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7. 実戦?実践?

本日もよろしくお願いします。

春まだ遠い今日は、カレンダーの妙というか、今月2回もある週末がらみ3連休の2回目だ。天気もいいし掃除でもするかな、なんてのんきなこと思っていたら、


「おっはよーございます!」


「・・・あのな、若い女子がピンポン押さずに男の部屋にいきなり上がり込んでくるってどういうことだよ。。。」


「あ、男の子の秘密の時間でした?そりゃーごめんなさいっす」


「そういうことじゃねーし、そういうデリカシーのないこと言ってると。。。」


「言ってると?」


「鬼が笑うぞ」


「来年の話じゃありませーん」


玄関を無施錠で放置してる俺も俺だが。田舎だとこういうところがザルになってしまうんだよな。それで特に大きな問題がないというのがまた、田舎暮らしの良さでもあるし。


「で、なんだよ週末の朝っぱらから」


「ADの実戦テストしましょうよ、小川さん」


「家事終わったらねー」


「もー、ノリ悪いなー」


とはいえADのテストなら俺のほうが興味がある。そそくさと家事を終わらせて出かける支度を済ませた。もちろんその間、村主のヤツはリビングでこたつに入ってくつろいでただけなんだけども。


特にプランもなく出かけた俺たちは、田舎のランドマーク、郊外型ドン〇ホーテに来てみた。そう、今日はあくまで実戦テストだ。実践ではない。いや、実践でもあるんだけど、実戦なのだ。田舎のオアシス イ〇ンじゃないのはそういうことだ。


特に買い物もせずふらふらと狭い通路を歩いていると、いかにもな田舎ヤンキーを発見。特に何もアプローチすることもなく、向こうから必要以上に近寄ってきて訳の分からない因縁をつけてきた。


「あー、こら、狭いとこで邪魔くせーことしとるんじゃねーわ!」


「ん?邪魔だったか?そりゃすいませんね」


「んじゃこら!やんのか!」


「おー、テンプレにもほどがあるってくらい日本語が通じないな」


このやり取りの間、村主は俺の後ろで大人しくしてたけど、明らかに肩を震わせて笑いをこらえてるのが伝わってくる。いやね、おそらくだけど君が美人だから、その連れの俺がやっかみヘイトの矛先になってるっていう構図なんじゃないか?


「ちょっとこいや、こら!」


“Connect”


田舎ヤンキーが通路の先に歩いていこうとしたその瞬間に、足元にADを出現させてみた。


バッターン!「ってーなー!なんじゃおりゃ!くそっ!」


“Disconnect”“Connect”


瞬間的にADを消してすぐに田舎ヤンキーの起き上がる後頭部の進む先くらいにADを出現させた。


ゴンっ!「うおっ!なんじゃっ!って、おまえっ!」


「いや、俺?なにもできるわけないっしょ?」


「えっ!なんじゃ!きしょくわるいのー!もうええんじゃ」


田舎ヤンキーはどうやら本能的におかしなことが起こっていることに気が付いたのか、そしてそれがアンタッチャブルっぽいということを察知したのか、想像以上にあっさり去っていった。こういうところ、本能の感度が高いのはこの手の種族の特徴のような気もする。


「小川さん、なかなかいい性格してたんっすね」


「いやだって、実戦ってことならあんな感じじゃね?」


「まあ十分に実戦で使えそうってことはわかったっすね」


「そだねえ。もっと慣れてくれば出したり消したりを素早くスムースにできそうだし」


「じゃ、慣れるまでヤンキー狩りwo・・・」


「しねーわ」


なんかファンタジー世界ならダンジョンにもぐったりとかで、結構日常的な戦闘って存在することになってるけど、実際のところ中世ヨーロッパとか戦国時代とか3国時代とか、昔の戦争に明け暮れてた時代であっても、現実世界ではそこら中に戦闘が転がってるわけではなかったんじゃなかろうか。そうでないと農耕社会なんて成立しようがないし、ある程度の平穏な、だけど貧しい日常というのがあって、その合間合間に戦というのがあったんじゃないかなと妄想してる。まあ結局のところ、現代日本で実戦というのは、お手軽に探すとなるとこの程度くらいしかないということだ。ビバ平和。


ただ実際に使ってみて、ほんとに熟練というものが必要にはなってくるけども、これは相当なチート能力になるんじゃないかなと思ってもいる。もちろん、一瞬で首を飛ばすなんてことすら思っただけで出来るわけだし、例えば相手の武器を破壊することも、乗り物を爆発させることも簡単だ。しないけど。必要ないからね。おまけにADの出現と消滅って一瞬のことだから、下手すりゃ誰にも認識されずに実行できてしまうかもしれないし、少なくとも俺は離れたところからでも、対象を視認すればADを出したり消したりできるわけだから、俺が関与しているという痕跡は残らないだろう。これはアレだな、後ろに立ったヤツをつい殺しちゃうあの人とか、マグナム持ってもっこりしてるXYZのあの人とかも真っ青の殺し屋になれちゃうな。もちろんならないけど。だって怖いし、めんどくさそうだし。


「小川さん、裏稼業に進出できるっすね。むしろ会社辞めちゃいますか?」


「辞めねーし。っていうか裏稼業なんかめんどくさいからしねーし」


覇気のないイマドキの草食メンズですね、などと村主に言われながらも、俺は平和な日常を特に問題なく過ごせればそれでいいと考えていた。おそらくラノベの主人公たちというのは、現実世界にいる多くの人々と違ったマインドセットだからこそ非現実感が増して、だからこそ物語は面白くなるということなんだ。リアルに存在している俺はそんな英雄思考になんか到底なれないし、たとえそれがダークヒーローであっても俺の考えは同じことだ。


「あーでも小川さんってそこそこ熱いとこあるから、会社で嫌なことがあったらいつでも辞められるカードを持ったって思えばそれはそれで悪くないってことっすか」


「まあ、ポジディブではないにしてもジョーカーを持ってるという安心感みたいなものはあるかもしれないな」


普通に考えてチートを持った一般庶民というのは、おそらくひっそりと生きていくことはできないんじゃないか。やっぱりどうしたって誰かに言いたくなるし、それが誰であれ話が広がっていく可能性はある。自分で積極的に吹聴するケースもあるだろう。どっちにしても世間の知るところとなって、マスコミに追いまくられるとか、近所から村八分になるとか、なんとなく不幸せな未来しか思い浮かばないのは俺が小市民過ぎるからか?


とにかく俺はひっそり生きていきたいんだ。まずは村主の口止めをしっかりしておかねば。こないだのアイナメだけで充分とはさすがに思ってないから。


思いの外、毎日投稿することは簡単ではないです。


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