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令嬢と勇者のサイドチェンジ

令嬢と勇者が入れ替わる話です。

失敗した。


まさか昼食に頂いたタルティフレットに入っていたキノコが食用と間違われることの多い毒キノコだったらしい。

意識が遠のく。体が重たい。まだ私にはやり残したことが…





…と、気付いたら知らない晴天を見上げていた。

驚いて飛び起きると、ふわりと柔らかい栗毛のポニーテールが視界の端で揺れた。

おかしい。私の髪は黒のストレートだったはず。傍らには魔王討伐にも持って行った愛剣。でも私が魔王を倒す、なんて…無理なはず。自分の経験ではない記憶が入り混じる。どうやら私はサイドチェンジ(女神の導き)に遭ったらしい。




あまりに実感がなくて,呆然としていると、馬が駆けてきた。

乗っていたのは、自分の副官だったクレア・モーガン。姿を見て、名前はわかるが見覚えはもちろんない。

「べリタ長官!相変わらずご無事で何よりです。殿下の横暴にはついていけそうにないので、自分も転職考えてま…す…あれ?長官?どうしました?いつもと違う感じがするんですが、…大丈夫です?」

「いや…。その…。[サイドチェンジ]が起こったらしくて…。」

私が[サイドチェンジ]と言った途端、クレアさんは「はぁっ!?」と叫んだきり、固まってしまった。

「実はあなたがクレアさんというのはわかるけど、知識としてしか知らないというか。それ以前にどうしてここにいるかもわからないの。この方が魔王を倒したのは何時の話ですか?」

「…なるほど。道理でなんか違う感じがしたんですね。とりあえず、どこかに移動しましょう。そうだ!確か近くにいいバルが…」






そうして案内されたのは、以前この体の主が魔物被害から救った村にあるバルらしい。自分は経験していないはずのことを覚えているというのは、なかなか不思議なものだ。

「[サイドチェンジ]というものは知識でしか知らないのですが、確か、境遇の似たもの同士が入れ代わる神の奇蹟ですよね。[サイドチェンジ]に遭った者は直前のできごとは覚えていない、とも聞きます。あなたの中にどこまでの記憶がありそうですか?」

「えっと…。自分の中に存在しないはずの記憶を説明するというのは変な気分ですが、厄災の魔王を倒したことは覚えています。この方とてもお強く勇敢なのですね。そして、凱旋のために王都に向かっていたところまでは。」

移動中の記憶は大分細切れで説明しづらい。

「ああ…。長官は移動中大体寝ていらしたから。じゃあその後のことはわからないんですね。」

「えぇ。何かこの方に強いショックがあったみたいで、覚えていないのです。もしよろしければ教えていただけますか?それ如何で今後の行動指針が立てられるかと。」

「了解です。…いやぁ、やっぱ違う人なのか。」

「えっ。何かありました?」

了承の言葉の後、クレアさんが何か言ったようだが、よく聞き取れなかった。


「いや、何でもないです。まぁ教えるといっても、一部は又聞きの話なんですけど。王城に着いて、討伐報告の為に謁見を願ったんです。そしたら何故か長官だけ呼び出され、長官お一人で向かわれました。まぁ、魔王に挑んだのも長官だけでしたからね。ただ、10分もしないうちに自分たちが待機していた部屋に王太子が現れて、この部隊は解体、辺境警備に行け、と。討伐成功にも拘らず言い方も横暴だし、扱いもぞんざいで、これは変だと、長官の所在を尋ねたら、『そんなものはもういない!』とか宣う始末。懇意にしている宰相補佐官に状況を聞いたのですが、長官は説明もそこそこに、王太子との婚約を破棄されて、王都追放されたと。」

「こ、婚約破棄って、この方、王太子の婚約者でしたの!?」

「勇者の称号は国にとっての力そのものですから、王族の縁者にしておきたかったんでしょう。宰相が『厄災の魔王から国を救ったのに何故そんなこと!』と詰め寄ったそうです。そしたら、王太子が、原因不明で臥せっている国王を助けられないことが追放と婚約破棄の理由だと。実際は自分より目立つ存在が目障りだったとかが理由でしょうなぁ。今は王太子の独壇場みたいなので、自分は補佐官にいろいろ託して辞めてきたんです。」

