表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/88

8. ラブコメ回だ、コラ

本日もよろしくお願いします。

「というわけで村主さん、ADのことを口止めしておきたいから、買収されてくれ」


「はぁ?何言ってんっすか?こないだアイナメ食べたじゃないっすか。それに私は小川さんを売るようなクソじゃないっすよ」


「お嬢さん、クソってのはちょっとアレだねえ」


「じゃあ小川さん、私を雇ってくださいよ。契約巻いたらなんとなく安心っしょ」


こいつは何を言ってんだ?と思いつつも、まあそういう形もありっちゃありだな、なんて思ったりしつつ、


「いや、俺ってばしがないサラリーマンだからさ、誰かを雇うなんて大それたことできねーしさ」


これは本質そのものだ。俺の給料で誰かを雇うなんて、現実的な話ではない。家政婦さんとかっていくらくらいするんだ?あとはボディガードとか?そういうのって人生勝ち組の上級国民様でないと縁のない契約だよね、きっと。


「じゃあ契約は置いといて、付き合ってみます?」


いやほんと何言ってんだか、村主さん。俺はそういうこと言ってるんじゃなくて。。。なんで君はちょっと照れた感じで視線を合わさないのだ?これって。。。俺はね、そりゃこれまで年齢=彼女いない歴なんていう人生じゃなかったけども、わりとそういうの初心なとこあってね。


「ちょっ、おまっ、何言ってんの」


「あ、いやならごめんなs」


「ちょーっと待とうか。いやじゃないいやじゃない。うん、どっちかというとポジティブ」


「どっちかというと?って、いやじゃないのも2回繰り返したらなんか胡散臭くなるし」


「ご、ごめん。うん、びっくりしただけだから。よし、そういうことなら付き合ってみよう」


「そういうこと?」


だめだ、何を言っても今の俺から出てくる言葉はすべて裏目に出る。


「なんかごめん。付き合ってください。よろしくお願いします」


「いいっすよ♡」


こうして人生何度目かの彼女が出来た。ドン〇ホーテの田舎ヤンキーに羨ましがられて絡まれるくらいのとびっきりの美人というオプションまでついて。


それから二人で甘い時間を・・・なんてことはなく、村主からは「これで契約っぽい感じになったっしょ?」なんて言われて少しだけ、ほんの少しだけ凹んだりもしたけど、まあそれはそれでよしだ。彼女ってあいまいな存在なんだけど、とりあえず当面の間はお互いの気持ちという契約条項に基づいて、ADの秘密は漏れにくいと思う。そう思えるくらい村主は頭がいいし、配慮が行き届くタイプだ。俺としては村主を信頼している部分がそもそもある程度以上あったから、ここは安心できると思っている。


「会社じゃマズいけど、プライベートでは呼び方変えないっすか?」


「うん、じゃあ名前呼びってことで」


「口調はこのままでいいっすか?なんか会社でぼろが出そうだし」


「あー、うん、いいんじゃない?ち、ちはる」


「ふふっ。ゆうきってそういうとこ可愛いっすね」


「・・・とりあえず喜んどく・・・」


俺たちは一旦、俺の家に戻って、ペットボトルの緑茶で一息ついてから、とりあえず俺はちはるに部屋の合鍵を渡した。築年数が浅いのもあって、合鍵とはいえカードキーだ。


「いいんっすか?毎回ピンポン鳴らしてもいいっすよ?」


「いや、ほら、そこはやっぱりなんだかんだ都合いいだろうと思って」


なんかこういうのもちょっとした儀式っぽくて、結構いい、と思ってる。何しろ初心なもので。


「じゃあせっかくだし、なんだかんだ私のもの持ち込んでもいいっすか?」


「そりゃもちろんいいよ。生活感出しちゃってよ」


生活感?なんっすかそれ?っていうちはるのツッコミは置いといて、俺は何かつまむものがないかとキッチンに向かい、とりあえずのスナック菓子を持ってリビングに戻った。


「ゆうきって料理は完璧って感じだけど、こういうところこだわりは無さそうっすね。むしろ楽でいいかも」


「だってほら、こだわりって手間かかるじゃん。だからここぞっていうときだけこだわったりするのがいいんじゃね?」


「それもそうっすね」


硬いほうのポテチをバリボリとかじりながら、まったりと何ということもない話をした。こういう時間の流れは何とも言えない心地よさがある。それから遅めにポテトガレットを作って二人で食べて、ちはるは持ちこみ荷物を取ってくると言って一旦帰っていった。ポテトガレット作ってた時に、お、これがここぞっていうとき?なんていうツッコミももらったが。



***********************



目が覚めると隣にはちはるが背中向けて少しだけ丸まった感じで寝ていた。ああそうか、そうだった、俺は昨日、怒涛の展開でちはると付き合うことになったんだ。そして結局そのままちはるはうちに泊まったんだ。まったく、何が怒涛の展開だ、俺はちはるに告白させたようなもんだし、そのあとも何となく俺は自発的というよりは流れに乗ったかのような、あたかも自分の意志というよりは空気読んだんですよみたいな雰囲気を少しだけ纏いつつ、ちはると付き合うことにしたという流れじゃないか。何とも情けない。


少しの自己嫌悪と、起きたら夢だったというダサい落ちにならなくてよかったという思いで絶妙に微妙な気分になっていたら、ちはるがモゾモゾと起きたみたいで、寝起きがいいんだろう俺の彼女は起きてすぐこう言った。


「ゆうきはそれでいいんだよ、愛してる」


お、お前は心を読んだのか?ってめちゃくちゃ焦って、なおさら微妙な気分になりつつも、俺は心から素直に、そして自然に口を開いた。


「俺も愛してるから」


どうやらまだ朝の支度をするのは先になりそうだ。


カテゴリーズレを感じなくもないですが、こんな話も挟んでみたくて。。。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