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外伝『ビターシュガー・レイズデッド』1/2

2047/06/12


「たのも〜!!」


 そんな声が教室内を反響した。現れた人物は学校で『アイドル』を自称している『山城深雪(やましろみゆき)』という生徒だった。彼女の噂は割と入学した頃から聞いていたが俺はそこまで気にしていなかった。何せ、組織との対決に忙しいし俺がそもそもとしてそういうものに興味が無いからだ。


「深雪ちゃん!?」

「なんでここに!?」

「もしかして俺に会いに来た?」

「それはない!」


 次々と俺を除くクラスメイトの男子(主に信也)が騒ぎ立てた。そして、信也に会いに来るなんてヤツはそうそうない。


「最近、貴方が転校してからずっとずっと私よりも貴方の話題に尽きない…………私の名誉挽回のために勝負よ!『赤井ゆの』!!」

「ふぇっ?」


 ゆのにとって予想外の行動だったのか山城に呼ばれて彼女はそんな間の抜けた声を出し、椅子から崩れ落ちた。


「果たし状よ! 指定の場所に来なさい!」

「えっ………ちょ……!?」


 有無も言わさずにスコールの様に来たかと思えばすぐに帰って行った。


「果たし状……………」


 彼女は貰った果たし状を広げて読もうとする。すると周りも気になって果たし状を読もうと彼女の席に群がって来た。俺も気になって見て見ると文字が全く読めなかった。ただ、山城の字が汚い訳ではない。それは封筒の果たし状の文字を見れば普通に読める女子特有の可愛らしい綺麗な文字だった。ではなぜ読めないのか? 答えは簡単だ。果たし状の文字を筆で書いたせいだろう。必要な内容が書かれていた文章が包んでから果たし状の文字を筆で書いてしまった手紙に墨汁が浸透して読めない状態へと成り果ててしまった。


「おい、誰か深雪ちゃんに筆じゃない方法で書き直すか直接聞いて来いよ……」


 そこで誰もが手を挙げなかった。他の人の理由はわからないが、俺自身は純粋に面倒臭いしそうする義理が無いからだ。


「行けるわけ無い……こんなに努力した物が水の泡となってしまっているなんて酷なこと告げられるかよ!」

「そうだ! ファンクラブ通信にわざわざ墨汁を買っていたことが分かる写真があった!」


 彼らは自身のステック型の端末『ペンフォン』を引っ張り、画面を表示させて俺らに見せてくる。


「うわぁ………」


 ファンクラブなんてあったのか⋯⋯あと、それはストーカーしてないか? それに盗撮も⋯⋯。


「………って言うことで、海斗! やんわりと聞いてきてくれないか?」

「まじかよ………」





 2−Bが俺たちのクラスだが山城深雪のクラスは2年クラスではなく1−Cであり、後輩にあたる人物だ。それで呼び捨てをする勇気は………いや、生意気か………。


「ちわー『山城深雪』いるー?」

「居ませーん!」

「そうか………」





 山城がいそうな場所を虱潰しに探し歩く。だが、一向に見つからない。昼休みの大半を昼食を食べずに歩き回ったために流石に何か食べたくなってきた。


「一回教室に戻るか……」


 教室に戻ると彼女がいつものアレを食べ終えて勉強(高校生必修の内容ではなく犯罪心理学)をしていた。


「申し訳無いわね。あの場で私が聞きに行くって言っておけば良かったのに……あと犯罪(決闘罪)」


 銃刀法を平然と破っている彼女が言えたことではないが確かに犯罪に当たる。


「構わないさ。彼女にちょっと思うことがあってさ……」

「思うこと?」


 彼女が俺の発言をオウム返ししてきたが俺は実際のところどういう理由で行動しているのかわからない。だから答えられなかった。強いて言うなら恋心ではない。


「それじゃあ、飯食ってくるわ」

「屋上ね。行ってらっしゃい」





 屋上はほぼ俺の貸し切り昼食会場みたいになっているが今回は違った。そう、山城が居たのだ。彼女はダンスや歌の練習をしたり、妙に黒い金属光沢を放つ鎖を手から出してアクションポーズを決めたり正直言って入りづらい雰囲気だった。


「何してんだ?」

「うわっ!?」


 山城は俺に驚く。その様子はまるできゅうりを後ろに置かれて驚いた猫のリアクションみたいに垂直にハイジャンプをした。


「猫かよ?」

「何ですか先輩? 学校のアイドルの追っかけもといストーカーさんですか?」


 アイツらバレてるんじゃないか? 脳内に彼を浮かべたら高性能カメラを片手に追っかけている姿が容易に想像できた。


「俺はそういう趣味は無い。見ての通り昼食だよ」

「見て……ました……?」

「何をだ? 君がアイドルのようにダンス練習をしていたことか? それとも能力で鎖を出して決闘の準備もといデモンストレーションをしていたことか?」

「ガッツリ見てるじゃない!!」


 山城は右腕を突き出して能力による鎖を俺に向けて放つ。黒く細いその鎖は見た目以上に頑丈そうに思えた。


「悪いが、『普通の』能力者と俺との相性は最悪でな?」


 俺の右手に鎖が絡みついた瞬間に俺は能力を発動して鎖を消す。


「……え?」

「お前、能力のLEVELっていくつだ?」


 明らかにおかしいLEVELだった。あの鎖を消すはずが、当たった部分しか消えなかった。それこそ、LEVEL9の能力ですら俺は『当たっていない部分も』木っ端微塵にできるのだがそれができなかった。つまり、LEVEL9以上の能力ということだ。それ以上は一番上のLEVEL10しかない。