「陛下がどのような方かはわかりませんが、王太子は随分と暗君になりそうですね。しかし、この方もちょっと自分勝手じゃありません?王太子に楯突くのは無理でも、仮にも上司ならせめてあなた方が不利にならぬように動くべきだったのでは?それどころか一言もなく出ていくなんて!」

「まぁ、長官らしいというか、悪い人ではないんですけど。これ以上犠牲を出したくなくて『全員邪魔だから先行く』とか言って魔王倒してきた人ですから。後ろは任せた!位言えば隊員たちの士気も上がるんですけど、言えないんです。長官の立場も婚約のための箔付けけとなっていましたが、実際は我々で長官の独断専行を止める策だったんです。まぁ、失敗しちゃったんですが。」

「せっかくお強いのに対人関係が疎か…。一匹狼がかっこいいとかいう中等部の子たちが罹る阿呆な病みたいです。勿体無い。この方のこと、私は好きになれそうにないわ。国に見つかると面倒なことになりそうだし、この方に成りすますよりも、私らしく生きてもいいかしら。」

「いいと思いますよ!ただ…何て呼べばいいですか?」

「私、元はイザベルというのですが、通称はベルですの。クレアさんのほうが年上ですし、ベルと呼んでください。」

「いやいや、その名前、お貴族様でしょう!?自分、職もないただの流れ者ですよ、いいんですか!?」

「だって、こちらでは意味のないものですし、あぁ、口調もどうにかしないとですわね。この国常識等学ぶことも多いでしょうし、クレアさんのこと、頼りにしていますわ!」

「うぐぅ…。じゃあこれからよろしく。ベル」






◇◆◇◆◇◆


クレア・モーガンの報告書①


べリタ元長官(以下長官)が王都を出て1か月が経った。

誰かに見せるものではないが、定期的に書かねば落ち着いて眠れないため、本日は報告書を書いている。


長官は話に聞く[サイドチェンジ]によってイザベル・コンフィアンス(以下ベル)と入れ替わった。身体は長官のものであり、これまでの経験で得た能力は失われていない。しかし、僕のスキル【鑑定】によると、長官のスキルは消えていて、且つ【勇者】の称号の能力も失われている。スキルは生まれた時から1個誰でも持っていて、世界の危機に現れる【勇者】の称号以外は消えたり増えたりはしないはずである。だが、ベルには新たに【悪役令嬢】というスキルが発現した。詳細は不明。仮説ではあるが、スキルは魂に付随するものなのではないか。逆に経験は身体に付随するようで、戦闘経験のないベルでも、中級の魔物を倒していた。



ベルの世界では、スキルが存在しないらしく、初めの1か月はこの世界の常識を学ぶことに費やした。そこで、ベルの世界にはスキルがない理由もわかったような気がする。ベルのいた世界には魔物というものは存在せず、自然災害による被害はあるものの、情勢も安定していた。

