとふと背後に急に気配を感じた。
「何か考え事でも?」
私の側近はいつも余計なことを口にする。だから次の言葉も余計なことを言ってくるだろう。
「次に貴女は「おじいちゃんなんて存在、貴女くらいの歳じゃあ死んでいません?」と言う」
「おじいちゃんなんて存在、貴女くらいの歳じゃあ死んでいません? ハッ!?」
やっぱりだ。二年程度しか彼女と関りが無いが彼女の言いたいことなんてすぐに分かる。実際にはそれ以上だが。
「それで? 貴女の祖父がどうしたんですか?」
「私…………いや、私ね。何、私の祖父が判明したようでね。昼間に私に接触したの」
「ふ~ん」
あからさまに興味のない様子は出さないでほしいのだが、彼女には何を言っても聞かないだろう。
「それで? 内閣総理大臣かつ我が組織『ブラックジャック』のトップの結城希様はどうしたのですか?」
「その言い方…………トゲがあるけど。別にどうもしないわよ。彼の能力は『治癒』だし何も支障は無いわ。それに何か大きな問題も今回も起きなさそうだしね」
人が死ぬ姿なんて見たくない。だからこそ、私はこの世界線で流れる血を最後のモノとするんだ。
赤井ゆのの母方の祖父の五十嵐清の『治癒』ですが自分の寿命を代償に基本的にあらゆる怪我・病気を治すことができます。彼はやりませんが自分の怪我・病気を相手に移すということもできます。その場合は寿命が延びます。