「LEVEL4ですけど⋯⋯?」

「んな馬鹿な!? 明らかにその鎖はLEVEL9以上だ!」

「………………と言われても…………」


 本人に自覚がないのか否か……つまり、コイツも……。


「ゆのと一緒か…………」

「また! また赤井先輩の名前! 話題に出るのは私ではなくいつもの赤井先輩! もうウンザリなんですよ!」


 嘘だな…………。


「じゃあなんだ? そのペンフォンに貼ってある写真はなんだ? 明らかにゆのの写真だろ?」

「眼鏡かけていないのに、目が良いんですね?」

「そりゃ、俺は近いものが見えないんだ」

「老眼!?」

「失礼だな。病気だよ」

「…………あなたと居ると調子が狂います」

「そうか」



 何なのこの人? 私は目の前で壁にカッコつけてるのか、はたまた自然にやってるのか分からない姿勢で壁にもたれ掛かっている人物に疑問を抱く。彼は私の鎖を消すことができる能力を持っているだけでなく観察力がある。彼ならばとは思うが、今はつべこべ言ってられない。


「あの……」

「そう言えばだな。君が出した果たし状、包みの文字を手紙を包んで書いたせいでなんにも読めなかったぞ?」

「はい!?」

「で、俺はキミを探してたって感じ。…………もっとも、ここに来たのは昼食…………」


 マズイ、マズイぞこの状況は。せっかく誰にも知られずに計画を遂行するハズが⋯⋯。


「おい、聞いているのか?」

「え? はい!」


 何がなんだか分からなかったがとりあえず返事を返す。


「ってことであらためて日程と場所を教えてくれ。ちなみに、ゆの曰く『これ犯罪』だってよ」

「…………あらためて書き直すので待ってください」


 私は胸ポケットに念の為入れていた筆ペンを取り出してメモ帳から一枚千切った紙に日時と場所を書き記す。


「なぁ、俺が見聞きしちゃ駄目なのか?」

「ダメです。あなたは……イレギュラーな存在ですから」


 彼はそうかよ。と言わんばかりの顔をして黙々と昼食のおにぎりを頬張る。


「イレギュラーと言うなら君もだろ?」

「私?」

「さっきも言ったがその鎖はLEVEL9相当だ。仮にもその能力がLEVEL4にしてもおかしい」

「そう言われても…………」


 私には心当たりはあるがそれがどうもLEVEL9相当になるとは思えない。


「仮に君の能力がLEVEL9だったとしても『ジョン=フィニアスのメモ』にどの特徴も一致しない。一体、君は何者だ? あ、ちなみに俺は一応、『記憶保持』だが君は一体なんだ⋯⋯?」

「『記憶保持』? 聞いただけでは使えるのか使えないのか分からない能力ですね。あと、それじゃあ鎖を消した説明がつきません。まぁ、どうでもいいですけど」


 おそらく嘘であろう発言はあえてスルーする。ただでさえ能力者ってだけで社会的に不利な立場であるのに能力の本質云々は致命的になりうる。


「お節介かもしれないが、この学校に通っている教員生徒は一人を除いて全員能力者だから別にここで隠す必要はないぞ」

「え!? は?」


 さも当然に新情報を開示してきた彼は平然と缶コーヒーをすすっていた。絶滅していたと思われている能力者がこんなにいっぱい居るなんて……しかも、都合よくこんなに集まるのだろうか?


「私立だからだよ」

「あ、なるほど……いや、なんでそんなことを知っているんですか!?」

「校長が俺の母方の祖父だからだ」

「あ~! 成績を良くしてもらっているんですね! 学校との癒着(ゆちゃく)!?」

「ちげぇよ…………むしろ他の人よりも成績の基準を厳しく見るようにって言われているらしいぜ。なにかあると悪くなる」

「そうなんですか」

「じゃあ、俺はもう行くよ。…………………選択はきちんと考えて選べよ?」


 変な忠告だ。だが、何故かその言葉には重みを感じた。これからやること………………それが関わるのだろうか。彼の能力が関係しているのか。それらは分からない。けれども折角の忠告だ。私は拳を握りしめて見つめた。そして彼に向き直って伝える。


「余計なお世話ですよ…………いえ、ありがとうございます。貴方の忠告、感謝します」

「あぁ。それでいい」


 そういうと彼はそそくさとこの場を後にした。私は鎖を出現させる。名も無き能力。ただただ鎖を出現させるだけのこの能力を使って彼女を打ち負かす。

あ~執筆作業終わんない~飽和するペーパーチェッキング

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