すべての国民が学ぶ機会を持ち、平民でも魔力操作を学んで、魔道具を使った文明的な生活をしていたのだという。しかし、そんな世界などあり得るのだろうか。



魔王が倒され、今いる魔物も数を減らすことを考えると、文明的な生活基盤を作る必要があると考え、ベルの世界を参考に2人で考えをまとめている。ベルがいることで先のことを見据えるビジョンが立てられている。[サイドチェンジ(女神の気まぐれ)]の恩恵なのかもしれない。しかし、僕の憧れである目標の人を奪っていった、という点もあるので素直には喜べない自分もいる。




~~~~~~~




クレア・モーガンの報告書⑥


この村にきて何年も経った、という訳ではない。だが、最早ここは「村」と呼べるのか。

彼女の知識はまさに驚くべきものだった。

滞在する村へのお礼として始めた特産品づくりが、こんな規模になるとは。

この村は魔物被害のため、多くの耕作放棄地があり、貧しかった。そこへベルは綿花を育てることを提案したのだ。綿の需要は高かったが、魔力汚染の影響で育てる余裕のある農家がいなくなっている。綿花には土地の浄化作用があるらしく、綿花収穫後からは食物が育てられている。魔物の影響があった土地が回復するのはありがたい。魔力を吸ったおかげか、できた布は回復機能を持ち、は隣町との交渉にも役立つ特産品になった。

これまでは、すべてのものは王都に集まり、王都を潤すだけだった。だが今や村同士がつながるなんて、すごい進歩である。ちなみに交渉もベルがやったが、僕の出番はなかった。効果的な交渉術、スキルの効果らしい。布を対価に、別の町と交流する。横のつながりでそれぞれの町が豊かになる。これがたった数か月で起こった。


ただ、【悪役令嬢】スキルはなぜかずっと発動している。ベルにも止める方法はわからないらしい。もしかしたら、これは「スキル」ではなく、ベルの本質が「スキル」として鑑定されているのではないだろうか。【ヒロイン(主人公気質)】には効果無効というのも、我の強い相手が苦手なベルらしいといえる。

辺境近いこの場所が豊かになって、周辺の村や町もともに力をつけ始めているし、人もたくさん来た。そのほとんどが移住希望者で、王都から来た者たちだ。最近は重臣たちが続々と来ている。あの阿保王子に追放された者たちらしい。彼らは技術者と一緒に来たので、街を広げるのにも楽だった。ベルとともに街の発展のため働いているが、あと半年でこちらが中心地になるかもしれない。


◇◆◇◆◇◆



私が[サイドチェンジ]されて、大分経った。元の世界ではうまくいかなかったことが、スキルのおかげか、うまくいっている。復興の一環として、元の世界で研究していた綿花による耕作放棄地の改良がうまくいって良かった。魔物の影響を受けた土地に食物は育たないと放置されていたが、今は一部の畑で小麦の穂が揺れている。魔力を吸ったおかげか育つのも凄く速かったし、着用者の回復力を上げる効果がある布ができた。うれしい誤算である。今は傷病者の包帯用の布としても使っている。


品物ができたので、隣町と交流を図ることにした。この国ではすべての耕作物を一度王都に持って行って加工する街に分配するという仕組みで回っていた。賢王の時代にはすべての村が等しく回っていたのだが、魔王が倒され平和になった今の情勢には合っていない。現に王太子は中央に持ち込む分と買い取る分に重税をかけたため、中央にばかり権力や物流が集中していた。

 クレアさんに今後のため法律関係を確認してもらったところ、税を納める関係で、中央に収めるのは確定だが、全部でなくていいらしい。むしろ隣の村や町との分業で商品価値を高めると優遇措置もあるらしい。今の情勢的に優遇措置は見込めないだろうが、交流が禁止されていないことこそ重要。クレアさんと一緒に交渉へ行くと、包帯への需要もあって、とても歓迎された。あまりにすんなり相手と話ができたことに驚いていると、スキルのおかげではないかとクレアさんが教えてくれた。


どうやら、私のスキル【悪役令嬢】はすべての能力が高いらしい。最も高いのは人心掌握系だそう。但し、主人公気質の人がいると、効果がなくなるのだとか。なぞが多いスキルであるが、役に立つのだから、ばんばん活用していこう。周りから押し付けられた責任ではなく、自ら負う責任は充実感があるせいか、令嬢言葉はすっかり抜けてしまった。ちょっとはしゃいでいる自覚はある。


長官時代の部下も村にやってきた。配属先でクビになったり、クレアさんのように辞めてきたりしたそうだ。私を見て驚いている者が多い。勇者べリタは孤高を気取っていたから、人に囲まれて笑う私の姿は別人に見えるだろう。実際別人なので、勇者のそっくりさんで通した。彼らは、海より来る魔物を倒したり、耕作実験地の手伝いをしたりしてもらっている。討伐隊にいただけあって、能力の高いものばかりでありがたい。だが、平民出というだけで冷遇されてここまで来たと聞いたときは、王城の者たちは大分見る目がないと思った。


さらにその後、王城で管理職をしていた者たちまでもが街にやってくるようになった。聞けば、王太子が暴走し始めているらしい。私が勇者本人と気付いた方もいたが、黙っていてくれる。それどころか、助言や、便宜を図ってくれたりする。スキルの影響もあるだろうが、勇者べリタの恩恵もあるのかもしれない。





 そんなふうに毎日を送っていたが、少しずつこの体の主のことが気になり始めた。管理職の者たちが最初私を見て遠巻きにしていた。今は喧々諤々の会議をするほどだが、それがずっと心に引っかかっている。ある日、村で勇者の話をしている人たちがいた。曰く、勇者は千里眼で先が見えているとか、相手の心を読むことができるとか。長官は決して村人と交流を持たなかった、とクレアさんは言っていたけれど、もしやスキルが原因で独りぼっちだったのではないだろうか。

クレアさんが私を【鑑定】したとき、べリタのスキルは消えていたそうだ。その話をしたとき、クレアさんはほんの一瞬、残念そうな顔をした。勇者べリタのスキルは失うのが勿体ない程のすごいものだったんじゃなかろうか。


 気になった私はそのことをクレアさんに相談してみることにした。




「ぷはー、今日もたくさん働いたなぁ。酒が美味いです。」

相談場所は懐かしのバルである。客が多くがやがやしているが、どの席も半個室で相談事に向いた場所だ。

「それで、相談なんですが、べリタさんって、千里眼とか人の心を読むスキルがあったんですか?」

そういった途端エールを飲もうとしていたクレアさんは、盛大にむせた。

「うぐっ!?げっほげほ!?へぇっ!?なんで、そんな、げほっ、ぼくっ、自分に聞くんですか!?」

「だ、だだ大丈夫ですか!?変なこと聞いてすみません!!」

「いえっ、大丈夫、大丈夫です。誰かから何か言われたんですか?」

「あの…誰かに言われたとかじゃなくて…管理職だった方々に、はじめ遠巻きにされていたことが気になっていて。この頃、勇者についてのうわさを聞きまして。前にスキルについてクレアさんが教えてくれた時の残念そうな顔もそこに理由があるんじゃないかと。もしかして私大事な方をあなたから奪ってしまったのではないかと。」

「ああ、そういうことでしたか。あなたは女神の気まぐれでこの世界に来たのですから、奪ったなんてことはないですよ。」

「そうですか…。」

「ハハ、納得いってない感じですね。では長官の能力に関してお話ししましょうか。この世界の常識をお教えしたとき、スキルは他人に教えてはいけない。と言ったのを覚えていますか?」

「はい。家族でもない限り他人に教えるものではないと。クレアさんには特別に教えていただけましたけど、スキルは自分の弱点にもなりうるんですもんね。」

「そうです。でも自分のスキル【鑑定】はいろんな人のスキルや能力を覗き見ることができるんです。なので、長官のスキルも知っています。」

「そう考えると【鑑定】も凄い能力ですね。」

「まぁ、自分は人事の時ぐらいしか使ってなかったですね。覗きはよくないですし。それで、長官のスキルは【真実の(ポリグラフ)】。相手に1日1度だけ、真実を言わせるものです。」

「あれ…、勇者の能力向きのスキルではなさそうな…?」

「そうですね。戦闘には不向きなスキルです。でも長官は相手が仕掛けてくるその刹那に次の行動を言わせて、ぎりぎりで後の先を取るという戦法だったんです。魔王戦もそれで倒したはずです。だから相手の心が読めると勘違いされてました。決して、そんなチートなスキルじゃない。長官は何でもない顔していたけど、いつだってぼろぼろの辛勝で。努力して単騎討伐できるまでに高めたんですよ。だから、誰でもできる戦法でないのは確かです。」


 そうか。彼女は、聞いただけでも付き合いの悪い方だったが、王子に嫉妬されるほどに民衆に好かれていた。彼女にとっては他人との付き合いよりも、国を救うことの方が大事だった。そして必ず救うという強い覚悟があった。それが民衆に慕われる理由だろう。


私は元の世界で、器用に立ち回り味方は多かったけれど、古い慣例を変えていこうという覚悟はあまりなかった。今まで苦手だったこの体の主がやっと好きになれそうだ。私もこの方の覚悟に報いたい。今度こそ古い体制を変えたい。


「べリタさん、ほんとはとてもすごい人だったのですね。最初の印象では強いけどただの自分勝手な人かと…。そして、クレアさんの想い人だった…。」

「はぁっ!?どうしてそうなるんです!?」

「べリタさんのスキルも知っていて、あなたのスキルも教えていたんでしょう?初めて会った時も大事な人だったから、追放後すぐ追いかけてきた。」

「いやいや、長官は僕の能力知らないです。それに、すぐ追いかけたのは長官から今後どうしたいか聞き取りがしたかっただけなんです。僕、長官のこと尊敬はしていたけど、想い人ではなかったです。」


「っそ、そうなんですね。というか、僕って一人称…クレアさんそちらが素なんですか?」

「えっ、あっ、あ~まあそうですね。なるべく言わないようにしていたのに。油断した。ベルの前では気を付けていたのに。」

「そんな、カッコつけなくてもクレアさんはかっこいいですよ!」

「いやいや、男なんて好きな子の前でかっこつけたいだけの生き物ですから。」

「えっ、好きな子って…ええっ!?」


「あー…、本当なら酒入ってないときに言いたかった…。」

そう言って、クレアさんは照れたように笑った。なんだか胸のどきどきが止まらない。クレアさんは一息つくと真剣な顔をした。

「僕はベルのこと、好きだ。結婚を前提にお付き合いしたい。」

「あっ…あの、その…」

急な告白に顔が燃えるように熱い。私もいつでも頼りになるクレアさんが好きだと伝えたいのに、胸がギュっとして、何一つ言葉にならない。

「その反応、期待してもいいかな?ふふっ、返事は酒飲んでないときに聞きたいな、ベル。」






その後無事にお返事を返して、私たちはお付き合いすることになった。




季節が一巡りしたころ、私たちが進めていた政策で王都は急激に弱体化。最後まで残っていた宰相の協力のもと、王宮の無血開城に成功した。

その後、原因不明で臥せっていた国王は、王太子によって毒を盛られていたことが判明した。今は政治の中枢から離れ、治療に専念しているそうだ。

件の王太子は王都に迫る兵の噂を聞いて逃げ出したらしい。戦闘力はないそうだから恐らく無事ではないだろうし、例え戻ってきたとしても、国王の暗殺未遂で処刑される未来しかない。

また、この時、クレアさんが実は宰相の私生児であると知った。道理ですんなりと、無血開城がなったのだと、驚いたが納得もしてしまった。


この国は共和制になって、身分関係なく実力でもって評価されるようになった。私が元の世界で成し遂げたかったことだ。



べリタがもたらした平和を、これで維持しやすくなってくれたら嬉しい。

そんなことを思いながら、きれいな月に向かってグラスを掲げた。

どこからかガラスの重なる音がした気がした。


サイドチェンジ

とある2つの世界を管理する神様がいた。

神様は2つの世界がそれぞれ問題を抱えていることに気付いた。

神様は2つの世界の問題を放置すると、どちらも崩壊することを知った。

神様は2つの世界の問題解決は、それぞれもう一つの世界の人間が解決できることに思い至った。

神様は2つの世界の問題を解決するためもう一つの世界から人を交換することにした。

交換は2つの世界が壊れないよう、魂だけを入れ替えることにした。

神様は3つのサイドチェンジ発動条件を付けた。

1つは交換される人間が同じような悩みを持つこと。

1つは交換される人間が同じ原因で死にかけること。

1つは交換される人間の能力は双方に引き継がれること。

2つの世界で何度かのサイドチェンジが起こり、問題は解決されてきた。

2つの世界の人間はそのことを記録し、女神の導き・女神の気まぐれ、とそれぞれ呼んだ。

神様は交換が起こす現象が好きなので、サイドチェンジがあると観察しているらしい。


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